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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
陰謀渦巻く夢の果て
131/258

えぴそど131 傷だらけの騎士

時は少し遡る



康介と別れたフルブライトは、型を無視し、獣の様に縦横無尽に攻撃してくる桃犬の猛攻を耐えてはいるものの、いくつかまともに受けてしまい、右腕は血で真っ赤に染まっていた。


「はぁ…はぁ…そらそらそらぁ!!まだまだ行くぜー!!ぷるぴっぽーい!」


〈中級剣スキル イグナイトオリジン〉


桃犬は低い体勢から大きな火花が飛び散る剣を振り上げると、剣で受け止めたフルブライトに無数の火の塊が飛んでくる。


「くっ…」


予めかけていた水系のガード魔法の効果により、火は消え蒸発するが、水蒸気が発生し辺りを薄い白い靄が覆う。


「片手でいつまで俺の剣を受けられるかー!なぁ!カルフィーラぁぁぁ!!」


薄靄に視界を遮られ、一瞬見失った桃犬が、フルブライトの真横から飛び出してくる。


フルブライトは再び剣で攻撃をいなしつつ、反撃の機会を伺っていた。


魔法剣士であるフルブライトは、杖が無くても魔法を放つ事は可能だが、二人の兄から贈られたこの杖は、魔法発動時の効果を大幅に増大する。


その為、左手には杖を持っており、攻撃を受ける際には右手で掴んだ剣だけで桃犬と対峙している状態だった。


「ふぅ……ご心配なく……リオンさんの攻撃であれば……片手で十分ですよ。」


これはフルブライトの虚勢であり、実際の所、幾度も攻撃を受け続け、更に傷を負っている右手には限界が訪れつつあった。


「はぁ…はぁ…ぎゃはー!!言ってくれるじゃねーかー!ぶしゅー!」


桃犬は桃犬で、フルブライトの度重なる広範囲技で責められており、深い傷は無いものの、体中至る所に小さい傷を負い、疲弊している状態だった。


〈中級魔法 カレイドスコープ〉


フルブライトの魔法が更に発動される。


「魔法ばっかりじゃ魔力枯渇が早まるだけだぜ!なはー!いいのか!?いいのかー!カルフィーラぁぁぁ!」


放たれた魔法は、光を乱反射させ目くらましを行いつつ、相手に向かい散弾銃の様に広範囲を攻撃するものだったが、桃犬は人とは思えない程身体をしなやかに使い、不規則な動きで魔法を次々に避けていった。


「これでも魔法騎士部隊の副隊長ですからね!そんなすぐ魔力切れを起こしていたら部下に笑われてしまいます!!リオンさんこそ!動き回り過ぎて攻撃が鈍っているのか、そろそろ捉えますよ!!」


魔法を避ける為に、少し距離を取った桃犬に対し語りかける事により、少しでも時間を稼ぎ、休息を兼ねようとするフルブライトだったが、明らかに魔力が切れかかっており、軽微な頭痛が起きていた。


肩で息をするフルブライトを見て、同じく、息を切らしていた桃犬はその場でバク宙をしてみせた。


「任せろよー!これくらいぜんぜーんだぜ!まだまだいけるいける!ぷるぴっぽーい!………と言いたい所だが、お互い決定打に欠けるこんな消耗戦をしても、正直しんどいだけだぜ。」


桃犬から笑みが消え、時折聞こえる戦闘音の方向を見ていた。


「あっちの方もなんか不穏だ。戦いが長すぎるぜ。紫熊はどうでもいいが、碧栗鼠に死なれちゃユウジ君に怒られるんだよな……ワイのもふもふを返せとか言うぜ、絶対………なぁ!カルフィーラ!そろそろ倒れてくれないかー?」


「ご冗談を。リオンさんこそ不法入国と、我が軍兵への暴行を認め、素直に捕まって下さい。」


「がひゅー!仕方ないなー!そろそろ本気出させてもらうぜー!ぷるぴっぽーい!」


「おや……てっきり全力でその程度だと思っていましたよ!!」


桃犬の足元に一際大きな魔法陣が展開される。


上級スキルの準備が始まった事を察すると、フルブライトは左右の武器より、別々の種類の魔法陣を展開させた。


「そんな曲芸…お前、本当に軍人かよ!!」


「心配しなくてもちゃんと軍人ですよ。」


フルブライトの魔法陣の展開が先に終わると、そのまま桃犬に向かい走り出す。


大技になればなるほど準備に時間がかかり、また、途中で邪魔をされやすい。一対一の戦いでは、専ら中級スキルが好まれる理由はここにあった。


〈中級魔法 クリミナルメイズ〉

〈中級剣スキル レゾナンスダブルスラッシュ〉


フルブライトの杖先から展開した魔法陣により、無数の土壁が地面から木々より高く起き上がり、桃犬の視界を完全に塞ぐ。


そのままその壁は膨張し、桃犬を押しつぶそうとしていた。


更にフルブライトが放った剣技は、物理的障害物を透き通り、振動により相手の水分を共振させ感覚を狂わせる技だった。


「くそっ!!!くっそ!」


桃犬は壁に押しつぶされるのを力技で押しのけていたが、共振により三半規管が麻痺し、視界がグルグルと回っている感覚になる。


フルブライトは更に、壁の外側に小さな土台を発生させ、階段状にすると素早く登り、壁の上から桃犬の姿を捉えると、直ぐに次の魔法陣を展開させた。


(くっ…魔力が…しかし!この好機!逃しません!)


〈中級魔法 ライトニングサンダーバード〉


空に展開した魔法陣は、桃犬の直上にあり、凄まじい閃光と共に鳥に模した雷撃が桃犬を貫いた。


壁の中では激しい爆風と衝撃派が起こる。


粉塵を腕で遮りつつ、フルブライトの目は桃犬が居た場所から逸らさなかった。


(まずい!)


微かに薄くなった粉塵の中より、桃犬の魔法陣の光が消えていない事を確認すると、フルブライトは直ぐに壁から離れながら魔法を詠唱する。


(間に合わない!)


〈中級魔法 ウォーター……〉


〈上級剣スキル サクリファイストゥーゴッド〉


壁が破裂すると、中心部より無数の顔が白骨化した天使の様な形の魔力が溢れ出し、フルブライトに向け飛んでくる。


それらは歯を剥き出しにし、フルブライトの身体へ次々噛み付いて来る。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」


フルブライトは残りの力を振り絞り、必死に自身に魔法をかけながらも、剣で身を護り続けた。



───


───


───


「はぁ…はぁ…うぐっ…ちっ!…うおいー!……この剣!…お気に入りだったのによー!……はぁ…はぁ…」


傷だらけの桃犬は、刃が折れた剣を見つめ叫んだ。


そして、フルブライトの倒れている場所に弱々しく向かうと、フードを上げ、フルブライトの顔を覗き込む。


「……リオンさん…それはお互い様です…私の剣も折れてしまいました………これは…私の大事な人から授かった剣。責任を取ってもらいませんと……」


フルブライトの目は虚ろながら皮肉を吐いた。


「…へっ、ぬかせ。俺の剣が折れなきゃ、カルフィーラはとっくに死んでるんだからよ……俺はもう行くぜ…」


そう言い、桃犬はフードを再び被り、先に進もうとした。


〈初級魔法 サンダーボール〉


桃犬は自身に放たれた小さな魔法の玉を折れた剣で払い、顔と左手だけをこちらに向け笑っているフルブライトを見ると、『ふっ』と笑いそのまま姿を消した。


(ふふっ…流石にもう…厳しいですね…)


フルブライトは身体を引きずりながらもアルネロの場所にまで向かい、アルネロが息をしている事を確認すると、そのまま力を失い倒れ込んでしまう。



折れた剣を見つめるフルブライトは

昔の事を思い返していた

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