えぴそど234 for a moment
「目?」
「そう、眼や。」
俺がユウジ君の所に来て、一年が過ぎた頃、碧栗鼠から特殊能力についての話しをされた。
「ユウジ君が神さんからもろたスキルを使うとな、うちらに凄い力を与えてくれるんやで。」
ここに来てからは、歳の近い碧栗鼠と一緒に勉強をしたり、家の掃除を手伝ったりと、雑用をこなしながら、時折戦闘訓練をさせてもらっていた。
洞窟の中から出る事はほとんどなく、時折紫熊と碧栗鼠に付いて亜人の商隊に会う為に出る位だった。
「へ~碧栗鼠がその歳でそれだけ強いのも、そのユウジ君のお陰なの?」
直接的な指導は全て紫熊が行っていたが、模擬戦では碧栗鼠に力も技も速さも、どれにおいても勝った事は無かった。
「せや、眼はな、色によって使えるスキルがちゃうだけやのうて、しんたん能力も上がるんや。」
「身体能力ね。へー僕も貰えるかな。」
「リオンやったらお願いすれば貰えるかもしれんけど、記憶が戻ったら家に戻るんやろ?力を授かるってのは今後、ユウジ君に尽くすっちゅう証明でもあるんや。」
「家に…戻る…か…」
「こほんっ!」
突如後方から紫熊の咳払いが聞こえ、俺と碧栗鼠はビクつきつつすぐに机に顔を向ける。
「二人共、少し目を離したらすぐおしゃべりして。課題は終わったのですか?」
「もー!紫熊!ちゃんとやっとるって!なぁリオン!」
「う、うん。」
「嘘を言いなさい碧栗鼠。眼の話しをしている所から後ろに居ましたよ。」
「ほんま紫熊はやらしいちゃっちゃで…」
「リオン。眼の事については気にしないように。与えられたから、与えられないからといって、ユウジ君の対応が変わる訳ではありません。あの御方はいつも家族の事を大切に思っています。」
「家族…僕も家族にしてもらえるかな…」
「ははっ、リオン、君はもう私達の立派な家族……真っ白ですね…」
紫熊は俺の頭を撫でつつ、何も書かれていない課題用紙を見て、顔を引き攣らせていた。
それからしばらくして、同じ様な毎日が続いていた頃、俺はいつもの様に廊下の拭き掃除をしていると、ユウジ君が歩いてきた。
ユウジ君と紅梟は外出している事が多く、滅多に拠点に居ない事から、会うことは相当に珍しい。
「おーリオンやないか!なんや久しぶりやな。」
「ゆ、ユウジ君。お久しぶりです。」
俺は立ち上がり、丁寧におじぎをした。
「そんなかしこまらんでも(笑)困った事があればすぐに言うんやで。欲しいもんあったら紫熊に金持たせとるからな、遠慮のう言うんや。」
「うん…」
「なんや、どないしたんや。元気無いやないか。なんかあるんか?」
「あの…その…」
碧栗鼠から眼の話しを聞いてから、同じ本殿で寝泊まりする者の中で、唯一俺だけが眼を持っていないと知り、もやもやと悩む日が続いていた。
中々言い出せない俺を見て、ユウジ君は微笑みながら俺を抱きかかえる。
「よいっしょ!おーリオン結構重たいなーしっかりご飯食うて、もっと大きくならんとな!」
「う、うん。」
「なんや言いたい事あるんやろ?俺の部屋で男同士腹割って話そうやないか。な!」
その後ユウジ君の部屋に連れて行かれ、俺はたどたどしくも眼が欲しいとお願いすると、割とあっけなく『ええで!』と返された。
「そんなもんで悩んでたんかいな。」
「でも、碧栗鼠が、眼はユウジ君に尽くす証だって。僕は記憶が戻ったら、家に帰るからって…」
「かまへんかまへん!(笑)減るもんやないし!いや、減るんやけどな!だーっはっはっはー!」
承諾の返答を受けて尚、俯き加減で思い悩む俺を見て、ユウジ君は急に立ち上がった。
「リオン!確かに、碧栗鼠が言うように、眼を授けるからには本来俺の為に働いてもらわなあかん。でもな、リオンはまだ子供やねんから、お前の人生好きにしたらええ。」
その言葉を聞いて、俺の表情も晴れた。
「ただな、眼をやる前にもう一回だけ考えて欲しい事があんねん。」
ユウジ君の顔から笑みが消え、少し怖い位の真顔となった。
「この力はある意味俺が眷属を作るようなスキルなんや。」
「けんぞく?」
「あー難しいか。簡単に結果だけ言うとく。俺が寿命以外の事で死ぬと、眼を与えた者も死ぬっちゅー事や。死んだらそれでおしまい。今までしてきた事がぜーんぶ意味無くなる。それでも、眼が欲しいか?」
「それでも欲しいです!」
俺は半分被せ気味に答えた。
「まぁ…な…碧栗鼠が持ってるんやもんな。姉弟みたいなリオンにはやらんってのも、無理があるっちゅー話や。ええやろ、こっちにきぃ。」
ユウジ君は部屋を出て、紫熊を呼ぶと、幹部を全員集めた。
「えー!?ユウジ本気!?リオンは子供だよー?せめて装置が出来てからでも遅くないでしょ…」
「ユウジ様、私は反対です。貴方への負担が大きすぎる。それに、この子供では見返りを見込めない。」
「緋猫、紅梟、俺の事はええねん。それに、見返りを求めてお前らに眼を渡してる訳でもない。お前らが少しでも生きやすくなってくれたら、俺は本望や。」
「やったやんリオン!うちが言うた通りやろ?ユウジ君は優しいんや!」
「良かったですねリオン。これで碧栗鼠とも互角に戦える様になるかもしれないですよ。」
緋猫、紅梟は快く思ってない感じだったが、碧栗鼠と紫熊は喜んでくれた。
「皆に集まってもらったのは、知ってる通り、俺が何を忘れるか分からんからや。もしもの時は頼むで。特に紅梟、分かってんな?」
「……はい、お任せ下さい。」
「よっしゃほなリオン!行くで!!」
「う、うん!」
「リオンー!気張っていきやー!!うちらがついとるでー!」
ユウジ君の眼が白く輝くと
俺の中に力がみなぎり始めた
・
・
・
「ヤッパスタだ!」
「グリカなのです」
「さて、次回のカマ切り戦士は!やっと終わったみてぇだな糞犬の回想!正直全然読んで無かったぜ!」
「ヤッパスタがやんやうるさいから内容を削られたのです。」
「俺の所為にされちゃぁ困るぜ!これは全国民の総意だからな!んでもよ!これでやっとサブダブをぶっ殺しに行けるって事じゃねーか!早く冒険の旅に出てぇぜ!なぁ!?」
「章名に中編ってあるから、恐らく別の話しがそろそろ入ってくるのです」
「まじかよ!つ、ついに俺の英雄暖が!やったぜ!」
「たん(譚)なのです。そのまま暖めて寝かしとくのですよ」
「うぐっ!じ、次回!泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる!【えぴそど235 サイコメトリー】ぜってぇ読んでくれよな!」
「おお…やっとまともなタイトルを言えたのです。えらいえらい」
「馬鹿にしすぎだ!!」




