えぴそど237 おひさまの香り
「なんだその腑抜けた面は、帝国No.1剣士のアズ様が聞いて呆れるな。」
「吐かせスティンガー、この身体でもお前には負ける気はしないぞ。」
坂道で力尽きた俺を、門兵がスティンガーの元へと運び、ようやくアズ・バーネットが来ている事を伝えられた。
まだ、ヤッパスタ達からの報告は無い事から、アルネロは見つかってはいないと思われる。
俺の目の前では、なんともむさくるしい男臭半端ない二人が、熱く手を握りあわせている。
グリカがこの場に居れば、さぞ辛辣な言葉を発したであろう。
「しかし、お前がこんな状態でここに居るということは、状況は芳しくないようだな。」
「ああ、恐れていた事態が起こってしまった。正直かなり悪いと言っていい……すまないな、折角事を進めてくれていたというのに、無駄足になってしまった。許せスティンガー。」
「気にするな。ハゼルゼ様はとても聡明なお方だ。いちいち細かい事を引きずる様な方では無い。」
察するに勇者陣営で何かが起きたのであろう。
そして、それには十中八九それはサブダブが絡んでいると思われるからこそ、アルネロに早く伝えたかった。
「コースケ、手間をかけせたな。いつか言っていただろ、こいつが中央の元剣士だったアズだ。」
「言ってましたか?まぁ改めましてアズさん。俺は康介です。」
俺がそう言うと、アズが手を差し出して来たので、俺はその手を握り、握手を交わす。
「こちらこそ改めて感謝する。君が命の恩人には変わりない。何か含む所があるようだが、深く詮索するつもりも無いから安心してくれ。」
「あ、はい…それじゃあ、二人でお話もあるでしょうから、俺はこれで。」
二人に別れを告げ、俺は病室を後にした。
病院の外まで出ると、すっかり夜になっており、飲み屋から楽しげな笑い声が聞こえていた。
「さてと…」
俺は少し周り道をしながら、アルネロを探しつつ、ヤッパスタ達が待つ宿へと向かった。
◇
康介が出た病室では、スティンガーがドアを開け、康介が病院外に出た事を確認すると、アズの隣へと腰を落とした。
「先程の男、コースケと言ったか。あれは何者だ。」
「詮索しないんじゃなかったのか?」
「ああ…だが、俺が最初に名乗った折、激しい動揺を見せ、名乗りもしなかった。更にはお前を知っていると申した故、俺がここに居る事を伝えて欲しいと頼んだが、それはもう数時間も前の話だ。」
「……ふむ、正直な所、かなり腕の立つ冒険者グループの一人としか、俺も把握していない。」
「腕の立つか…」
「ああ、マンティコアがこの近くで討伐された事を?」
「無論だ。まだ未熟だったとは言え、カクトを始め、こちらの主力を苦しめ、更には古参メンバーを失ってしまった強者。最初に聞いた時は賢者の仕業かとおも思ったが、まさかお前が絡んでいたと聞いて驚いたぞ。」
「そりゃそうだろうな。」
「セシル・ランスターが指揮を取り戦ったと聞いたが、なるほど、そういう事だったか。」
「実際の所、さっきのコースケが居なければ全滅も必須の状況だった。それこそ強さで言えば天舞級かもしれんな。」
「……俺もただならぬ気配を感じ、手を確認してみたが、刻印等は無かった。」
「まぁあれだ。今はコースケ達の事は放っておけ。セシルのお気に入りだ。お前が目を付けられれば、元も子も無いぞ。」
「…そうだな……」
◇
俺が宿に戻ると、グリカとヤッパスタは部屋で大人しく酒を飲んでいた。
朝から身体を使って動いていた所為か、何処と無く元気は無い。
「アルネロ嬢はまだ戻って来てねぇですぜ旦那。」
「みたい…だな。帰りにも色々と見て回ってみたけど、何処にも姿は無かったよ。」
「……もしかして、嬢は一人で…」
「いや、それは無い。桃犬に交渉しに行く時にその話はしたんだ。きっと何か別にしてるんだよ。」
「そうですかい。」
ヤッパスタが元気無く言葉を返すと、グラスに入った氷が音を立て回った。
はっきり言ってヤッパスタは、これぐらい元気が無い方が渋みが出て雰囲気が良い。
「それよりもコースケ、臭いのです。おっさんの臭いが激しいのです。」
「え!?そ、そうかな?確かに今日はよく汗をかいたけど…」
「くっさいのです。控え目に例えてヤッパスタの分身なのです。」
「うおい!グリカ嬢!」
「それは大問題だな。」
「旦那も!」
「ははっ、冗談だよヤッパスタ。グリカも言い過ぎだぞ。」
「ははっ、ごめんなさいなのですヤッパスタ。正直だけが取り柄なグリカを許すのです。」
「てめっ!こんのぉぉぉ!……ふぅ…それよりもよぅ旦那ぁ…」
やはり元気は無かった。
「どうした?」
「俺達が担ぎ込んだ男が、勇者側の奴だったって事は、俺達けっこう無駄な事しちまったんじゃねーですかい?」
「うん、まぁ…でもあの時点で分かってた訳じゃないし、見過ごす事は出来ないだろ。それに、明確に敵対してる訳でも無いし、誰か分かってたとしても、やっぱり助けたんじゃないかな。」
「でもこれから喧嘩売ろうって相手っしょ?」
「喧嘩を売るのはサブダブにってだけで、何もレベリオンを…いや、一緒だな。そうなんだよな、そこなんだよ。だからこそ顔と名を知られたのが辛いんだよなぁ…はぁ…」
そうこうくだを巻いていると
アルネロが宿に戻ってきた
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「ヤッパスタだ!」
「グリカなのです」
「さて、次回のカマ切り戦士は!お?ん?あれ!?は?おいグリカ嬢、資料が何もねーじゃねーか!」
「それはそうなのです」
「なんだよ!?なんでだ!?」
「筆者が設定間違いを起こして、絶賛書き直し中なのです」
「はぁ!?じゃぁ次週分は出来てねぇって事かよ!」
「次週分どころか、えぴそど236-237を見て、なにか違和感を感じなかったのです?」
「いんや!」
「実は235から間違えていて、236から急遽書き直したのですよ。だから、やたら走り回されたのです」
「んだよ!それじゃぁほんとはこんなに疲れなくても済んだって話かよ!」
「いえす、ざっつらいとなのです。」
「大丈夫なのかよそれ!え!?じゃぁこの次回予告はどうすりゃいいんだよ!」
「今までもまともにしてたと思えないのです…」
「うぐっ!仕方ねぇ!俺がタイトルを決めてやる!次回!泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる!【えぴそど238 出陣】ぜってぇ読んでくれよな!」
「おおぅ…次の話で街をでないと行けなくなったのです…」
「出りゃいいだろ!」




