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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 中編
235/258

えぴそど235 サイコメトリー

「そこからはお前も知っている通り、俺は触れた者の記憶を読み取る力を手に入れ、今日まで数年間、フットプリンツとして活動している。」


「………どこがすこしくらいなんだ。もうひづけがかわったぞ。」


完全に日が落ち、辺りに人影は無く、ジャンカーロの街は静けさを装っていた。


「こんな話しをするのは初めてだからな。今後も話す事は無いだろうし、ちょっと高揚しただけだ。むしろ、有り難く思って欲しいぜ?」


「ふむ、きおくをうしなったといっていたが、それはもうもどっているのか?」


「いや、全く戻って無い。正直、今アズ・バーネットやリーファ・バーネットに会っても、親として認識するかも怪しいな。」


「そうか。」


「ま、第一、母親とはもう言葉を交わす事は無いしな。」


「……なくなったのか?」


「ああ、俺が連れ去られてから、実行犯達の死体が見つかったんだが、殆どが魔物に食い散らかされていて、判別が付かなかったらしい。」


桃犬からは哀しさは感じられない程、はっきりとした口調で言葉を続けた。


「俺もそこで死んだ事になっている。可愛がっていた息子も、研究していた魔法も同時に失ってショックだったんだろうな。アズも必死に慰めたらしいが、リーファは精神を病み、挙げ句の果てに塔から飛び降りて死んだよ。」


「それをしったとき、ショックではなかったのか?」


「あーどうだろうな。物心がはっきりと付いた時にはもう組織の幹部として人を殺してたしな。片時の思い出も無い人間が死んだ所で、親だとしても、何も感じなかったな。」


「ん……いやまて、ならなぜ『幼少期』のことをいまかたれたんだ?きおくはもどってないんだろう?」


「俺の力は、何も生きている者だけが対象じゃない。ユウジ君はこの力を『サイコメトリー』って呼んで、俺の名前も『エイイチ』にしようとか言ってたな。」


「……もしやきさま、ははおやのはかをほりかえしたか。」


「ああ、そうだ。父と母の事を知り、母の死を知った後すぐに墓を調べ、朽ち果てた母の身体から記憶を読み取った。それでも自分の事とは思えなかったがな。それに、母だけじゃない。あの事件に関わった者で、墓がある奴は全員調べてやったさ。」


「そうか…わたしもおやのきおくはほとんどないが、そこまで『薄情』ではなかったぞ。」


「まぁそれが俺なんだろうぜ。」


そう言うと桃犬は腰を上げ、徐ろに歩き出し、アルネロもその後を追うように付いて歩いた。


「はなしをもどすが、しんだとされるむすこからのてがみを、おいそれとすぐしんじるとはおもえんが。」


「あー大丈夫だ。リーファの記憶から、俺が本物だって分かる様な事をぎっしりと書いてやった。間違いなく信じる。そして、サブダブの裏切りを確定させつつ、勇者暗殺を食い止めてくれるだろうよ。いや、遅らせるくらいでも構わない。」


「……わかった、あらためてれいをいっておく。ともにいけることを、こころづよくおもうぞ。」


「へっ、いらねぇって。ともかく、もうじき情報が入ってくるはずだ。いつでも動けるようにはしておけ。俺はもう少しけ詰めておく。」


「こころえた。」


二人は顔を見合わせる事無く、自然と道すがら二手に別れ、それぞれ帰路についた。





桃犬とアルネロが別れる数時間前──



「あっ!先生!どうですか?」


ヤッパスタとグリカと共に、重篤状態の大男を病院に運び込み一時間程が経っていた。


俺は処置室から出てきた医師に駆け寄り、大男の様子を伺う。


「まだ何とも言えん。毒かと思ったが、もしかしたら呪いの類いかもしれん。ともかく、出来る処置は全てした。後は様子を見るしか無いじゃろ。意識は戻っとるが、面会するならあまり無茶させず、安静にさせておくんじゃ。」


「そうですか、意識が。ありがとうございます先生。」


初老の医師にお礼をすると、医師はそのまま白衣を翻し、廊下を歩いて行った。


俺は医師の姿が見えなくなるまで頭を下げ、寝ているヤッパスタとグリカを放って、大男の病室に静かに入る。


医師の言う通り、大男の意識は戻っており、顔面蒼白のままだったが、俺が入室する姿を目でしっかりと追っていた。


「あの…だ、大丈夫ですか?」


「……すまん…君がここへ…運んでくれたんだな…」


「あ、はい。一応仲間と一緒に。何か必要なものとかないですか?ここは市場からも近いですし、果物でも買ってきましょうか?」


「……いや、それよりも…すまないが…頼まれて欲しい事がある……」


大男は身体を起こそうとしていたので、俺は慌てて手を添えそれを手伝った。


「ここが…ジャンカーロだというのは…医者から聞いた…この街の長…ランスター家に仕える…スティンガー・ジブスレイと言う男に……ごほっ!ごほっ!」


「む、無理しないでください。それに、スティンガーなら知ってます。訳あってランスター家嫡男のセシルと懇意にさせてもらっています。だからすぐに伝えられますから落ち着いて。」


「…コホッコホッ………そうか…何という幸運だ…命を救ってくれた者が…あいつの知り合いだとはな…申し遅れた…私の名前は…アズ・バーネット…君の名前を聞いてもいいか?」


「え!?アズ!?え!?あーえーと…」


俺はその名前に激しく動揺してしまった。


それは今まで何度も聞いた、勇者側の側近中の側近の名前が出たからだ。


「ふっ……その様子だと……私とは敵対する者であったか?」


「え、いや、そういう訳でも無いというかなんというか…と、とりあえず、スティンガーにアズさんが来た事は伝えて来ます!」



ともかくまずはアルネロに報告だと

寝ているヤッパスタの顔面にスリッパを叩き込んだ

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