表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
殲滅☆大花火
204/258

えぴそど204 一意は逸れ

「!?……そんな馬鹿な、ループ…」


ユージリンと戦っているキープの目に、ループの身体が真っ二つにされる姿が映る。


それは同時にユージリンからも確認出来たが、ゴンガの傷を見るに、既に戦線に復帰できる状態では無い事が分かっていた。


「はぁ、はぁ、ゴンガ…やったな…」


余所見状態のキープに対し、ユージリンが素早く切り込むも、キープは顔を背けたまま、片手で握った刀で、ユージリンの斬撃を簡単に受け止める。


「ゆっくり遊んでいる時間は無くなった様だ。終わりにさせてもらう。」


キープは片手でユージリンの剣を弾くと、ユージリンは大きく後退させられてしまう。


戦闘が始まって以来、ユージリンは決定打を決められないまま、一方的にキープに攻めたてられていた。


片目を失い、身体には無数の傷を受け、元々万全では無かった状態での戦いに、ユージリンの疲弊は激しく、ここまでユージリンが死なずに済んでいるのは、キュアソードの自立反応があったからである。


剣の侵食を受けた手が、自動的に回避運動をもたらしてはいたが、相手の力量が上を行き、ユージリンは活路が見い出せないでいた。


(はぁ、はぁ、力、技、速さ、どれを取っても相手の方が上手だ。このままでは…)


ユージリンが魔法陣を展開しようとすると、キープは眼の力を発動し、瞬時に距離を詰め、刀を振り抜いた。


(くそっ!)


ユージリンもギリギリの所で刀を受け止めるも、次の瞬間には刀が別の刃筋を辿り、振り抜かれていた。


「がっ!!」


身を捩り回避しようとするも、胸当てから肩にかけて切り込みがユージリンに入り、血が滲み出す。


「決めさせてもらう。」


ユージリンが僅かばかり仰け反ってしまった瞬間、キープは刀に魔法陣を展開させると、目にも留まらぬ速さで刀を鞘に収め、抜刀の姿勢を取った。


〈刀スキル 無距離居合斬り〉


キープの刀は、完全にユージリンを捉え、魔力を帯びた刀は瞬速の一閃を残し、刃は天へと向けられた。


キュアソードが反応し防御反応を取るも、斬撃を浴びると、キュアソードは砕け、キープの刃はユージリンにも届く。


防具もろともを破壊されたユージリンは、血を吹き出しながら体ごと後方へと吹き飛んでしまう。


倒れたユージリンが動かない事を確認すると、キープはダリアの方向を確認する。


「ん?……な!?…ダ、ダリア…様!?」


しかし、そこにダリアの姿は無く、対峙していた筈のハピスが、こちらに向かい歩いて来る姿が見えた。


「そんな…まさか、ダリア様までもが…くっ!」


キープは刀を鞘に入れ構えると、面越しに再び眼を輝かせ始めた。


「貴様ぁ!!よくもダリア様を!!!!」


「えー!?私の所為なの!?どっちかってーと自滅ぽいんだけど!!」


ハピスは構えず、鉄球を担いだまま、ゆっくりと歩きながらキープに近づく。


「仕留めさせてもらう!」


「じゃぁ、返り討ちにさせてもらう!なんてね。」


まだ距離はあったものの、眼の力による瞬歩を使い、刹那の瞬間にハピスに詰め寄ると、刀を抜き、振り抜いた。


〈刀スキル 雷閃〉


『ガキィ!』


しかし、刀はハピスの身体には届かず、鉄球で受け止められてしまう。


「な!?」


「な?」


ハピスの眼が輝いている事に気付き、警戒しつつも、キープは更に斬撃を続けて行く。


〈刀スキル 業生〉


〈刀スキル 流水〉


〈刀スキル 如来〉


明らかな死角より放たれた技すらも、最小限の動きで受け止めるハピスに対し、キープは底しれぬ恐怖を抱いてしまう。


「くっ………腐っても元幹部か…」


「腐ってるだなんて失礼だな!私はそこそこ綺麗なはずなんだけど!!」


キープは距離を取ると、刀を再び鞘に収めた。


「ん?諦めたかい?正解、君は正しいよ。まずもって私には勝てないからね。相手と自分の力量を測れるのは、君が強い証拠だ、恥じる事はないよ。」


キープはその言葉に面を外し、ハピスがユージリンの元へと歩く姿を目で追った。


「……ア種の中でも剣撃の速さだけは自信を持っていたのだがな…所詮我らは模造品だったか…」


「意外にイケメン過ぎて笑うわ。兎に角これ以上の戦いは意味を持たない、降伏してよ。あ、ユージリジリユー、めっちゃ瀕死じゃん(笑)」


ハピスは鉄球を開き、中からポーションを二本取り出すと、一つはユージリンの傷口にかけ、一つはユージリンの口に突っ込んだ。


その光景を傍観しつつ、キープは身体に巻いていた鞘の留め具を外すと、刀を抜き、鞘を捨て、着ていた着物を脱ぎ、上半身を裸にした。


「否、会稽の恥は持たない。」


「なにそれ、つまらない意地で死んじゃうだけだよ?」


「かもな……それでも…」


キープは腰を落とし刀を構えると、大きく息を吸った。


「我は上級時雨兵!ア種ノ参號!いざ!決着の刻ぞ!反逆者!緋猫!」


キープの足元には大きな魔法陣が展開され、眼は今まで以上に神々しささえ感じられる程に、黄色く輝いた。


「お、おうふ。なんだか仰々しい肩書きがあったんだね…こほんっ!やーやーわれこそは、グラマラスボディに世界一かわいい顔を持つ、超絶天才アルケミスト!ハピオラ・スカーレットなーりー!」


ハピスは、鉄球内から取り出した小さなメスを握り、キープと同様の構えを取った。


キープの足元にある魔法陣が光を増すと、バチバチと稲妻を纏うかの如く周りを電気が走る。


「もうね、正直見飽きたよ。黄色の眼は瞬歩頼みなんでしょ。それじゃ、勝てないね。」


「ふっ、構うものか!私の全てをぶつけるだけだ!参る!!!」


ハピスの目の前から消えたキープの姿は、一時の静寂の後ハピスの後方に現れる。


しばしの静止の後、キープの首と胴がゆるやかに離れ、そのまま倒れ落ちた。


「……さてと、これでだいたい終わりかな。よいしょっと!」



ハピスは空に向け何かを投げると

白目を剥くユージリンの口に別のポーションを差した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらポチって下さい!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ