えぴそど228 知ったかぶる盗賊
俺達は意識を失った大柄の男性を引きずりながら、何とかジャンカーロの街まで戻ってこられた。
すっかり顔馴染みとなった城門を警護する兵士に事情を説明し、身元不明の男も介抱を条件に特別に中に入れてもらうと、俺達は人々の視線を集めながら、医者を探し更に歩いた。
「この世界の医者ってちゃんと見た事無いけど、医院みたいなのを開いているのか?」
「この世界?」
「あ!いや、て、帝国の事だよ!あ、あれだろ?王国より進んでるって聞いた事があるからさ!」
危ない危ない…
俺が異世界人だという事がバレてしまう所だった…
ん?
つかなんで隠してるんだっけ?隠す必要なくね?
「進んでいると言っても……基本的に斬られたり折られたりなんかの怪我は治癒魔法で治せるですし、医者と言っても薬剤調合の技術力はそこまで大差は無いと思うのです。」
「そこなんだよ。魔法が使えるなら、ポーションとか必要無くないか?」
「……?何を言っているのです。魔法陣の取得には高額なお金が必要なのですよ。特に治癒系は一般の冒険者では手が出ないのです。初級魔法くらいなら魔導書からでも習得可能なのですが、中級以上になると然るべき場所で訓練する必要があるのです。」
「そこをポーションとか安価な薬品で補うのが医術って事か?じゃぁ、医者って言っても使える魔法に依ってランクがかなり違いそうだな。」
「まあ、基本的にはそうなのです。クエストなんかに参加しない回復に特化した職業が医者。回復技術を持ちながらクエストなんかに挑む者をヒーラーだと思えばいいのです。」
「なんかすごく理解出来て来たぞ。」
「ただ、同じ原理で身体強化という魔法があるですが、これは比較的簡単に習得が可能な上、アレンジの幅がとても広いのです。上手く応用すれば、簡易的な治癒と、体力回復は可能なのでみんな良く使うのですよ。」
「ほへ~ヤッパスタ、知ってたか?」
「んあ?だ、旦那、当たり前の事だろうよ。」
「そ、そうか。なんか、すまん。」
「着いたのです。」
俺達は街の一角にある、医者の所へとやってきた。
◇
「という訳だアルネロ。」
「ふむ…はなしはわかった。」
街の一角、深くフード被り、耳が見えない状態のアルネロと、同じくフードを深く被り、顔がほとんど見えない状態の桃犬は、雑踏に紛れ込み歩きながら小声で話した。
「しかし、きさまらのそしきも、そしきとどうめいをむすんだ『賢者』も、『勇者』の”死”をのぞんでいるにもかかわらず、それにはんし、ほんとうにわたしたちにきょうりょくするのか?」
「ああ、情報に対する対価はきっちり払う。俺の信念だ。これを守らなきゃ、本当に良い情報は集まらないからな。」
桃犬はフード越しにおどけ、足取り軽やかに答えた。
「そうか。りゆうはともあれ、かんしゃする。」
「必要ない。報酬は既に貰ったんだ。」
「………しかし、どうするつもりだ。いますぐむかったところで、きさまはあのおとこのうらぎりがわかるまで、うごけないのだろう?」
その言葉に桃犬は足を止め、アルネロの方へと振り返ると、尻を深く突き出し、指を振りながら『ちっちっちっ』と舌を鳴らした。
「要はあいつが裏切った事が証明されれば良いんだ。紫熊は勇者の死が裏切りの証明だって言ってが、あの男が必ず勇者を殺す確証は誰も持っていない。」
「ん?あんさつしないということか?」
「あーはーん?アルネロー、おいおいアルネローさーん?」
桃犬はアルネロの頭をノックする素振りを見せたが、身長が足りず、身振りのみに終わった。
「……なんだ、なにがいいたい。」
「裏切った証拠を作ればいいだけじゃんかよ。」
「はなしがみえんぞ。」
桃犬は露店で売られていた果実を通り際に取ると、金貨を指ではじき、店主に渡した。
「だーかーらー、奴が裏切る気満々ですよーってのを教えてやればいいんだよ。つか、もう教えちゃってるんだけどな。」
そう言うと、桃犬は果実をもぎり、片割れをアルネロに渡す。
アルネロは怪訝そうな表情を見せながらも、果実を受け取るとそれを口に運んだ。
「レベリオンの実質的指揮官は勇者じゃない。アズ・バーネットっていう、元帝国軍人の冒険者だ。腕ももちろん確かだが、恐ろしく頭がキれる。」
「むぐむぐ…そのおとこはしっているが、がいぶからのじょうほうをかんたんにしんじないだろう。」
「ああ、全くの外部情報だったら無理だろうな。だが、息子であるこのリオン・バーネット様の言葉なら耳くらい傾けるだろ。」
アルネロはその言葉に足を止め、桃犬のフードを上げた。
「なんだ?口づけでも交わすつもりか?俺はまだ子供だぞ。」
「……せんさくするつもりはないが、きさまはなぜおやもとをはなれ、えたいのしれないそしきのにんげんとしてこうどうしている。」
「充分詮索してるぞ。」
「………」
桃犬はアルネロの手からフードを払うと、再び歩き始めた。
「まぁいい。少しくらい教えてやろう。俺は元々帝国首都ダイタロスに住んでいた。軍人の父と、同じく軍人の母と一緒に三人でな。」
二人の進む街道は徐々に人気が薄れ、出店も少なくなっていった。
「父は皇族や貴族からも絶大の信用を得ていた実力トップの帝国剣士。母は魔法陣の研究を行い、数々の功績を残した一流の魔導師。今思えばそれはもう絵に描いた様な幸せな家族だったさ、あの日まではな。」
桃犬は街路樹の下に腰を下ろし
話しを続けた
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ヤ『俺の名前はヤッパスタ!強靭堅固の怪力無双!どんなでかい武器でも振り回し!如何なる攻撃も弾いてみせる!さて、次回のカマ切り戦士は!あの桃犬の過去編だ!エリシアさんに無礼な態度を取ったいけ好かねえ野郎だが、旦那達はあれを仲間に引き込もうとしてやがる。このまま一緒に戦う事になったら、魔物に攻撃するふりして、一発くらい殴ったってバチは当たらねーよな!?よし、殴ろう!次回!泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる!【えぴそど229 桃犬死す】ぜってぇ読んでくれよな!』
グ『死なないしタイトルも違うのです』
ヤ『しぃ!!』




