えぴそど133 教えてハピス先生
森での戦いから5日後、俺の家には続々と人が集まっていた。
俺が左を見ると、それぞれ椅子にメイエリオ、ユージリンにヤッパスタ。あと、一応トモも居るが、シュナにはお手伝いさんにお願いし別室待機中だ。
俺が正面のソファを見ると、ジャクシンさん、フルブライトさん、アルネロにコノウさん。あと、知らない軍の人が二人。
俺の右には包帯でグルグル巻きのハピスさん。
もちろん、フルブライトさんにアルネロやコノウさんも完治している訳じゃない。
今日は、ハピスさんの意識が戻った事により、事の顛末を彼女から直接聞く事となっていた。
「さて、まずはハピスよ。貴様から言いたい事があるなら、先に聞こう。」
もちろん場を仕切るのは我らがジャクシンさん。
「んーそうだなー、どこから話すべきか。私、悩んじゃう☆」
ピースサインを目の位置で決め、ハピスさんはおどけて見せる。
チーム軍人の面子は大層冷めた目線でそれを見ていた。
「時間はたっぷりとあるが、貴様が話す気になったと言うから我らは来たのだぞ。」
ジャクシンは特にイラつく様子も無く、淡々と話した。
昨日の夜、ハピスさんが目覚めた後、俺は二人きりで話をした。
今回の経緯や今後の事について。
内容を聞き、俺はジャクシンさん達にも話すべきだと言うと、ハピスさんは伏し目がちながらも了承してくれた。
「ごめんごめん。でも、分かる様に説明するにはさー本当に私の半生を語る感じになりそうなのよーこれでも昨日めっちゃ考えたんだよ?その結果どこから話したらいいのか分からなくなったーって事。逆に、ジャクシンから何か聞いてよ。」
「いいだろう。ならば、貴様を襲った連中はなんだ。その目的と貴様との関係を教えて欲しい。」
「うんうん。そうだねーやっぱりそこからがいっか。」
ハピスさんは腕を組みながら、大げさに頭を上下に振り頷いた。
その姿に不機嫌過ぎるアルネロの額に血管が浮き出ていた事を俺は見逃さない。
「まず、私もあいつらも元は同じ『フットプリンツ』っていう組織のメンバーなのさ。んーやっぱりこのフットプリンツについて先に言っとこうかな…でも、本当にこんなに大人数で聞いていいの?康介には言ったけど、これを知ると貴方達も奴らの標的になるかもだよ?」
「我らは構わん。どの道知らなければ対処出来んからな。」
「ハピスさん、俺達も覚悟は出来ています。」
ジャクシンさんの後に俺がそう答えると、メイエリオ達もハピスさんに向かい頷いた。
「ふー分かったよ……フットプリンツは簡単に言えば、この世界の真実を追い求める集団だ。この世界は謎に包まれ過ぎている。皆が当たり前に感じている事の一つ一つが実は真実じゃない。」
ハピスさんの語りに、ヤッパスタが既に付いてこれていない表情を見せるが、俺と目線が合うと、顎に手を置き、それらしい雰囲気を出して誤魔化している。
「具体的に、貴方方が探求している真実や謎とは何なのですか?」
フルブライトさんが質問すると、ハピスさんは少し困った表情をしながら、ゆっくりと答えていった。
「いくつもあるよ。沢山、膨大、というかほぼ謎で出来た世界だよ。んー…ま、一番分かりやすい事で言えば、なぜ神々は一部の人に力を与え、それぞれの国を戦わせているのだと思う?……はい!ユージリン君!」
「え!?あ…神がその土地に住む人を護る…為?」
「まーそれじゃぁ正解でもあるし不正解でもあるよねー」
「ちょっと待ってハピスさん、戦わせてるって…」
「んーメイメイちゃんは偉い!そう、そこなの!よく考えてみて、帝国も王国もさ、別にお互いの国を侵略しようとしてる訳じゃないでしょ?じゃぁなんで戦ってるの?」
ハピスさんの言葉に、ジャクシンさんとフルブライトさんが何かに気付いた様なハっとした表情をした。
「確かに……おかしい。何故だ。何故我々はそもそも戦っている。領土拡大が目的なら…」
「過去にも拳王様や魔王は討たれています。アスタリアから帝国領に攻め入る事が無かったにしろ、帝国が王国を領地化した記録はありません。では何の為に歴代の勇者達は国境を超え戦争を始めたのか。」
二人の言葉を聞くに、本当にその部分がすっぽりと抜けていた様だ。もちろん俺はその何故かを知っている分、若干心苦しい気持ちになった。
「魔王討伐の為なんじゃねーのか?あんだけ危険な魔物をほいほい送り込んでくる奴、帝国も流石に迷惑だろ。」
ヤッパスタがドヤ顔で答えた。
「いえ、それならば王国と帝国は共闘も出来る筈です。魔王がやっかいなのは我らも共通認識。手を取り合って………手を取り合う…?なんだ、なぜ今までその事を考えられなかった……」
フルブライトさんは自身の手を見ながら、止まってしまった。
「そ、ま、そゆこと。これも謎の一つ。こんなのが沢山、盛り沢山に溢れかえってるのに、私達は本質から意識が何故か離れていくのよ。例えば何者かによって、意図的にそう思わないようにされているとかねー」
「ふむ、貴様が持つ謎と呼ぶ疑念や、それに対する考察は追々聞いていこう。今はそのフットプリンツについてもう少し詳しく聞きたい。」
ジャクシンさんにも、何か迷いの様なものが見えるが、話を先に進めようとしていた。
「うん、そだねーこれは知ってると思うけど、私は元々、神真機関っていう所に居て日夜研究にのめり込んでいたのさ。そんなある日、ラボに一人の男が運び込まれて来たんだ。そこから私の世界は一変した……」
実際の所、俺はこの話を一昨日の夜、聞かせて貰い驚いた。
「フットプリンツを創る事になるその男の名前はユウジ・ミカミ。何故か彼が名乗ると家名が先になるから、ミカミ・ユウジと呼ばせていたわ。」
名前から察するに俺と同じく日本からの転生者。
あ、いや転移者だと思われる人間。
それも、俺が転移するより、7年も前。
「左手に発見されていない天舞の刻印を持ち、独特な言葉と、神の力と思われる規格外のスキルを使う、記憶喪失の男。」
俺は近い内にこの男と
言葉を交えなければならないと思った




