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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
モナオ(仮)
244/258

えぴそど244 血の匂い

「それじゃぁな。縁があれば、またどこかで会うだろう。」


「え!?も、もう行っちゃうんですか?」


私がモテ期到来に浸ること40秒、酒をくいっと飲み干したイノイチさんは席を立った。


「人を待っていたのだが……君と話している内に時間は過ぎてしまった。まだこの街には着いていないのだろう。」


「あ!あっ!えと!イノイチさんはまだこの街に居ますか!?」


この時の私は何を思ってこう言ったのか、今でも覚えてない。


引き留めようとしたのか、また会いたいと思ったのか、ともかく、このまま何もしなければ次は無いと感じた。


「……なんでそんな事を聞く。」


「い、いや、なんでだろ。その、気になっちゃって…あ!違う!違います!この花の事!もっと相談とかしたいなーって…」


「……明日、もう一度だけこの時間に顔を出すが、それで居なければ移動しなければならない。」


「わ、私も来ます!いいですか!」


「好きにしろ……名を、聞いておこうか。」


「わ、私はメイエリオです!家名はありません!」


「メイエリオ………そうか、それでハティか。」


「え?」


「いや、なんでもない。じゃぁなメイエリオ。」


「は、はい!さようならイノイチさん!」


イノイチさんがギルドを出ていく様をしばらく眺めていると、バーのマスターがため息をつきながら、新しい酒を置いてくれた。


「はぁ…メイエリオちゃん。お前さんはいっつもいつもいーっつも、あれだな。一回りも歳が離れて危なそうな男ばっかりに惚れちまうよな。」


「惚れ!?ばっ!ち、違うし!そんなんじゃないって!わ、私もそろそろ帰るから!またねマスター!」


「ははっ、また明日な。明日一日じゃ落とすには難しいぞー」


「もお!違うからね!」


私は別れを告げると、トモに乗り王冠花を抱えギルドを後にした。


「……それにしてもあの男、なんつー血の匂いだ。メイエリオちゃん。そういう男を寄せ付けちまうのがお前さんの悪い所と言うか、何というか…」



────

────

────


ギルドの外へ出るとまだまだ陽は高く、何を思ってこんなに早く出てしまったのかと、少しだけ後悔した。


「どうしよーシュナの様子見に行くにも、中には入れないし…もう一回戻る?いやいや、なんか暇な女だと思われたくないしなぁ…」


ヤーに戻った当初は、トモに乗って街を歩くと多くの視線を集めていたものの、毎日ギルドへと乗ったまま預けに行く光景からか、目立ちはするものの、驚かれる様な事はなくなった。


それどころか、冒険者の中にはトモと仲良くなり、声をかけてくれる様な人が居たり、小さな子供達からの人気は爆発的に高い。


「うぉ!?でっけぇ狼だな!」


街の外から来た冒険者や商人の中には、未だにこんな風に驚く人もいるけど、特にトラブルにもならず、平和そのものだ。


そんな私の想いを知ってか知らずか、トモは家まで後少しの所で何かを感じ取り、家とは別の道へ進みだした。


特に家にまっすぐ帰りたかった訳では無いので、違う道とわかりつつ、トモに任せ私は空に浮かぶ雲を眺める。


「はぁーあ。暇だなぁ…ねぇトモ、どこに行ってるの?」


「わふぅ…」


トモは頭を少しだけこちらに向け小さく鳴き声を含むと、すぐに前を向いてまた歩き出す。


時折地面の匂いを確認しつつ、表通りを抜けどんどんと裏路地の方へと進んで行った。


「うん、いいよいいよ。好きに歩きな………それにしても王冠花かぁ…えいっ。」


私は何も考えず無駄に王冠花に魔力を注ぎ込むと、鉢が淡く輝いた後、ほんの少しだけ花が動いた気がしたが、トモの背中は意外に揺れるので、魔力を込めた所為かどうかまでは分からない。


「伝説の花ね……食べられちゃったりしないかな…主にシュナとかが…」


「わんっ!」


「え!?なに!?」


花を見ていた私は、急に立ち止まり強く吠えたトモの鳴き声に驚いてしまう。


驚いたまま前を向くと、路地の先に怪我を負った青年が倒れていた。


「うそ、え、死んでるとかないよね。」


「わふっ!」


「わ、分かったよトモ。」


促される様にトモから降り、青年の元へと駆け寄ると、息はしており、気を失っているだけの様だった。


「喧嘩…かな?血は出てるけどそんなに傷は深くは無いし…というかまた知らない男とか…やっぱりモテ期じゃないこれ?」


トモの手前、このまま放置しておく訳にもいかず、私は青年の頬を軽く叩きながら声をかけてみた。


「おーい…おーい、生きてるー?」


青年は私と同い年位だろうか。


裕福そうには見えなかったが、そこまで小汚い格好をしている訳でもない。


怪我の状況を見ても、魔物と戦ったというより、人間に殴られた様な跡もあり、本人の拳にも傷がある事から、私は喧嘩でもしたんだろうなと思ってた。


「う、ん……」


「あっ、気付いた?ねぇ、大丈夫?」


「ん…あぁ………あっ!あいつらは!?」


青年が目を覚ますと、まるでテンプレかよとつっこませるかの如く、ここには居ない誰かを探すように辺りを見渡した。


「えと、私が来た時には──」


「無い!!…くそ!あいつら!」


「…いや、無視じゃん。」



ちょっぴり少しだけかなり面倒な出会いに

暇だと嘆いた数分前の自分を殴りたくなった

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