えぴそど211 英国式
白いローブの女に連れられ建物の中に入ると、一階には馬車や武器が保管されいた。
「こっちですわ。」
白いローブの女に促され、更に奥へと進むと地下へと降りる階段があり、そこを降りると頑丈そうな柵の扉が現れた。
扉の手前と奥には、異様な面を着けた見張りが立っており、白いローブの女を見るや、すぐに扉を開ける。
そのすぐ数メートル先にも扉があり、そこを面を着けた兵士が開けると、中には部屋が広がっており、別の白いローブの女性が座っていた。
「おかえりなさいませ。お客様ですか?」
「ええ、エリシア。この方々に何か飲み物を。貴方達はそちらにおかけなさい。ミルミー、桃犬を呼んで来てあげて。」
「ああ、それは構わないけど、私が離れちまってもいいのかい?」
「大丈夫ですわ。彼らが襲ってきても、私には傷一つ付けられません。」
「ふっ、そりゃそうだろうけど。まあいいや。じゃ、ちょっと待ってな。」
暗に俺達を雑魚扱いした所で、俺はジャクシンさんやメイエリオから聞いた事を思い出した。
この世界でレベルを調べる事が出来る唯一の組織、それがパーフラ教団だ。
恐らく、俺とグリカのレベルを先に把握されてしまったのだろう。
だからと言って、俺はともかく、グリカのレベルを見ても余裕をかましている事から、とてつもなく強いに違いない。
そう、もちろん俺もレベルは測っている。
この白いローブの女のレベルは49。
気配も無くグリカの背後を取った事から見ても、到底敵う相手では無い。
まぁ、俺の相手になるかと言えば、そうとは限らないが。
「もし、緊張されているのかしら。よろしければ、なぜ桃犬の事を知っているのか、フットプリンツの名前をどこで聞いたのかを聞かせてくださらない?」
「すまないが、それは桃犬から聞いてくれると助かる。交渉前の今、余計な揉め事の種を撒きたくないもんでね。」
「あら、そう。」
これは誤魔化した訳では無く、本意だ。
この女がパーフラ教である限り、アスタリア王国の者は敵として認識しているだろう。
グリカも帝国人とは言い難いが、今俺が王国から来た者だと知られるのは得策では無い。
まずは、桃犬と掛け合い、話に乗ってくるかどうかを確かめることが先決だ。
奥の扉が開き、お世辞抜きで可愛らしい少年が中に入ってきた。
「なんだよ、確か康介と言ったか。なんでここに居るんだよ。」
「え?誰?」
俺の頭にクエッションマークが複数浮かぶ。
「桃犬だよ。前に会ってるだろうが。」
思てたんのと違う!
確かに会った事はあるけど!夜の森で暗闇だったし!つかよく考えたら獣柄のローブを着て、頭狂った喋り方をしている姿しか知らないし!
え!?
なんだよ!第一ボタンまで閉められたシャツに、チェック柄のサスペンダー付き短パン、エナメル質の靴って…
どこの英国式おぼっちゃまだよ!!!
セシルよりよっぽど領主の息子感があるぞ!!!
「なんだ、こいつ…おい、ベル。なんでこいつをここに連れてきた。」
「あら、随分ね。この方々が貴方とフットプリンツの名前を出したから、わざわざ案内してあげたのですわよ?もし敵対されてる方なら、貴方がどう反応するのか面白そうでしたしね。ふふっ」
「……まぁいい。で、何の用だ。」
桃犬はソファに姿勢正しく座ると、差し出されたお茶を優雅に呑み始めた。
「ちょっと待ってくれ。あの、本当に桃犬か?あの森で俺にストールをくれた…?」
「……そうだ。確かに顔を見るの初めてだろが、俺が桃犬だ。言っておくが、暇じゃない。それに、本来お前らはここに来ていい存在じゃない。要件があるなら早く言え。」
喋り方も普通過ぎて、俺の頭が混乱を極めている。
だが、そろそろ話を進めなければ、あちらには得体の知れないレベル49が鎮座している。
俺だけならなんとでもなりそうだが、もし何かあったら、グリカがただでは済まない。
「す、すまない。ストールはありがとう。実はあんたにお願いをしに来た。」
「……あぁ?意味が分からないぞ。フットプリンツに入りたいとかそういう話か?」
「いや!違う違う。本当は、その話を一番聞きたい人間がいるんだけど、今はあんた達を手分けして探してた所なんだ。」
俺がそう言うと、桃犬はティーカップを置き、足と腕を組みながら『アルネロか』と不敵に笑った。
「ああ、そうだ。だから今すぐどうこうという話では無く、交渉に応じてもらいたいという、交渉になる。」
「回りくどいな。大凡、サブダブの事だろ?」
頭のキレは良い。
俺が答えようとする前に、レベル49が割って入った。
「サブダブ?この方々はもしかしてサブダブをどうにかしようとされているのかしら桃犬。レベリオンの幹部中の幹部であるあのサブダブを?」
その言葉に、戦慄が走る。
まずい、私怨でぶっ殺しに来ただなんて言えないし、そう勘付かれるだけでもやばい。
「あ、いや、その。」
「面白そうですわ!そのお話、私にも是非お聞かせ下さい!!」
レベル49は少女の様に目を輝かせながら
前のめりでそう言った




