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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
陰謀渦巻く夢の果て
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えぴそど122 Aristocrat in love

「カカ様、お久しぶりでございます。ジルフォーラが三男、カルフィーラです。」


父上と一緒に客室に入ると、ソファにカカ様とテオドラが座っており、タルフォーラ兄様が対応をしていた。


「ふむ、随分と大きく成長したものだ。騎士試験の勉学は順調か?」


「はい、兄上達のご指導のお陰で、既に過去の試験内容は全てクリアできる状態で御座います。」


私の言葉にカカ様は驚きタルフォーラ兄様に目をやると、少し微笑みながらこちらを見直した。


「素晴らしいな。騎士になるまで数年掛かる者もおると言うのに。ジルフォーラよ、息子が3人ともここまで優秀となると、いよいよ持ってお主は早く身を退かねばなるまいな。」


「冗談を申せカカ。と、言いたい所だが、正直な所タルフォーラとデュフォーラが居なければ、とうにフルブライト家は潰れている。此奴等は本当に良くやってくれている。」


父上がそう言うと、タルフォーラ兄様は余所行きの表情のまま頭を下げた。


「さて、早速本題に入りたいが……カルフィーラよ。聞いているとは思うが、ここからは重要な話しに入る。すまないがテオドラに街を案内してやってくれないか。」


「喜んでお受け致しますカカ様。お任せ下さい。」


「うむ。テオドラ、行って参れ。」


「はい。お父様。」


テオドラは立ち上がり、頭を下げた状態の私の前を通り、部屋の外に出て行った。


私もその後を付いて外に出ると、しばらく無言のままテオドラの後ろを歩いた。


久しぶりに見るテオドラは、私より若干背が高く、透き通った肌と輝くブロンドヘアーに、濃紺のドレスがとても良く映え、ほのかに香る甘い香りも合わさり、まるで女神が歩いているかの如く素敵だった。


「カルフィーラ。」


私が見とれていると、テオドラから静かに名を呼ばれる。


「は、はい。どうしましたか。」


「………なんでそんな喋り方なの。私の事を忘れたのカルフィーラ。」


この時、立ち止まり振り向いたテオドラの美しい顔は、窓から差し込む光に照らされ、とても神々しく、私の心を掴んで今尚離さない。


「え、あ…その…」


「……もういいわ。興味は無いけどお父様の言いつけだから、街を見に行きましょ。でも、その前にドレスを着替えたいわ。」


「わ、分かりまし……分かったよテオドラ。持ってきた荷物を置いてある部屋へ案内しよう。」


「……はぁ……ええ、お願いするわ。」


二階の部屋に案内し、着替えを終えるの部屋の外で待っていると、デュフォーラ兄様が近付いて来た。


「カルフィーラ、私は今日お父様に付きっきりになってしまう。テオドラの護衛、気を抜くでないぞ。いいな。」


「はい。デュフォーラ兄様。」


それだけ言うと、冷たい視線のまま私の肩をポンっと叩き、デュフォーラ兄様は下の階に降りていった。


今日は何かあっても助けに入れないという、兄様からのメッセージだと受け取り、私は気を引き締める。


しばらくすると扉が開き、テオドラが出てきた。


オライオス軍の制服に身を包み、細身のレイピアを帯剣した凛々しい姿に、私はまたしても見とれてしまう。


「どうしたのカルフィーラ、行きましょ。」


「あ、ああ!」


私達は屋敷を出ると、馬には乗らず徒歩で少し離れた街に下りて行った。


テオドラが歩む度に、一つに纏められた長く綺麗な髪が左右に揺れる。


私は照れながらも時折、横目でちらちらとそれを見ていた。


「カルフィーラ、貴方は騎士になったら何をしたいの?」


「何をって…この北オライオスに残って、父上や兄様達の役に立ちたいと思っているよ。なんでなんだい?」


「そ、案外普通になったのねカルフィーラは。昔の貴方は、弱きを護る英雄になりたいと言っていたわよ。」


「そんな…昔の事を。テオドラだって昔は不正を正す正義の使者になりたいって言っていたじゃないか。」


「ええ、今もそうよ。」


テオドラは立ち止まると、前を向いたまま真剣な眼差しで重々しく口を開いた。


「カルフィーラ、来年、騎士になったら私と一緒にオライオスの軍で…」


テオドラの言葉が止まる。


「あれは……ダメだわ!カルフィーラ!行くわよ!」


「え!?ちょ、ちょっとテオドラ!」


急に走り出したテオドラを追いかけ、私は必死に走った。


体力の差がここまであるのかと思い知らされるが如く、徐々に距離を離される。


屋敷のある丘の麓、街への入り口付近で叫び声が聞こえていた。


「ま、魔物!?お、大きい!!あれはこの辺じゃ見た事が無い!危険だテオドラ!!」


街の外周壁は財政難により修繕が間に合っておらず、所々は崩れ落ち、簡単な木の柵は魔物の足止めにすらなっていない。


それどころか、まともな見張りや番が居らず、初動としては最悪の状態だった。


「危険なのは私達じゃない!中に居る人でしょ!」


私はその言葉にハッとさせられる。


どの口が英雄になりたいなどとほざいたのであろうか、私は自分が恥ずかしくなりながらも気持ちを切り替え前を向く。


城壁付近からこちらに向かってきていた獣人が私に気付き、慌てながら駆け寄って来た。


「あ、あ、カルフィーラ様!まも、まも、魔物が!!」


「落ち着いて下さい!私達が足止めをします!貴方は屋敷に行ってジルフォーラにこの事を伝えて下さい!」


「は、はいぃ!」


咄嗟に足止め等と言ってしまった。


小さい頃から魔物討伐の訓練もしてきてはいるが、初めて見る魔物に、私自身動揺を隠しきれていなかったのかもしれない。


「カルフィーラ、大丈夫よ。私達ならやれるわ!」



今はただ

この頼もしい後ろ姿に付いて行く

それだけだ

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