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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 中編
222/258

えぴそど222-勇43 それぞれの白

【帝国領東部 ドロス地方、トロア地方境界地】


「主、ガーディッシュが戻ってまいりました。やはりまた、賢者様の行方が分からなくなっている様です。」


カクトの近衛兵集団、ナインズ隊長No,1(ナンバーワン)は剣を振り抜きながら言い放つ。


「……そうか。」


短く答えたカクトは、表情を変える事なく眼前に迫った魔物の胴体を真っ二つに切り裂く。


「ここはもういいだろう。ナンバーワン、レベリオンを退かせろ。残りはティンバー卿の兵にやらせる。」


「はっ!レベリオン兵よ聞けぇ!我々はこれより!ティンバー領まで下がり、モルガンに入る!隊列を組み直し!後退陣形を取れぇ!」


「「「「「はっ!!」」」」」


カクトが帝国東部、ローランドに到着し、既に2ヶ月近くが経過している。


当初救援に訪れていた東部方面軍は壊滅状態だった為、隊を解体し、人的補充の立て直しを図っていたのだが、レベリオン自体の人材不足は否めず、立て直しは難航し、人員補充の目処が付く間、カクトはティンバー領から動けない状態になっていた。


更に、この帝国東部という立地が、カクトの足を止める事に強く関係していた。


帝国領の中でも、最東の地であるそのトロア地方のティンバー領から、更に東に進むと、帝国政府すら匙を投げ出したドロスと呼ばれる荒地が広がっている。


そこは人が住みつけ無い様な不毛の土地であり、東部側であればあるほど、召喚される魔物が強力な上、ホットスポットが増え続けており、しっかりとした防衛対策を築かなければ、ティンバー領は魔物に蹂躙される未来が待っていた。


「カクト~!やっと戻った~!?アレガナの方に魔物の群れが向かってるって報告が入ってるんだけど~つか汚いな~ドロドロじゃん。」


ドロスの土地で魔物を狩り数を削っていたカクトが、ティンバー領との境界に築かれた砦まで戻ると、門の前でジョリーアンが出迎えていた。


カクト含め兵士達は戦い続けていた結果、白を基調とした装備は、血や泥で元の色が分からない程に汚れていた。


「……猶予は?」


「報告が上がったのが1時間前。ここからアレガナまでが馬を走らせて2時間弱。その時点の報告で時速3kmの行進が、一直線であれば数時間から遅くとも半日の距離って言ってた~」


「つまり、今からすぐにでも向かわなければ、アレガナは墜ちるか。」


「ま、そういう事だね~私が行こーか?」


「………」


カクトはおもむろに背後の兵士達に目を配った。


ナインズは重装の為表情が分かりにくいが、レベリオンの一般兵達は連日で高レベルの魔物と戦い続けており、疲れが見て取れる。


「……兵達を休ませる。これ以上戦線の拡大をして、数を失う訳にはいかない。」


「りょうかい~」


ジョリーアンはカクトを通り過ぎ、後ろの兵達に向かい、砦内に入り、手当と休息を行う様に指示を出した。


「ほらほら~あんた達もだよナインズ~」


「はっ、ジョリーアン様。」


一般兵がカクトに頭を下げ、砦に入る様子を眺めながら、No,1がジョリーアンに声に応えるものの、ナインズはその場を一切動こうとはしなかった。


「…………ナインズ。俺達はアレガナに向かうぞ。」


「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」


「え!?うっそ~ナインズ可哀想~(笑)」


カクトはナインズが連れてきた馬に跨ると、沈みかけた夕日を睨んだ。


「……ジョリーアン、ここを任せるぞ。」


「あ~いよー」


「ジョリーアン。」


「なになに~ここは任されたって~」


「アズに再度催促を入れておけ。魔物召喚の活発化は、最早レベリオンだけで対処できる範囲を超えている。帝国が本気で動かなければ、領土を尽く削られるぞとな。」


「……ん、伝者に厳しく言ってもらうようにしとくよ。」


「頼んだぞ。」


カクトが振り返らずに馬を走らせると、ジョリーアンは煙草に火を付け、その姿を見送った。





【帝国領北部 メーヴェナス地方】



男は衣服を着用せず、巨大な岩に向かいひたすらに魔力を注ぎ続けていた。


「サブダブ様。」


そんな男の背後より、魔猿の文様が印された面を付けた黒装束の女が声をかける。


「その声はキリサロか、ずいぶんと久しいでしょうよこれ。」


「はい、恐らく一年ぶりかと。それよりも、グリュンゲルガーが天照の塔を離れました。後を追わせておりますが、所属不明の男女と行動を共にしており、接触が困難な状況です。現在ジャンカーロ方面に向かっております。」


サブダブは湯気があがるほどの汗を拭いつつ、解かれていた自身の長髪を編みだす。


「グリカがジャンカーロへ?………本人から連絡は?」


「ございません。」


「洗脳が解けたか…あるいは…まぁいいでしょうよこれ。それより…バハロ。」


「はい、ここに。」


キリサロの更に奥より、同じく魔猿の面を付けた黒装束の大男が姿を表した。


「勇者はどうだってよこれ。まだトロアに居るのか?」


「はい、先日の報告では付近の魔物討伐を続けております。ジョリーアン様も同様です。」


サブダブは少し視線を落とし、足元を這うムカデを踏み潰すと、その死骸を掴み、バハロの元へと歩み寄った。


「………バハロ、食えってよこれ。」


「……はい。」


バハロは差し出されたムカデを手に取り、面を少しめくると、口へと運び噛み砕いた。


「このままあの場所に居座り続けられるのは不味いでしょうよこれそれ。挟み込みにならない…それも、もう2ヶ月近く………動かすには……やはりアズのおやっさんが邪魔だな……」



サブダブはレベリオンの服を手に取ると

手についたムカデの血を拭い

再び地面へと放り投げた

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