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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
殲滅☆大花火
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えぴそど189 万丈に痺れ

ユージリンが真剣な眼差しで訴える姿を見て、ローランは俯き、頭をぽりぽりと掻いた。


「ふんっ、若い癖に煽り方が上手いな。だが、私がこの街の商会と取引している時点で、既に手を染めているとは考えないのか。」


「ええ、どこの馬の骨かも分からない私と、こうやってすぐに席を設けて頂いた判断力と行動力から、私はローランさんを信用しています。貴方はきっと聡明なお方だ。」


「耳が痛いな。私は利己的な行動しか取らんよ。君の話が私にとって有益であれば乗る。そうでなければ乗らない。正義感だけでは生きていけないからな。」


「おっしゃる通りです。」


「だが、『時間を買う』と言うのは気に入った。話を聞いてくれというやつは腐る程居るが、私の時間を買いたいと言ったのは君が初めてだ。私も商人の端くれ、売れる物は売る。しかしな…」


ローランはユージリンを信用していない訳では無かったが、これからの人生にも影響を及ぼしかねない内容に、踏ん切りがつかないでいた。


「分かりました。では、こういうのはどうでしょう。」


「……なんだ?」


「明日再交渉があるとおっしゃいましたが、ローランさんはその時、魔鉱石の値下げだけを行って下さい。先程も言った通り、不足分は私が補填します。」


「?……それだけでなんとする。」


「ええ、もちろんそれだけでは不十分です。ですから、その交渉以外の時間、そこの4人の護衛の方と、私が個人的な契約を行い、若干の仕事をしてもらう事のお許し頂きたい。」


「ふむ、それくらいであれば…こいつらは若いが腕は確かだ。だが、人が欲しいのであれば、ギルドで募集をかければ良いだろう。わざわざこんな回りくどい事をしなくても。」


「痕跡を残したり、あまり目立った事は避けておきたいんです。私がというより、依頼を受けた方々の為を思えば尚更。」


「なるほどな…だが、こいつらが受けるかどうかは別の話だぞ。」


ローランは葉巻を消し振り向くと、若い冒険者達に判断を委ねた。


「何をすればいいのかは分からねぇけど、どのみち危ない橋を渡れってんだろ?」


若い冒険者の一人は、腕を組みながらユージリンに聞いた。


「ああ、君達にはローランさんに会わせてもらっただけでも充分に感謝している。だが、今はある程度動ける人材がどうしても欲しいんだ。金は言い値で払おう。」


「……言い値ね……どーする?」


腕を組んだ若い冒険者は仲間に相談を始めた。


「金になるならいいんじゃないか?ギルドを通さないとなると手数料も取られないだろ。」


「とりあえず話を聞いてからだろ。危ない匂いがぷんぷんする。」


「でもよ、街の奴らの様子を見ただろ。あれがクリュスで起こるのを考えると、俺は我慢出来ない。」


「ああ……それは間違いない。もし俺達の手で止められたら、いつか自慢できるだろうしな。それこそ、死んだ父ちゃん母ちゃんにも顔向けできる。」


「でもその所為でやばいやつらに目を付けられたら。」


「そうなったら、この兄ちゃんに責任取ってもらうしかねーだろ。」


「まぁ、じゃぁ…いっか。」


「決まりだな。ユージリン、まずは話を聞かせてくれ。内容によっちゃ協力させてもらうぜ。あと、俺はバール、こっちはワッシャーとクランク、あとそっちがナットだ。」


そう言うとバールは腕組を解き、メモを取り出し話を聞く体制を取った。


「ありがとうバール、ワッシャー、クランク、ナット。順番に説明するからよく聞いていてくれ。先に言っておくが、時間が無い。明日中には形にしておきたいんだ。」


「私は席を外そうか?」


ローランが気を遣いユージリンに問うも、ユージリンは笑顔で断った。


「いえ、ローランさんも聞いていて下さい。もし、気が変わったらいつでも参加してくれても構いませんので、内容くらい知っておいても損は無いかと。」


「ふんっ、この私が完全に踊らされているとはな。いいだろう。私も話を聞こう。」


こうして、全員で席を囲み、ユージリンが考えた陽動作戦の内容を伝えて行った。




「おい!そこのでっけーやつ!何回言ったら分かるんだよ!昨日も言ったじゃねーか!!それはそっちじゃなくて、あっちだ!!」


「す、すまねーだ。」


「たくっ!ギルドの奴も、もう少しまともな奴寄越せってーの!次間違えたら、もう雇わねーぞ!」


「は、はいだぁ!」


ゴンガはゴーロンの街より北部にある草原地帯の一角に来ていた。


ハピスに指示された通り、ギルドで指定された依頼を受けて二日目。


他の冒険者と一緒に馬車で運ばれてくると、休む間も無く作業に入らせられた。


ゴンガが受けた依頼は、麻薬ポーションの原料となる植物の栽培と収穫作業。


今は巨体を揺らしながら、指定された場所で、育った実に傷を入れ、溢れ出てくる白い液体を瓶に集めている。


「は、腹減っただなぁ…」


「おい!でっけーやつ!黙って集めろ!」


「は、はいだぁ!!!」


ゴンガは叱られながらも作業を進める。


しかし、ゴンガがここで働く理由は、もう一つあった。


それは、ユージリンとハピスから頼まれた、陽動の仕込みを行う事。


(お、おいらは二人のや、役に立つんだぁ!)


ゴンガは、作業の見張り役の目を盗み、隠し持っていた筒を取り出すと、それを麻薬の生えている土に向かい埋めた。


(あ、あと12個だぁ。)


こうして、それぞれが準備を進める中、その日を迎える。



その日は朝から冷たい雨が降っていた

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