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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 中編
210/258

えぴそど210 白いローブ

俺達は、良いチンピラ君達から聞いた情報を元に、ジャンカーロ西部の大通りを突っ切り、城壁側へと向かった。


馬車を使っても、端から端まで相当な時間を要する広さの街なだけあって、西部と括っても、徒歩だと城壁までは時間を要した。


「はぁ、はぁ、壁は見えるのに、全然近くならないな。」


「街と言っても、帝都ダイダロスに次ぐ大きさなのです。旧王朝との戦いでは、最前線の防衛拠点として活躍し、南部守護の要として君臨したのは伊達ではないのです。」


「旧王朝との戦いね。グリカが居た天照の塔が、王朝のあった場所なのか?」


「いあ、違うのです。天照の塔より更に北へ行くと、王朝時代の都市、ガジャ遺跡があるのですが、それを更に進むと、東西に長いジュナ大森林があるのです。森を抜ければ、王国との国境になるギャロー渓谷が、森の手前がキジュハ王朝跡になるのです。」


「そうなんだな。国境沿いね。でも、なんだってその王朝はそんな国境際に王都を置いたんだろうな?攻めてこられたら、真っ先に矢面になるだろう?」


その問いにグリカは少し遠くを眺める素振りを見せた。


「初代勇者、キジュハラム様の時代、王朝建国前は帝国はもちろん、王国すら無いから国境もなかったのですよ。」


「まとめるものが無かったって事か?」


「いあ、違うのです。今と比べて人口もかなり少ない時代ですし、それぞれの集落で長を立て自治を行う程度の事はしてたと思うのです。」


「それが気付けば王朝だの、王国だの、帝国だの。領土争いにまでなってるって事か。」


「んー領土と言うより、やっぱり際限無く魔王を産出する魔族を討伐したいという気持ちがあったのかと思うのです。」


「なるほどな。そう聞くと魔王って本当に厄介な存在だな。」


「本当なのです。あ、コースケ。見えて来たのです。」


話し込みながら無心で歩いていると、いつの間にか商店や民家は無くなり、倉庫などが立ち並ぶエリアにまで来ていた。


遠くに見えた城壁は、空を覆うほどの高さですぐ近くに見え、改めて大都市である事を認識させられる。


「兵士が立ってるな。正面から行っても帰されそうだけど。」


「あの紋章はスタンレー家のジャンカーロ兵なのです。なんとかセシルの名前を出して通れないものですか?」


「何の書状も無く無理じゃないか?」


グリカは黙り込み口元へ指を運び考え込むと、辺りを観察し始めた。


「これだけ倉庫が並んでいる中で、あそこにだけ警備が置かれているとなると、益々あそこだとしか思えないのです。」


「勇者の私兵だったら、何もこんな隠すような形を取らなくても、国賓扱いで行けるもんじゃないのか?」


「それは──」


「理由は簡単ですわ。レベリオンには内緒で来ているのですもの。」


俺達のすぐ後ろで聞こえた女の声に、俺達はすぐに構えながら振り向く。


「お止しなさい。こんな町中で戦おうとでも言うのですの?」


そこには、茨の刺繍が施された白いローブに身を包む女が立っていた。


更にその後ろには、冒険者の装いをした女剣士がおり、こちらを見ている。


「………」


「そんなに警戒なさらないで。あそこに何か用事でもありますの?」


俺はその問いにすぐには答えられなかった。


一見どこにでも居そうな気品ある白髪の普通の女性なのだが、纏う空気はとても重く、息苦しささえ覚えたのである。


それはここまで結構な距離を歩いてきた俺の、息切れが原因なのかもしれないが。


「勇者に内緒で?傘下の人間がそんな事していいんですか?」


「勇者?呼び捨てとは、結構な事ですわね。」


後ろに居た女剣士が静かに剣を抜くと、必死に振り絞って出した言葉に後悔をしてしまい、俺の額を冷や汗が流れる。


でも、それはここまで結構な距離を歩いてきた俺の、ただの汗なのかもしれないが。


「い、いや。驚いてしまって。すみません。勇者様です。」


「………貴方達……変ですわね。色が無い。もしや、魔族が紛れ込んでいるのかと思えば、違いますわね。」


「……」


この女には、王国と帝国の人間を見分けるスキルがあるものと思えた。


「あの!そのローブからするに、パーフラ教団の方だとお見受けするのです!」


気まずくなった空気の中、グリカが随分と余所行きの声でローブの女に話しかけた。


「ええ、如何にも。私はパーフラの者ではありますが、貴方達は私の問にまだ答えておりませんわ。何の用事があって、あの場所を見張っていたのですか?」


「……フットプリンツ…」


「……なんですか?フット?それが?」


ローブの女は表情一つ変える事なく惚け始めた。


その応対が逆に、関係ある事を示唆するには充分だった。


「俺達は取引に来たんだ。惚けても、貴女は関係者でしょう?リオンとか、桃犬とか呼ばれてる人が居る筈です。どうか取次をしてもらえませんでしょうか。」


「………」


ローブの女は黙ったまま、俺とグリカを舐める様に見ると、『まぁいいですわ。』と俺達に付いて来いと言った。



塀で囲まれた倉庫に向かうと

兵士達は無言で道を明け中へと入る事に成功した

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