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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
未来へと続く選択
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えぴそど144 不安感と決意

「俺はいつもの頼むぜ!」

「私も!」

「俺も!」

「お、俺も。ハピスさんとアルネロは何を呑みますか?」


酒場に着いた俺達は、二階の大きな丸テーブルを囲み座る。


慣れた様子で座り、浮かれ顔でいつものオーダーをすると、同じく慣れた様子で顔馴染みになった店員は、一階に向け大きな声でオーダーを通す。


それぞれのオーダーを済ませ、料理はまだだが、グラスが揃った所で皆で乾杯をする。


ヤッパスタやハピスさんが言った通りだ。


正直な所、街に戻った日は、呑んで無い日が無いと言っても過言では無い程四人で飲み歩いている。


ダンジョンに潜っている事もあり、ストレスが溜まるというのもあるが、今までとは比べ物にならない素材を得られる為、皆それなりに羽振りが良い。


しかし、乾杯が終わるも、料理を待つ間どことなく重苦しい空気が流れる。


「んー?どういう状態なのこれ、今。」


「あ、いや。どこから話したもんかなって思って。」


「これからどうするかでしょ?」


「そうなんですけど…あ、じゃぁメイエリオ!」


「え!?わ、私から!?いや、私のはそういうんじゃなくて…」


メイエリオの心持ちを探る意味合いが強い飲み会だが、俺は少し焦ってしまったのかもしれない。


「コースケ。」


その姿を見兼ねてか、ユージリンが割って入ってきた。


「あ、ああ。どうしたユージリン。」


「メイエリオはきっと、コースケの気持ちを聞かせて欲しいと思ってる。」


ユージリンの言葉に、メイエリオは俯いたまま頭を縦に頷いた。


「え!?お、俺の気持ち!?」


俺は混乱した。


俺の気持ち。


待て、いつメイエリオから告白された!?


そ、そりゃあメイエリオは可愛いし、面倒見もいいし…でも、歳が離れすぎていて男女の関係と言うより家族としか…


第一、ユージリンはメイエリオを好きなんだろう!?

恋敵の俺の気持ちをはっきりさせた所で、お前はどうする気なんだよ。


俺がそんな事を考えながら目を丸くしていると、ヤッパスタが口を開いた。


「旦那、俺達は云わば『普通』の人間だ。旦那の様に特殊なスキルがある訳でも、優れた能力を持ち合わせている訳でもねぇ。ハピス嬢に訓練してもらったからって言って、急激に強くなるってもんでもねぇ。」


ん?何の話しだこれ。


俺はそう思いながら黙って聞いていた。


「旦那は拳王やら、未知の天舞やらと関わっても平然としているが、俺達、普通の人間にとってはとんでもねぇ事なんだぜ。嬢ちゃんやユージリンが言いてえのはそこじゃねーのか?」


「うん…」


「え?ど、どういう…」


ヤッパスタがそこまで言うと、メイエリオは顔を上げ、俺を真っ直ぐと見てきた。


「私は不安なの。このまま何事も無く毎日を過ごして行ければ幸せなんだろうけど。コースケと出会ってからの毎日は、色んな事が起きすぎてて楽しい半面、私自身の力不足って言うか、どうしたらいいのか、不安が日に日に大きくなっちゃって…」


「このまま行けば、コースケは勇者や賢者、魔王に未知の天舞との戦いに巻き込まれていく様にしか見えないしな。」


ユージリンの補足を聞くと、皆に不安感を持たせていて申し訳ない気持ちよりも先に、勝手にメイエリオの好意をどう受け止めるべきか考えていた自分が恥ずかしくなった。


「分かったよ。皆の不安は最もだ。」


慢心等は無いにしろ、俺は心の何処かで自分だけは大丈夫だと突き放して見てしまっていたかもしれない。


強肉弱食が無ければ、今こうして生きていられないかと思うと急に心配になった。


この気持を三人が笑顔の裏で抱いていたかと思うと、居たたまれない気持ちになる。


「そうだな、ここらではっきりさせておくよ。」


俺は真剣な顔になり、ゆっくりと話していった。


「メイエリオが言う様に、今のこの状況が続いていけば良いと正直な所は思ってる。だけど、この世界は今までとは違う何かに、確実に走り出してる気がしてならないんだ。」


その言葉に、ハピスさんが少し反応した様に思えた。


「ここに居るみんなを守る事を第一にしたい。それは本当に思ってる。だけど、恐らく戦争は起こってしまうだろうし、俺は、俺達は選択を迫られる時が必ず来ると思う。」


俺の言葉を、皆は静かに聞いてくれていた。


「それが結果的に、勇者や魔王と対峙する事になったら………俺はやっぱり立ち向かうよ。何もしないで諦める事だけはしたくないし、その決心だけは鈍らせたくない。もちろん勝てるかは分からないけどね。」


これは死神のジューちゃんとの約束に値するだろうか。


全人類の皆殺しをやれる程、保身に走るつもりは毛頭ない。だからと言って、この世界の人々の魂をこのまま神の玩具にしていいとは思っていない。


いずれは、王国や帝国の体制そのものを無くし、国境も争いも無い世界を築き上げなければならない。


だが、まだそこまで自分の中に具体的なプランがある訳でも、強い信念がある訳でも無い。だから、漠然と今の状況が続けば良いと思っていたんだと思う。


「そう…」


メイエリオは再び何かを思いつめた様に短く反応した。


「私も決心が着いたよ…コースケ、私、元々居たヤーの街に帰る。」



メイエリオから

実家に帰らせて頂きます発言が出た

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