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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 中編
233/258

えぴそど233 for a day

俺が人狼の洞窟で目を覚ますと、そこに人狼の姿は無く、外から人の話し声が聞こえた。


痛みが残る身体に力を込め、声がする方向に出ると、そこには人狼と、フードを深く被った者達が数名立っていた。


「ん?あれは…おいおい人の子だろ。攫ってきたのか?」


「あー、なんか勝手に私の家に入り込んでたの。今日街に返すつもりよ。だいたい攫ったってお金にならないでしょ。」


するとフードを被った者達が俺に近づき、舐めるように頭から足の先までを見てきた。


「いや、これくらいの子なら充分金にはなるが…」


「じゃぁあんたが買ってよ。ツテが無ければ一緒だし、リスクが高すぎるわ。」


「……あぁ良いぜ、買ってやる。なんとかしてみよう。」


交渉がまとまったのか、どうやら俺はフードの連中に売られた様だった。


俺は無言のままその場に立っていると、お金を受け取った人狼が近付き、膝を曲げた。


「悪く思わないでね。私も生きていくのに一生懸命なの。」


「大丈夫。昨日は泊めてくれてありがとう。」


「……はぁ…」


人狼は俺の頭を撫でると、手を引きフードの集団に渡した。


「悪いようにはしない。ここで大人しくしてろよ。」


「うん。」


フード付きのコートを着せられ、荷車に乗ると、フードの集団は森の中を進みだした。


俺が大人しいせいか、特に拘束などはされず、途中途中には食事や水も与えられた。


フードの集団は、森の中に身を潜め暮らす獣人達を廻り、盗品や生活品の売買を行っている。


フードの先から立派な牙と豚の様な鼻が見えていたことから、猪人と思われた。


オーク等と同一視されがちだが、そちらは知能が低く、魔王に召喚された醜悪な見た目の魔物であり、どちらかと言えばゴブリン種やオーガ種に近い。


耳や牙、鼻を除けば人に近い猪人は、このオークと比べられる事をかなり嫌う。


俺はその後数日程、猪人達と共に森を進み、ある日、見晴らしの良い平原へと出た。


そのまま平原を進むと、先に馬車が見え、人が立っているのが分かる。


まだ大人とは言い切れない青年風情の男と、その男の足にしがみ付いた獣人の子供だった。


馬車の元まで来ると、荷車は止められ、猪人と青年が何かを話している。


「そうですか。仰る通り人身売買はリスクが高すぎる。そういう事であれば、私達が引き取りましょう。この金額でどうです?」


「ええ、ええ充分です。すみません、いつも良くしてもらって。」


「構いません。我らが主、ユウジ君は全ての亜人を平等に扱い、守ってくれます。貴方達こそ、故郷を追われた亜人の方々の為に頑張ってくれています。これくらいの事はさせてください。」


「う…あ、ありがとうございます。」


よく聞こえなかったが、猪人達は全員フード越しにすすり泣き始めた。


それから他の荷物のやり取りを済ませると、猪人達は俺の頭を撫で別れた。


「さて、君。記憶が無いと聞いたけれど、少しでも覚えている事はありますか?」


「名前……名前はリオンって事くらいなら。」


「そうですかリオン。私は紫熊。こっちは碧栗鼠です。」


「シグマとアオリス…」


「そうです。貴方の記憶が戻るまで、私達が貴方を保護します。一緒に行きましょう。」


「うん。よろしくおねがいします。」


そう俺が言うと、紫熊はにっこりと微笑み、碧栗鼠がしがみついままの足で俺の方に近付くと、手を差し出してきた。


俺がその手を握り返すと、紫熊はそのまま俺を馬車に乗せ、フットプリンツの拠点となる鉱山へと向かう。


荷物に囲まれた荷台では、獣人の子と二人きりだったが、ずっと俺に背を向けていたので、俺も特に構う事無く、黙ったまま馬車に揺られていた。


鉱山に着くと、中はとても広く、まるで街が丸々そこにあるかの様に様々な建物が建っていた。


人もたくさんおり、人種だけでは無く、獣人も数多く見られ、活気が感じられるほどに皆何かの作業をしている。


俺は紫熊に手を引かれたまま奥にある建物へと連れて来られると、中に入り、すぐに風呂へと入れられた。


「リオン、今からとても偉い方にお会いします。まずは身体をしっかりと洗いましょう。ちょっと臭います。」


「うん。」


「良い子です。私は先に言って話しておきますので、終わったら──」


「どれどれー!?紫熊が攫ってきたって子はー?」


説明をする紫熊を押しのけ、女性が更衣室に入ってきた。


「ひ、緋猫さん!人聞きが悪いですよ!私は亜人達が危険な目に合わぬ様、引き取ったに過ぎません!」


「んー?そんな事どっちでもいいよーこの子かー育ち良さそうな子だねーよっす!おら緋猫!」


「……よっす、おら…リオン。」


「うわわー!ノリ良すぎー!!ねー紫熊ぁ、この子を風呂に入れるんなら私が見とくよー」


「……分かりました。では私はユウジ君に報告を。」


その後、初めて会った緋猫に体中を無理やり洗われたが、正直この時の緋猫が無茶苦茶過ぎて、俺の意識は若干薄い。


風呂から出てぐったりした俺が着替えると、緋猫に手をひかれ、ある部屋へと連れて来られた。


そこには、不思議な格好をした男が座っており、その後ろには、恐ろしいほど冷たい目をした男が立っていた。


「よー!リオンつったっけな!わいはユウジや!よー来たな!どや!風呂は気持ち良かったか?」


「うん、ありがとうございました。」


「かまへんかまへん!ほんま、ちっちゃいのにしっかりした子やなー!ほんで、記憶喪失なんやてな。可哀想に……記憶が戻るまで、ここにおったらええからな。なーんも心配あらへん。わいは困った子を見捨てる様なアホちゃうから。」


当時の俺は、ユウジ君の不思議な喋り方を半分ほどしか理解していなかったが、その目はとても優しく、俺は自然とユウジ君に惹かれていた。



そうして俺はフットプリンツのメンバーと

過ごす事となる

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