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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
陰謀渦巻く夢の果て
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えぴそど140-勇41 All-or-Nothing

「ど、どこへ向かってるのこれ!」


研究所を後にし、私は状況が飲み込めないままユウジとクラバナの後ろを付いて走った。


「どこって…ほんまや!クラバナ!これどこ向かってるん!?」


「落ち着いて下さいユウジ様。大丈夫です…ちゃんと見つからないルートと馬車を用意しております。」


「っちゅーこっちゃ。ハピオラちゃん!大丈夫!クラバナに任せておけばオールオッケー!全て万事休すや!」


「ユウジ様…その言葉は意味が違いますよ…」


軽いノリを見せるユウジと、白衣を脱ぎ真っ黒なコートに身を包んだクラバナ。


私にはそもそも選択肢が無い。


研究所に残り、処断されるか。

研究所を出て、逃げ切るか。


しかし、心の何処かで、そんな事すらもどうでもよく感じる感覚と、今は新しい天舞についてもっと知りたいと言う欲求が勝っている事に、薄々は勘付いていた。


「うぅ~ん…」


「お?良かった。意識戻りそうやでこの子。」


ユウジは研究所を出る前、あの実験の生き残りであるオナガリスの子供を抱え出ていた。


「後で治療致しましょう。さ、もう少しです。」


しばらく森の中を進むと、開けた場所に出る。


「はぁ…はぁ…もうあかん!もう走られへんでクラバナ!」


「はい…あちらに馬車を用意しております…ユウジ様とケイブル博士は後ろへ。」


三人とも肩で息をしながら馬車に乗り込むと、ユウジは改めて私の方をまじまじと見てきた。


「そう言えば気になっててんけどや。なんか、なんて言うたらええんか分からんけど、ハピオラちゃんってさ、急にキャラ変わってへん?」


「……私の事はいい、正直、自分でも説明が付かない事態だから…それより、この状況がいまいち分からないよ。二人はいつから繋がっていたの?」


「お、早速質問から来たな。まぁスキルの使い方を取り戻してくれたんや。でも説明はワイ苦手やねんな。クラバナ、お願いしてもええか?」


「はい、ユウジ様。ケイブル博士…いえ、こうなってはもう博士の称号など意味を成しませんね。敢えてハピオラと呼ばせて頂きましょう。」


馬車が進み出し、ユウジはオナガリスの子を撫でながら様子を見ていた。


「いちいちそんな事に確認取らないでよ。時間が惜しい。呼び方なんか好きにして。」


「ははっ。口調は変わっても、合理主義は変わりませんか…ユウジ様は紛れも無く神の神託を受け、未だ未発見とされている新しい天舞の持ち主です。」


「それは分かってるよ。実験でもその断片は拾えていたし。そうじゃなくて、クラバナはいつからユウジと知り合っているのさ。」


私は少し苛ついていたかもしれない。


感情の制御が上手くいかない事が、肌に感じられた。


「貴女に合わせるほんの一週間前ですよ。所用でオーウェンの街に寄っていた私が、たまたま彼を保護しました。」


「たまたま保護し、一週間ほどで様付けで呼ぶのは異常と思えるけど?」


「ええ、神の力を私はこの目で見ましたからね…いえ、神の力をこの眼に宿して頂いたと言う方が正しい。」


「…?」


「ユウジ様が神より授かったスキルは、他の者に力を与えるものでした。」


「詳しく。」


「…急かさないで下さい。時間はたっぷりありますよ…先程申し上げた通りですが、ユウジ様のスキルは勇者様や拳王の様に自身で戦える様なものでは無い。どちらかと言えば、魔王の様に創造するスキルに近い。」


「回りくどいと言いたい所だけど、その代償が記憶を失う事なのでしょう?」


「さっすがやなハピオラちゃん!せやねん!スキルを使うとワイの何かしらの記憶を無くしてまうねん!えらい不憫なもんやわな(笑)!今回は流石に焦ったで!クラバナにスキル使ったら、スキルの使い方を忘れてしまうんやもん!」


ユウジが私の肩をバシバシと叩きながら喜んでいた。


私はユウジの腕を握り、叩くのを止めさせると、再度話しを続ける。


「与えられたスキルとは何なの。」


「……それはあまり言いたくありませんね。貴女は今一緒に居るだけでまだ味方と言う訳ではありません。」


「なら当てて見せるわ。『洗脳』でしょう?」


「………人工的とは言え、ここまでの傑物を造るとは…やはりクワトロは本物だったのでしょうね。」


「話しを濁さないで。そうであれば辻褄が合うのよ。貴方と私の接点はこれまで皆無と言っても過言では無いわ。その上、敵対している派閥の私に向けて、ユウジの様なレアなサンプルを託す理由が通常ではありえないもの。貴方がその授かった力を使って、ゼニア副所長を操ったと考える方が早いの。」


「正解ですよ…ハピオラ。私はユウジ様より、この眼を授かりました。」


クラバナがこちらを振り向くと、眼が赤色に発光していた。


咄嗟に洗脳されると思った私は眼を瞑ったが、そこから聞こえて来るのは笑い声だった。


「なははははっ!安心しーなハピオラちゃん!せーへんせーへん!ハピオラちゃんを洗脳せーへんって!」


その言葉に私はゆっくりと目を開ける。


クラバナは前を向き直し、馬を御していた。


「そういう事ね。ユウジの実験に行き詰まった私が、弐過変速型複写装置を使う事も想定された上での事だったのね…イルミナの魔鉱石は?あれも貴方の仕業?」


「ええ、そうですよ。貴方の助手を何人か洗脳させて頂きました。魔力をオーバーフローさせる位でなければ、結果は出ないかとも思い、一か八かの賭けではありましたが、いやぁ…貴女の取った行動のお陰で、ユウジ様を傷付けずに済みましたよ。ははっ…」


「あほぉ!めっちゃ血ぃ出とるっちゅーねん!」


「そうでしたね。ははは。」



その言葉に私は奥歯を噛み締め

クラバナの背中を睨みつけていた

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