表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
陰謀渦巻く夢の果て
117/258

えぴそど117 花弁が地に伏せるまで

「もうひとりいたのか。」


私の頭上にはオナガリスの獣人、後方には不気味な青白い男。


そして、前方には獣を模したフードを被り、顔を覆ったこいつらの仲間らしき者が立っていた。


逃げるにしても、気配無く囲って来るこいつらを撒ける自信は正直無い。


「威勢の良い事言ってこの状況や、あんた本当に死んでまうけどどうやって切り抜ける気なん?」


「うるさいな。さんたいいち、こうなったら、ただあばれるだけだ。」


「ふーん。じゃ、さっさと死んでよ。」


オナガリスの両手には、背から取り出した片手斧が握られており、魔法陣を展開しつつ上から落ちてきた。


「かはっ!」


オナガリスの動向に注意していた私の腹を、強烈な痛みが走る。


後方に居た筈の青白い男の槍の柄が、私の腹部に深くめり込み、その衝撃で私は地面に叩きつけられた。


木から落ちる際に私が見た光景は、目が紫色の光を帯び、表情を変える事無く物哀し気にこちらを見てる男の顔だった。


「ちょっと!紫熊!今私がヤろうとしてたやん!」


「落ち着きなさい碧栗鼠。今回の目的はあくまで緋猫。我らは基本非干渉ですよ。勝手に演者を殺してはいけません。」


「でも!」


「落ち着きなさい。」


「うー!もう知らんわそんな奴!」


私は腹部の痛みに耐えながら、逃げる機会を探っていた。


「さて、兎のお嬢さん。」


そんな暇すら与えないまま、シグマと呼ばれた青白い男が私の眼前に迫る。


「貴方方は先程嘘を仰られましたね。本当はこの者を知っているのでしょう?」


男は再びハピスの写真を見せてくる。


「………」


「黙っていても無駄ですよ。桃犬さん、お願いします。」


「ういうい!ういー!」


前方に居た3人目の敵が、私の頭上近くまで近寄ってきた。


私が身体を起こそうと、手を地面に付くと、シグマの槍が再び私の腹部に叩きつけられ、重なる痛みに私は悶絶した。


「すぐ終わりますから余計な事をしないでくださいよ。」


私は気を失いそうな程の痛みに耐えながら、フードを上げた敵の顔を見る。


3人目は目を見開きにやついた男。


目をピンク色に発光させ、こちらを覗き込んでいる。


「おけーい!分かった分かったうぇーい!こいつらの仲間と一緒にダンジョンには潜ってはいたみたいだぜ!きゃはー!うぃー!」


「そうですか、それで、どこに居ますか?」


「あははははー!ダンジョンに居るかブーメルムの居候してる家に居るぽいなー!今日中にはその家で合流する予定みたいだぜ!!ぷるぴっぽーい!なぁなぁなぁ!碧栗鼠ー!どっちがブーメルムに早く着くか競争しよーぜー!負けた方がホジの実一気食い!」


「乗ったでー!!」


「こらこらこら、待ちなさいよ。他に使えそうな情報は取れましたか?」


「あー、まあそうだな。こいつ軍の幹部の護衛みたいだわーそれなりにお宝の山だぜ!がひゃー!」


「そうですか。ではこの方にはそろそろ眠っていてもらいましょう。」


「あ、待てよ!対価がまだだ!おい!お前さあ!」


男は私の耳を掴み上げると、私の顔をまじまじと見てきた。


「色々情報をくれたお礼に良い事を教えてやるよ!お前の弟と妹を殺した奴は今勇者と一緒に行動してるぞ!むひゅー!にゃー!がー!!!」


「!?……ほ、ほんとうか…!?」


それを聞いた私は敵だと知りながら、その男の胸元を掴み、痛みを忘れ目を見開くと、縋る様に男の顔を見返した。


「おーかわいいなおい……まぁ!嘘じゃねー!どえらいややこしい奴だし復讐はちと難しいかもなー!ぷるぴっぽー!」


「ど、どこにいるんだ!」


「あははー………まあ勇者と行動してるんだから帝国領じゃね!?多分!知らんけど!がんばれよ!むひゅー!」


「もういいでしょう、真実に干渉しかねません。」


「ああ、もういいぜ!」


「ま、まって!そいつは!ぎゃっ!!」


後頭部に鈍い痛みが走ると、四肢には力が入らず上半身が地面に向かい自然に倒れていく。


薄れゆく意識の中で、私の中に燻っていた想いだけは、大きく猛っていた。





「トモ!待て!」


俺とフルブライトさんは馬に乗り、匂いを辿るトモの後を追っていた。


ブーメルムから数十分程離れた場所で、トモが向かおうとしたのは街道から外れた森の中だった。


馬に乗ったままでは到底進めそうにない。


「トモ、本当にそっちなのか?」


「わふっ!」


「……どうしましょうフルブライトさん。」


「行くしか無いでしょうが…罠を仕掛けられている可能性もあります。それに、夜の森は魔物の危険性も。我々だけでは危険です。ここでコノウを待ちましょう。」


「…分かりました……」


ハピスさんが連れて行かれて既に2時間以上が経っている。外は完全に日が落ち、不穏な空気を醸し出している。


ハピスさんのレベルを最後に確認した時は34。


それに対し獣人の子は32、青白い男は38となっており、ある程度拮抗しているとはいえ、敵対してしまったら2対1では分が悪い。


俺は焦りを覚えつつ、フルブライトさんの言う通りコノウさんの到着を待つ事にした。



消えない胸騒ぎが

背筋を悪戯に刺激する

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらポチって下さい!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ