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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 中編
225/258

えぴそど225-勇46 向かう者

【スカイアロー領 リバイバ地下水路】


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」


アズは巨体を揺らしながらリバイバの地下に張り巡らされた水道を走っていた。


防具は途中で捨て、軽装のまま剣だけを握り、迷路の様な通路を奥へ奥へと突き進む。


(しかしどうする…この状況下で、まともな後ろ盾が居ない…)


レベリオンは発足当初からその旗印や活動名目、更にパーフラ教の母体を傘下に置いた事により、各貴族達の反感を買ってしまっている。


そこに付け加え、各地の救済名目による強引な出兵要請と、領内を許可無く縦横無尽に移動し、更にその領内にレベリオン兵を駐在させるなど、管理権限を持つ者からは嫌われる要素しかない。


しかし、今思えばそれら全てがサブダブの術中だったのかと、アズは歯を食いしばった。


アズは元々、カクトの王国への侵攻を叶える為、またそれに依る魔王討伐が帝国の悲願とも思い、それを為すべくレベリオンの勢力拡大と、各貴族への根回し等、政治的な活動に重きを置いていた。


しかし、コルピナの件を掛け合いに、各地の救済と、兵の常駐と言うなの分散を進言し、民の人心掌握を優先させようとしたのはサブダブだった。


カクトは自身の目的を優先するのであれば、アズを支持するべきだったが、コルピナの名前を使いながら、巧妙に説得するサブダブの意見を取り入れてしまい、更にその決断を、パトロンであるパーフラ教が諸手を挙げて賛同した事により、貴族層の反感をより一層買う羽目となる。


「はぁ…はぁ…『んぐっ』…さぁ、どうするアズ・バーネット…ここがお前の正念場だぞ。」


アズの前には3つに別れた水路が広がっていた。


一つはリバイバのすぐ近くを南東へ流れる川へと続く道。


これを抜け、事前に用意してある船で更に東へと川を下れば、カクトやジョリーアンが居る東部方面に向かう事が出来る。


一つはリバイバの近くの南西に広がる森へと繋がる道。


これを抜け、更事前に用意してある馬で、更に西へと駆ければ、帝国中央部に位置する、パーフラ教の本山に向かう事が出来る。


カクト達と合流する事ができれば、戦力を集中させる事が出来る上に、カクト達に危険が及ぶリスクを減らせられる。


だが、これすらもサブダブの狙いだとしたら、不用意にカクト達との合流は避けなければならない。


万全の体勢が敷かれていれば、一網打尽になり、後先にも、サブダブの反乱だと分かる者は無くなり、奴がレベリオンの実質的支配権を持つ事となる。


次にパーフラ教の庇護を受ける手だが、如何に賢者を有し、帝国内での政治的発言権があるとは言え、その賢者自体が不穏な動きを見せ、カクトとは上手く行っていない。


既にサブダブと手を結んでいる可能性が拭いきれないのだ。


二つの水路を交互に見返した後、残った一つの水路に身体を向け、アズは鞄から一つの書状を取り出した。


差出人の欄にはスティンガー・ジブスレイの名が書かれており、ランスター家の刻印が刻まれている。


残っている水路の行き先は、帝国南部方面へと流れる大河へと続く地下水脈への滝。


しかし、リバイバからランスター領までは距離があり、途中でサブダブの刺客に追いつかれる可能性もある。


また、スティンガーを通じ、ランスター家を取り込もうとしていたアズではあったが、明確な返答を貰えていはいない。


「………!?」


その時、後方からは突然爆発が起こり、轟音と共に、爆風が吹き抜けた。


砂埃が混じり、辺りは真っ白で視界を塞がれてしまったが、これはアズが事前に仕込んでいた追手用の罠であり、崩落させる事により時間稼ぎをする為のものだった。


「げぇっほっ!げほっ!ちっ!鬼が出るか龍が出るか!仕方ねぇ!スティルの腑抜けた面でも拝みに行くか!!」


アズは息を大きく吸い込むと、走り出し、通路の切れ目となった滝へと飛び込んだ。





【帝国領東部 トロア地方 アレガナ】


「主、半径数km圏内に魔物の群れは確認できません。殲滅は完了かと思われます。」


No.1は重厚感のある兜を外し、カクトの前で膝を付きながら報告した。


「……そうか…」


カクトはNo.1の横を通りすぎ歩くと、町民が避難しもぬけの殻となったアレガナの街に入った。


「……ガーディッシュ。」


「なんですカクト様。」


No.1と共に、カクトの後ろには情報収集に秀でたガーディッシュが行動を共にしている。


「各地で活発化する魔物の襲撃、中央は論外だとしても、北部と西部、それに南部はどうやって対処しているんだ。」


「あーえーと、それはですね。」


ガーディッシュは足を速め、カクトの横に並ぶと、身振り手振りを交えつつ説明した。


「まず我らがスカイアロー領有する北部は、バーネット総司令もサブダブ軍団長も常駐されておられますし、対処は万全でしょうね。」


カクトは相槌を行わず、話を聞きつつ、黙ったまま街を歩き続けた。


「次に西部ですが、ここは中央の帝国兵も配置されていますし、ここ東部と比べれば、発生する魔物のレベルが10~20違います。楽勝でしょうね。」


「………」


「南部は元々ダンジョンも多い地域ですし、副産物効果で領主は金をたんまり持っています。ダンジョン目的の冒険者の数も帝国ではだんとつに多いと聞きますし、ちょっとやそっとのスタンピートなら、金で兵を雇い、なんとでもやっちゃうんでしょう。」


「そうか…」


「あ、ちなみに今日届いた情報だと、南部では新たに複数のホットスポットが発生している可能性があるとして、かなり高額の討伐隊が組まれている様ですね。」


「……なら、やはり問題はここ東部か。」


「ですね。」


カクトは立ち止まると、道端に捨てられていた人形を拾い、強く握りしめた。


「………ここままでは埒が明かないか……No.1。」


「はっ!」


「発生源を潰しにドロス入るぞ。」


「御意!」


「え!?ちょ、ちょっとカクト様!?無茶です!無理無理無理!火点があると思われる場所までは、補給路だって確立されていませんし、高レベルの魔物だらけですよ!?境界砦の近くとは比べ物になりませんし……え!?ちょっと!聞いてますか!?ま、待って下さいよカクト様!!」



狼狽えるガーディッシュを他所に

カクトとナインズは出発の荷造りを始めた

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