えぴそど217 仲間を選んでね
「おーいおいおいおい…おーいおいおい…」
「……」
「……」
「……や、ヤッパスタ。話を続けてもいいか?」
俺達は宿の一階にある酒場に入り、酒を酌み交わしながら、アルネロの考えを聞いていた。
「あ”、あ”あ!だ、大丈夫ですぜ!進めてくださせぇ!だ、旦那…すまねぇぁぁぁぁ!うおぉぉぉぉん!」
合流したヤッパスタが、想像通りと言うべきか、玉砕しており、先程から横で泣きじゃくり集中出来ない。
というか、『おーいおいおい』という独特の泣き方が気になって集中できないという方が正しい。
「……とうぞくのことはほおっておく。」
「あ、ああ……それでアルネロ。話を戻すけど、やっぱり賢者との共闘をするかどうかがひっかかっているのか?」
「…そうだな。だがやはり、やつが『勇者』をうらぎってからうごきたいところでもある…」
もちろん奴とは目的であるサブダブだ。
桃犬からの情報が正しく、近いうち(と言っても具体的に決まっている訳では無い)に勇者を暗殺するのであれば、王国勢からすれば願ったり叶ったりだ。
「『賢者』とたいめんして、あれがかなりやっかいなにんげんだというのがわかった。こちらのてのうちをみせれば、なにをしてくるかわからないだろう。」
正直、俺にとって、天舞は二人目の出会いだったが、キラハと言い、ベルと言い、癖が相当に強そうだった。
サブダブが勇者を暗殺をしてしまえば、賢者と拳王は抑止力を失い、俺達の望む結果とは真逆に動く可能性もある。
そうなれば勇者暗殺ルートに入ると本末転倒だ。
かと言って、サブダブが裏切る前に行動するには、勇者と接敵する可能性もあり、今のこの四人だけでは戦力が心許なく、俺達はジレンマの中でもがいていた。
「そもそもパーフラ自体が厄介な組織なのです。パーフラの信徒以外で、帝国内にパーフラを良く思っている人なんか居ないのですよ。そんな鼻つまみ者集団の中から出てきた賢者…まともな人間である筈がないのです。」
グリカが中々辛辣な感想を述べると、その厄介な集団の女性に恋心を抱くヤッパスタが顔を上げ、グリカの方を睨みつける。
が、すぐにまた泣き出してしまった。
「でも、だとすると、やっぱり俺達だけで行くのか?」
「……ああ、ブーメルムをでたときからそのつもりではいた…が、やはりきけんすぎるか…」
アルネロの考えがまとまらない限り、俺達は先に進めない。
これはそもそもアルネロの復讐の為の旅。
グリカも私怨があるようだが、俺とヤッパスタは基本的にアルネロの意見に反発するつもりは無い。
「考えたのですけど、あの桃犬と言う人を雇えないのですか?情報にも戦闘にも長けていそうなのです。賢者よりはよほど信用できそうなのですが。」
俺もグリカの意見には賛成だ。
ハピスさんの事情を聞いている手前、手放しに賛同できる内容では無いが、あの桃犬はそういった事を抜きに考えられる頭を持っている筈だ。
「……やつを…か…」
すぐに否定しない所を見ると、桃犬を取り込む事に対して、アルネロもまんざらではなさそうだった。
「たしかに、『賢者』とくらべ、むやみやたらにこちらのじょうほうをもらしたり、そのネタでゆすることもないだろうが…しかし、やつをとりいれるだけのかちのある『情報』がないな…」
そうだ。
桃犬は敵だとか味方だとか、そんな狭い範囲で物事を考えていない分、奴が興味を持つ情報を与えられるかどうかが殊更に大きい。
そして、こちらは既に二国間を行き来するルートという、最大の価値を持つ情報を与えてしまっている。
これ以上奴らが知りたがる情報なんて…
ん?
……あ!
「な、なぁアルネロ。」
「同行する事でレベリオンの事ももっと知れると思うのです。それを出汁に使うというのはどうなのです?」
「ふむ…だが、やつらは『諜報』がメインのそしきだ。おもてだってことをおこすことをよしとしないかのうせいがある。」
「アルネロって。」
「では逆に、協力する代わりに、こちらも何か桃犬の協力をするという条件はどうなのです?」
「なにをいわれるかわからんぞ。そんな『不確』なものをあてにしているようでは、このさきがおもいやられてしまうな。」
「困ったなのです…」
ある。
桃犬が興味を必ず持つ情報を俺が、俺だけが持っているじゃないか。
「アルネロ!」
「なんだ、うるさいぞさっきから。きこえているからつづきをはなせ。」
「俺にいい考えがある。その前に、今回の戦いに、桃犬を引き入れたいという事で間違いないんだよな?」
「………なにをいうつもりだ。」
「い、いや。それはあの…ごめん。この内容は慎重に扱いたい事だから…その、みんなに話す訳にはいかないんだけどさ。それでも仲間にしたいっていうんなら、とってきおきの情報を俺は持っている。」
「それは……わたしにだけでもはなせないのか?」
「…………いや、あー…」
「まぁいい。いいたくなければいわなくてもいい。だが、ジャクシンさまにかんすることはやめろ。」
「それは大丈夫だ。むしろ、俺の事だから。」
「……そうか……ふむ……ふむぅ…わかった。やってくれるかコースケ。それでだめなばあいは、わたしたちだけでむかう。」
「ああ!そうと決まれば、もう一度桃犬達に会いに行こう!」
俺の持つとっておきの情報
そう
俺が第三の神から力を与えられているという事
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桃犬にするかベルにするかコイントスで決めました




