えぴそど202 惨憺に呆れ
ハピスから離れ、左右に展開しつつ、ダリアが連れてきた面兵二人を、囲いこむ様に迫るユージリンとゴンガ。
剣の間合いに入る前に、ユージリンは魔法陣を展開させ、自分側では無く、ゴンガ側の面兵目掛け、剣を鞘に収めたまま魔力を放った。
〈中級剣スキル ウインドスラッシュ〉
「ループ。」
「ああ、問題無いキープ。さっさと片付けよう。」
放たれた衝撃波を意図も簡単に避けると、面兵は眼を黄色く輝かせ、左右に分かれ、それぞれ対峙する形を取った。
(あの身のこなし、速さが段違いだ。ゴンガが危ない……いたっ!)
ユージリンは急に走った痛みに、手にしたキュアソードへと視線を落とす。
鞘に収まった状態のキュアソードは、何かに反応するように、ユージリンの手へと侵食を始めていた。
(キュアソード…分かってる。お前を使わなきゃ勝てないんだろ…やってやる!)
ユージリンが鞘から剣を抜くと、面兵の一人キープは、ユージリンのすぐ目の前まで移動してきており、既に抜刀した刀をすれ違い様に振り抜く。
しかし、振り抜いた側のキープの刀は弾かれ、反動で大きく後退しつつ、キープは地面を擦りながら踏ん張り、手に残った痺れを確認していた。
「……マジックウェポンか。不相応な物を。寿命を縮めるぞ。」
ユージリン自身は反応しきれてなかったが、キュアソードがキープの刀を弾いていた。
「使わないなら使わないで寿命が縮みそうなんでね。俺は自分の力を過信しないんだ。」
ユージリンは剣を構え、魔法陣を展開するとキープに向け走り出す。
「ふっ、気構えは良し。」
キープも刀を構えると、ユージリンに向け走り出す。
◇
「んふっ!んふっ!んっふんだぁー!!!」
「………」
ゴンガは近づいて来たループに対し、手にした杓文字をがむしゃらに振り回すも、かする事すら無く、単純な足運びだけで避けられていた。
「………もういいだろ。」
ループは、杓文字の避け際に刀を抜くと、ゴンガの右腕に向け、身体を回しながら、勢いよく振り抜いた。
「!?…んぎぃ!!!」
「……?」
刀の刃は、まるでケーキを切るかの様にすんなりと腕に入るも、切り落とす事は叶わず、腕の途中で止まってしまった。
「い、いってぇだぁぁぁ!!!!」
ループは刀を抜くと、目の前で痛がり蹲るゴンガを他所に、刃こぼれが無いか刀を確認した。
「骨?予想以上に肉が分厚いのか、それとも何かあるのか。胴ごと切り離すつもりで振ったのだがな。」
「ふぎぃー!ふぎぃー!」
ゴンガの右腕は半分近く切れてしまい、そのままでは重さで落ちてしまいそうな程、傷は深かった。
「ならば首はどうか?」
ゴンガは顔を上げると、痛みに顔を歪め泣きながらループを睨んだ。
「お、おめぇ!おらがおにぎりを握れなくなったら許さねーど!!!」
「………」
ループは言葉を返す事なく、ゴンガの首筋に刀を振った。
◇
「さぁ、その足でまだやるかい?ダリアちゃん。」
ダリアの太ももには、ハピスが突き刺したナイフが、反対側の肉を突き破る程に突き刺さっていた。
「……ちっ。」
ダリアは足に刺さったナイフを抜くと、ハピスに向け投げつけ、ハピスが避ける合間に、ドレスの切れ端を裂き、傷口を縛った。
「このまま引き下がってくれないかな。今の貴女にそんな忠誠心があるようには見えないんだよね。」
「忠誠心?はっ、ある訳ねーだろそんなもん。誰にもつんだよ。あのクソユウジか?クソ紅梟か?それともクソ神にか?笑わせるな。」
ダリアは縛り終えた足を地面に着け、動きの支障を確認する。
「……なら、なぜ貴女は組織の為に戦っているの?フットプリンツの目的は、世界の真実を見極める事だったはず。興味がある様に見えないんだよね。」
「なまぬりぃ。」
「ん?」
「お前らが言う、真実なんかに興味なんてねーよ!私は私を馬鹿にした奴らをぶっ倒す!それ以外に興味はねぇーんだよ!!!組織なんて知った事か!!」
「……そっか。貴女は良いように使われただけなんだね。」
「黙れ!おめーのその上から目線が気に入らねぇんだよ!!何勝ち誇ってやがる!!もう完全にキれたわ!!おめーの能力が何だって構わねー!ぜってー殺す!!」
ダリアは再び激昂すると、胸元から小瓶を取り出し、そのまま口に流し込んだ。
「おー、なんかヤバそうなもん呑んだね。」
途端にダリアの目は充血し始め、皮膚が赤黒く変色を始めだした。
「まさか、まさかのまさかだけど、それクラバナ…紅梟から貰ったでしょ。あいつ…私のレシピ盗んでやがったな。」
「ぐるぎいいいいいいいいいぎゃああああ!!!」
更にダリアの目や鼻からは血が流れ始め、身体からは蒸気が登るかの如く、体温を高め、汗を蒸発しはじめていた。
「ダリア…分かったよ。私が貴女を開放してあげる。」
ハピスはどこか悲しげな表情を浮かべ
鉄球を拾った




