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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 前編
180/258

えぴそど180 片翼のハンター

アルネロとスティンガーが馬車へ向かうのを確認した後も、マンティコアに攻撃をしながら、淡い期待を込めて何度か振り向く。


だが、二人は一直線へと、馬車の方への歩みを止めない。


「あー!あー!分かったよ!俺一人でやればいいんだろ!」


俺は半分ヤケになり、二人の参戦を諦め、獅子型に挑む。


とは言ったものの、相手の速さは衰える事なく、俺が致命傷を与えるまでにはなっていない。


鎌化槍とて、普通の魔物に対しての攻撃力は充分なのだが、かすめてしまう現状では物足りない。


確実に仕留める攻撃力を持つのは〈小かま〉だが、これだけ俊敏な上に、ちょこまかと動く相手に対し、スナイパーライフルの様なスキルでは心許ない。


「身体強化しか勝たん!」


そう、こうなったら身体強化で、鎌化槍をなんとしてでも刺す事しか活路が無い。


幸い、クールタイムは終えており、身体強化は使用可能だ。


身体強化は俺のスキルとは違い、スキルボードには出てこない為、使用する事を頭の中に集中し、ぼんやりと出てくるイメージを掴むしかない。


そもそも、倒す倒さない以前に、身体強化を使わないとこれ以上立っていられない。


既に動き回ってる俺の片足は攣っており、体力の半分以上を使ってる。


某エースパイロットが放った様に、『帰ってこれるのかこれで』状態だ。


馬車の方を確認すると、グリカはまだしっかりと動き戦えている。詳しくは分からないが、狼の数も減っている様に見えた。


あんなに小さな身体で、本当に凄い子だと思う。


「俺も負けてられない!!来い!死神!!」


俺は手を正面に向けかざし、身体強化の死神を喚んだ。


分かってはいたが、手を向けた方向では無く、死神はいつもどおり背後に現れる。


俺が残念感を醸し出しながら振り向くと、『え?な、なに?』と言った様に、困惑した表情を見せた。


「なんでも無い!!それより!俺に憑依だ死神!あいつをぶっ倒すぞ!」


俺は再び前を向き、眼前の獅子型の魔物、マンティコアを指差した。


しかし、そこに居たはずの魔物の姿は無く、死神はおちょくる様に俺の指の方向と、指先を交互に見ていた。


「ど、どこに行った!?」


『ボォォォォォォォォ!!』


俺は咄嗟に雄叫びがあがった方向を見ると、先程まで、遠くに集まっていた獅子型とは別の魔物達が、すぐ近くまで来ている。


更に、先に倒した二体の獣型の死体を、集まっていた魔物達が食べ始めていたのだ。


『ボォォォォォォォォ!!』

『ギャシャァァァァ!!!』

『ゴァァァァァァァァ!!』


俺と戦っていた獅子型は、死んでしまった仲間の身体を守ろうと、手を出す魔物達に必死に攻撃を仕掛けている。


だが、多勢に無勢、食事を邪魔された魔物達の方が圧倒的に数が多く、更に、レベルを見た所、それなりに強そうなのも混じっていた。


幾つもの雄叫びが木霊し、辺りは宛ら怪獣大戦争の様になってしまった。


「こ、これどうするべきだ…!?」


死神はまるで『憑依すんの?どうすんの?』と言わんばかりに、俺にひっつきかけたり、離れたりを繰り返している。


「むぐぐぐぐ…」


困った時のアルネロだ。


俺は馬車へと向かうアルネロを再び見ると、二人は足を止め、こちらを見ていた。


「よし!すぅぅぅぅぅぅ。」


アルネロが再び馬車へと向かう前に、俺は思いっきり空気を吸い込んだ。


「アールーネーロー!!!どーおーしーたーらーいーいー!?」


バカでかく叫んだ俺の声は、山間を木霊し、しばらくの間反響した。


アルネロは呆れた様な表情を見せると、スティンガーと反対の手で持っていた鉄甲を置き、片手で事前に打ち合わせていたブロックサインを送ってきた。


「えーと、なになに、『う』『る』『さ』『い』『し』『ね』!?いやいやいや、そういう事やってる場合じゃないんだけど!」


いつも通りの洗礼を受けると、大声を出してしまった所為か、俺自身の周りにも魔物が集まり始めていた。


俺は再びアルネロのサインを確認する。


「『すこし』『じかん』『を』『おいて』『ひけ』…少し時間を置いて退け!つまり撤退だな!了解だ!」


恐らく、今の二人は早く歩けない。


その時間を作った後であれば下がってもいいと言うことだろう。


だけど、このままジャンカーロに帰った所で、俺達のミッションは達成したと言えるのだろうか。


「うーん…仕方ない。最後に一つ手土産だ。」


俺は死神に改めて憑依を命じると、アルネロにふっとばされるも、まだ食べられていない獅子型の頭に向かい猛ダッシュをした。


そのまま大きな頭を掴むと、魔物達から距離を取った。


強い魔物達はそれぞれ三つ巴どころでは無い、ごちゃごちゃの大抗争を繰り広げている。


それらより比較的弱い魔物達が幾匹か俺に向かって来てる。


俺は獅子型の頭を置くと、鎌化槍を構え、それらを薙ぎ払っていった。


そうして戦い続け、もう2~3分で身体強化が切れるという頃だろうか、馬車より一つの火球が上がるのが見えた。


高い確率でアルネロの魔法であり、撤退の合図だ。


俺は踵を返し、獅子型の頭を掴むと、馬車に向かい猛スピードで斜面を駆け上がって行く。



あの貴族の坊っちゃんの事だ

この頭一つで大喜びするに違いない

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