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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
突撃☆隣のクソ野郎 前編
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えぴそど149 南下セリ

メイエリオやユージリンを見送ってから三日後、ついに俺達の出発の時が来た。


朝早く俺は、鼻提灯を膨らませ枕を掴んだままのヤッパスタを連れ、城門の所へと到着する。


「きたか、よくおくれずにきたな…ん?そっちのカスはマホウでもかけられてるのか?」


恐らく鉄甲が入った大きな鞄を背中に担ぎ、フード付きのコートで耳を隠したアルネロが腕を組んで立っていた。


「いやいや、寝ぼけてるだけだ。ヤッパスタの荷物は俺がちゃんと持ってるよ。」


「ふむ、しかたないな……おこしてやろう。」


アルネロは不意に俺達の方へ近寄ると、『ふんっ!』と鼻息荒くヤッパスタの股間に蹴りを入れた。


『!?な、ながぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!』


今、確実にヤッパスタの何か大切なものが失われた気がする。


ジューちゃんなら紹介してやるから、安心するんだぞヤッパスタ。


アルネロが用意してくれていた、専用の馬車に乗り込むと、すぐに出発となり、ブーメルムの城門が徐々に離れていく。


ダンジョン探索から、何度も見てきてた光景だが、今回はいつ帰って来れるのか正直分からない。


どこか名残惜しさを感じつつ、俺は振り返りアルネロに訪ねた。


「なぁ、アルネロ。基本的に俺達は付いていくだけだけど、まずはこれ何処に向かってるんだ?」


アルネロは手にした資料の束に目を通しながら、こちらを向く事なく答える。


「わたしにまかせておけ。こんかい、せいこうほうできょかをとってのにゅうこくはむりだからな。」


「どういう事だ?」


「旦那、基本的に両国内を行き来するには国の許可が必要なんだぜ。」


「ああ、それは分かってるけど、出来ないってのは?」


「われわれが、アスタリアのにんげんだとバレてはいけないということだ。もくてきをおもいだせバカモノ。」


「な、なるほど。」


「そう聞くと俺らってテロリストみたいだな!だははっ!!」


「………」


相変わらずアルネロとの距離感が難しい。


ヤッパスタの、空気を読んでそうで読まない強固な心を、見習いたいものだ。


そこからしばらくは、特に何がある訳でもなく、街道を道なりにひたすらと進んで行った。


俺は馬車の後ろから景色を見つめ、ヤッパスタはひたすら眠り続け、アルネロは時折、ミリシャと呼ばれる女性の御者と相談している。


昼食時には馬を休ませる為、草原で休憩をしたが、そこからまたしばらく走り続けた。


「アルネロ。」


「……なんだ。」


俺には一つ気になる事がある。


「ブーメルムって帝国との国境に位置する街なんだよな?」


「そうだ。」


「もう日が傾きかけてる。帝国まではこんなに遠いものなのか?朝からもう10時間は進み続けてると思うけど。」


「うるさいな。ちりくらいべんきょうしておけボケ。」


「ご、ごめんよ。」


「せいこうほうではいけんといっただろ。ほんらいギャローけいこくの、けんもんじょにむかえば、はんにちほどのきょりだ。」


「じゃぁもしかしてこの道は、国境沿いに並走してる形なのか?」


「旦那~時間と太陽の方向を見てりゃ、俺でもそれくらい分かりますぜ。」


「うぐっ…いや、俺もなんとなくはそうなんじゃないかなってさ!確認だよ確認!」


俺達はどうやら、国境沿いに南下している様だった。


「でもよーアルネロ嬢。このまま行きゃオライオスを抜けて海に出るだけなんじゃねーか?」


「ほうほうはある。」


「な!まさか!?海を渡るのか!?おいおい!無茶だ!」


横になっていたヤッパスタが、飛び起きながら危惧している。


「海だと何か不味いのか?」


「不味いなんてもんじゃねーですよ!海はとんでもねぇ強さの魔物の巣窟でさぁ!Aクラス以上のダンジョン並だって言われてるんですぜ!」


「え、本当なのかアルネロ。」


「ああ、だがもんだいない。うみはわたらない。そろそろつくはずだ。みてみろ。」


アルネロが顎で指した方向を見てみると、遠くにある海をバックに、丘の中腹辺りに見慣れた鉄の扉があった。


「あれって…」


「ダンジョンじゃねーか。」


「そうだ。あれがていこくへとつながるみちだ。」


馬車は尚も進むも、街道が途切れてしまい、御者は馬を止めた。


「アルネロ様、ミリシャがお連れできるのはここまでとなります。どうか…どうか、ご無事で。」


「ああ、たすかった。いままでずいぶんとせわになったな。かんしゃしている。ミリシャ、かえりみちは、じゅうぶんようじんしろ。いってくる。」


アルネロは、悲しげな表情を見せる御者の肩を優しく叩き、ついに泣き出した御者を抱き寄せて慰めていた。


俺とヤッパスタは、夕陽に照らされるその光景を見ながら、荷物をまとめていた。


アルネロがこちらに戻ってくると、馬車は来た道を戻っていく。


アルネロの目は真剣そのものであり、硬い決意が見て取れた。


俺とヤッパスタは何も言わず、アルネロの後を付いていき、ダンジョンの入口へと向かう。



海の方からは

魔物の不気味な鳴き声が木霊していた

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