えぴそど15 天舞とパーフラ教
神の登場まで後少し
「え!?じゃぁ皆さんは自分のレベルを知らないんですか!?」
レベルを知る方法が無いだと。
ステータスボードは俺にしか使えないものだったのか。でもそうだとしたら、『レベル』と言う概念自体が無いと話がおかしい。意味は通じていた様に思える。
そう、ジャクシンさんは『この国では』と言っていたし何かあるのか。そう考えているとメイエリオが口を開く。
「レベルを確認する事ができるのは、賢者職かパーフラ教の大司教職、司教職、司祭職の使う天声スキルが必要なの。でも基本的に信者でないと鑑定してもらえないし、信者であってもかなり高額なお金を要求されちゃうわ。だから、普通の人は自分のレベルを知らないのよ。」
メイエリオが長文を噛まずに説明していた。
うん、よく喋るメイエリオもいいもんだな。間髪入れずにジャクシンさんが言葉を重ねる。
「よもや人のレベルも判ると言うのではなかろうな。」
「それは、ステータスボードとはまた違うんですが、スキルの中に『れべるかんていがん』なるものがあるのでそれで。」
素直に答えると、ジャクシンさんは天を仰ぎ「ふー」と一つ溜息をついた。そして、重々しく語りだす。
「パーフラ教は、その天声スキルなるものを使える事で『神の使徒』を自称しているイカレた集団だ。しかも、昨年その信者の中から寄りにも寄って『知の天舞』が出たことにより一層勢力を強めている。」
ちのてんぶ?なんだそりゃという顔をしていると、メイエリオが呆れた顔をして『オンダ村に向かう途中に話したじゃない!』と怒っている。
あぁ、あの強力なスキルを使える事ができるってやつね。
この世界には能力が通常より遥かに突出した者達がいるらしい。それは生まれつきで授かるものではなく、ある日突然、神託を得るとの事。その突出した能力の者達をパーフラ教が【天舞】と名付けた様だ。
なんだったかな、仏教に【天部】という仏の使徒の様な名称があった気がする。より人に近い存在とも言われてた様な…もしかしてそれと関係あるのか?
とにかくその【天舞】の強さが半端ないらしい。
そもそも、この世界のスキルは【初級】【中級】【上級】【最上級】と四段階にしか分かれておらず、同じ等級の魔法や技を使っても、人によって威力が全く異なるとの事。
その違いはレベルに依るものと思われている様だ。
俺はその話を聞いてレベルだけでは無く、STRやVIT等、見れないだけで基礎能力が関係していると考えている。
そして、その【天舞】に選ばれると、それまでの経験やスキルは関係なくなり、【最上級】スキルの更に上【最高位】スキルを唯一使用できるようになるらしい。それも【天舞】になった瞬間だ。宝くじもびっくりなご褒美だな。
今現在、能力が判明しパーフラ教に銘打たれたものは4つ。
〈正〉の天舞は最高位破壊スキルを使用できるようになり
勇者と呼ばれる
〈知〉の天舞は最高位魔法スキルを使用できるようになり
賢者と呼ばれる
〈堅〉の天舞は最高位格闘スキルを使用できるようになり
拳王と呼ばれる
〈節〉の天舞は最高位創造スキルを使用できるようになり
魔王と呼ばれる
最初は、勇者や魔王だなんてかわいいなぁと思っており、また、自分に関係無いと判るとまともに聞いていなかった。だが、よくよく聞くと俺が思っているものと若干考え方が違うのだ。
それは『破壊スキル』を持つ者が勇者で、『創造スキル』を持つものが魔王だと言うこと。
普通は逆なんじゃなかろうか。まぁそれも関係無いかと思っていたら、名付けたパーフラ教が大いに関わっていた。
「それで、自分や相手のレベルが判ると何か問題でもあるんですか?」
「パーフラ教とそれ等を庇護する帝国は我々の敵だ。」
わーお、やっちゃったな。要するに俺がパーフラ教の司祭以上だと疑いが出てしまったって事か。
延いては帝国側の人間だという疑いが強まった。
記憶喪失にした事も裏目に出た。俺が否定しても実はそうだったんです的展開を警戒されちゃう。
しかも、もしかしたら俺ってその『知の天舞』だと思われてる!?強力なスキルにレベル鑑定のスキル。間者としての要素はモリモリ大盛りだ。
「えっと…じゃぁ俺は皆さんの敵になるって事なんですかね…」
「いや、そうと決まった訳ではない。パーフラ教は信徒含め男子禁制、司祭以上なら天声スキルの獲得方法を秘匿する為に、契約魔法を大司教にかけられる。その際、背と両手の甲に契約の刻印が刻まれるはずだ。先ほど確認したが、貴様の身体のどこにも刻印は無かった。」
「じゃぁ俺は大丈夫なんですね!」
「だが、男子禁制と言うのは周知の事実だ。それを逆手に取り、男の間者を作る事など充分考えられる。また、帝国に情報を流し間者を育てさせたというのも有り得なくは無い。」
「俺はどうすれば…」
「様子や行動を見ていても、敵対する風には今の所見えん。自由に行動させる訳には行かないが、我々の監視下に在ると言うのであれば滞在は認めてやろう。間者が素っ裸で騒ぎを起こす阿呆だと言うのは、私も疑問に思う所だからな。」
「う……あ、ありがとうございます…ジャクシンさん…では早速宿に────」
「まだ聞かなければならない事は山程ある。」




