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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
陰謀渦巻く夢の果て
134/258

えぴそど134-勇35 Neverland

ハピスの過去とユウジとの出会いの話となります


ハピス視点で書いておりますが

勇者編にも関わってくる内容になる為

ナンバリングに『勇』を付け

アルファベットタイトルにしました


少し長くなっていきますが

過去編書くのが好きなので許してくだしゃい


「ケイブル博士。被検体JY-336号の試験は見に行かれないのですか?」


私は研究員の言葉を無視し、隙間なく数字が印刷された長い長いタイムレコードを読み続け、人差し指で扉の方向だけを指差した。


「……はぁ……分かりました。私が行けばいいんですね…後で報告書をお持ちします。」


研究員は諦め顔で研究室から出ていく。


「ここが違う。ここもおかしい。やり直しだ。やり直し。新しい被験体が必要だ。新しいのが。やり直し。」


私はレシートを机に置き、目の前に無数に並んでいる巨大な培養槽に入った生き物達を眺めていた。


若干14歳の私が博士と呼ばれ、莫大な研究資金を自由に使っていい状況を生んでいるのは、紛れもなくクワトロ・ケイブルの功績が大きい。


奴を一言で言えばマッドサイエンティスト。


研究の為…いや、成果の為なら人道などなんのその。


最短距離で結果を出す為には手段を選ばないその姿勢に、彼を支持する研究員達も顔を引きつらせる程だ。


しかし、彼の生み出した数々の薬や発明品は、帝国に多大な恩恵をもたらしている。


その背景には想像を絶する程の犠牲が伴っていたが、王族や貴族からは目を瞑り、ここぞとばかりクワトロに出資が行われ、クワトロはいつの間にか天才と呼ばれる様になる。


私はその天才と呼ばれるクソ野郎の書類上の娘。


もちろん、血が繋がっている訳では無く、奴から見れば娘では無くただの実験動物。


そもそも私に母の記憶は無く、気付けばこの施設に居た。


私の中の一番古い記憶は、お揃いの真っ白な検診衣を着た多数の子供達が、机に向かい試験を受けている場面。


それぞれは番号で呼ばれ、今思えばおおよそ子供にさせるべきでは無い高度な内容の学問の勉強や試験を行っていた。


そして、一日に何度も投与される薬には、酷い頭痛と吐き気を催し、自我が保てなくなる子供も居た。


週に一度の試験が終わると、結果はすぐに分かる。


一番成績の悪かった者が、皆の整列した目の前で剣で切られたからだ。


その光景を見ても、私達が動じる事は無かった。


薬の効果により、脳に障害を無理矢理引き起こさせ、また、完全なマインドコントロール下に置かれた事により、私達は皆、恐怖心を感じられなくなっている。


そんな私達は、目の前で人が肉塊になろうとも、成績の悪かった子が、ただただ折檻されているくらいにしか感じられなかった。


そもそも、私達に仲間意識なんてものは無く、ましてやライバル心なども無い。人が持つべき感情を全て失ったまま、ただがむしゃらに寝る間を惜しみ勉学に励む。


そんな日が続き、一人、また一人と人数が減って行った結果。とうとう、私だけが残った。


私とは別に最後に残っていた子供は、切られる直前、舌打ちをしていた様に思えたが、記憶が定かでは無い。


そうして私は8歳で博士号を習得すると、クワトロを父と呼ぶ資格を得て、その男の前に初めて立った。


「こ、こ、これが被検体14392か!!ばははっ!や、や、やったぞ!8年!た、た、たった8年で!帝国で一番の天才を造り上げたぞ!だ、だ、だから天才を造った私は天才なのか!!!ばははははー!!」


今でこそ、当時の光景に嗚咽を走らせるが、その時の私にそんな感情がある訳でも無く、ただただ指示される事をこなすだけの機械仕掛けの玩具だった。


それから、研究室を与えられ、数多くの研究を行ってきた。


その大半が人体実験に依るもの。


感情を失っていた私が、可哀想などと微塵も思うはずも無く、ただただ自身に求められる成果の為、クワトロと同じく非人道的な行為を数多く犯す事となる。


但し、私の名前が王族や貴族に広まる事は一切として無い。私の研究成果のその全てを、クワトロが自身の物とし発表していた。


それにすら何も思う事も無く、ただ淡々と実験と研究の毎日を過ごしていた。


そんなある日。


「クラバナ上級研究員です、失礼致します。ケイブル博士、ゼニア副所長より被検体の引き継ぎ命令が出ております。こちらをご確認下さい。」


研究員がそう言い手をのばすと、私の視界の端に紙の束が写り込んだが、私は別の資料を読んでいた為、顔を上げる事無く、指で机に置く様に指示をした。


「ケイブル博士、研究熱心な事は感心するが、上司が来た時くらい礼を見せてはどうか。」


私の研究室に入って来たのは、ゼニアと呼ばれる研究者の一人。


私はその声に顔を上げると、即座に立ち上がり、姿勢を正しながら敬礼をした。


「はっ、申し訳ございません。ゼニア副所長。ハピオラ・ケイブル、引き継ぎを承ります。」


「楽にしろ。」


その言葉に敬礼を解き、足を広げ手を後ろで組んだ。


「まずは資料を見てみたまえ、君の所感が聞きたい。」


「はっ、拝見させて頂きます。」


私は資料をペラペラと捲っていき、内容を確認する。


「未知の天舞と思われる刻印…しかも生きた被験者とは。どこでこの様な素晴らしいサンプルを。」


「何、私のコネでね。ここではまだ私と彼しか知らない事だ。どうかね、君ならなんとする。」


「……ゼニア副所長の真意が分かりかねます。なぜこの事はわざわざ敵対陣営である私に教えるのでしょうか。」


素直な疑問だった。


ゼニアと父クワトロは長年ライバル関係にある。


研究のやり方から完成された薬の効能まで、クワトロとは正反対の位置に存在する男。


それが、ライバルの娘である私に貴重過ぎるサンプルを見せたのだ。



ゼニア所長は一緒に連れてきた所員と顔を見合わせ

不敵に笑みをこぼした

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