えぴそど241 ドキっ!出会いはいつも突然に!
「そこで、こういった場合に役立つのが、鑑定スキルです。しかし、その取得は容易ではなく、これ一つで一流のレンジャーと呼ばれる事も……そこ!聞いているのですか!研修生27番!メイエリオさん!起きなさい!」
「え!?ひゃ、ひゃい!すみません!」
(複数の笑い声)
皆様お久しぶりです。
本作品のメインヒロインだった筈のメイエリオです。
過去形?
もちろん理由があります。
ええ、全く出番が無い事や、全く活躍シーンが無い事が上げられますね。
戦闘スキルは疎か、ビジュアル面などの特徴を見ても、後から出てきた雌達に引けを取りまくっているというか、むしろ、後から出てきた子に要素を詰め込みまくってるのがムカつきます。
その上、唯一のアイディンティティ臭かったユージリンの想い人というポジションも、あの巨乳医者の所為で薄れつつありますし、可能性を秘めていたコースケとの両思いエンドも、軍人兎の影が濃くなり始め、出口の見えないトンネルに入った気持ちです。
はぁ…
ま、長くなっちゃったけど、私は今、元々住んでいた貿易都市ヤーに戻ってるの。
目的は、専門職の学校に通って!資格を取って!私の確固たるポジンションを確立する為!なんてね。
だけど、思っていたより、それは大変な道のりだった訳で…
「27番!遅い!もう次のトラップが見えているぞ!仲間がやられてもいいのか!」
「は、はい!」
「27番さん!床ばかりに気を取られないで!天井に床、前方に後方!全方位をマークできなければ、レンジャーにはなれませんよ!」
「は、はい!」
「27番!魔物だ!」
「27番さん!トラップです!」
「27番!?」
「27番さん!?」
「にじゅーななばーん!!」
「はひーーーー!!!!!」
とまぁ、こんな感じで、毎日毎日教官達に怒られまくってます。
朝は教室で講義を受け、昼から行われる本物のダンジョンでの研修を終えると、外はすっかり夕暮れ刻。
私は汚れ疲れた身体を引きずりながら、露店で売れ残りの食材を購入し、家路へと着く。
「おかえりなさい!おねぇちゃん!」
「わふっ!」
「ただいまぁ、シュナ、トモ。」
家で出迎えてくれたのは、私に付いて来た猫型天才魔法少女シュナと、激レアモンスターであるハティのトモ。
「ごめんね遅くなって、急いでご飯つくるからね。」
シュナは幼いながらも、魔力操作を巧みに行なえ、更にはハピスさんが手書きした魔法陣を展開できるまでになってる。
獣人特性があるとは言え、これを天才と呼ばずして、何と言うのさ。
現在は、ジャクシン様のコネを使い、魔法学校に通わせてる。
周りが大人ばかりの環境の中ではあるものの、ジャクシン家のお墨付きという事もあり、教員は疎か、生徒達もとても慎重に接していると聞いて一安心。
トモは街の許可を得て、首輪を付けることでテイムとして連れ歩いてはいるけど、実際私がテイムした訳でも無いし、いつハティを狙う賊が襲ってくるか分からない。
そこで日中はヤーのギルド内で、かなり厳重に管理してもらっている状況。
そう、もちろん、これもジャクシン様のお陰な訳で…
はぁ…
こう見ると、私ってつくづく良い所ないなぁ…
「おねぇちゃん焦げてるよ。」
「え?あー!ごめんごめん!やっばっ!」
ほら
真っ黒なオムライスの出来上がりだよ★
はぁ…
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朝が来ればまたシュナを魔法学校に連れて行き、トモをギルドへと預ける。
それが終わると、まだ目も完全に覚めきらないまま、私はレンジャーの学校へと重い足を引きずりながら、入っていくのだった。
「…はぁ、今日もがんばらなきゃ…ん?」
学校の門を入ると、校舎の入口の所に人だかりができていた。
「ねぇ、どうしたの?」
集まっている生徒達の一人に、私は声をかける。
「あ?ああメイエリオか。なんでも北部で小規模な戦闘があったみたいでさ、ほら、張り紙があるだろ。今日は大事をとって休校だってよ。」
「休…校…ちょっと見せて。」
私は人混みをかき分け先頭に出て張り紙を確認した。
そこには簡潔に、先程の生徒から聞いた内容がそのまま書いてあるだけだった。
「再開は…未定…」
「ああ、こういうの困るよな。結局毎日来るしかないじゃないか。」
「そうだね…うん、そっか…うん!そっか、そっか!」
「ど、どうしたんだよメイエリオ。」
「ううん!なんでも無い!そっか!休校か!再開未定か!」
「はぁ?な、なあメイエリオ。予定が無いなら俺とお茶でも…あれ?メイエリオ!?」
何か呼ばれた気がしたけど、休校と知った私はそれはもう笑顔で、足取り軽やかに街に繰り出してた。
「休校ー!!やったー!きゅーこー!!」
自分でお金を出し、強い信念を持ち挑んだ学生生活だったものの、元々自由気ままに生きてきた私にとって、ここまで窮屈な生活はやっぱりストレスだった訳で…
「遊ぶ!もうめっちゃ遊ぶ!というか!飲みつぶれてやる!!」
私は意気揚々と朝から開いているギルドの酒場へと一直線に向かった。
「きゃー!待っててお酒さん!!」
ドンっ!
注意散漫なまま路地の角を走りながら曲がると、私は人とぶつかってしまう。
レンジャーの学生とは思えぬ不注意だけど、嬉しさが勝っていて、それどころじゃない。
「いつつ…あっ!ご、ごめんなさい!!」
「あー、いや。こっちこそすまないね、かみな…お嬢さん。怪我は無いかい?」
倒れた私に差し出された手を掴み、私が顔をあげると、そこには何とも言えない渋い中年男性が立ってた。
「あっ…いえ…だ、だ、大丈夫…です。」
これが私と彼の最初の出会いでした




