えぴそど113 周回に次ぐ周回
「コースケ!そっちに行ったぞ!」
「はいっ!」
「おいゴミ!!!トモをちゃんとみろ!まほうのしゃせんにはいるんじゃない!たわけが!」
「わ、分かってるよアルネロ!!ご、ごめんよトモ!」
「く~ん」
俺達は今、Bランクダンジョンの一つ、初日にメイエリオ達が潜った『スケルトンネスト』の下層部に来ている。
逆にメイエリオ達はハピスさんに連れられ、俺達が初日に挑んだ『ゴッドラボ』に潜っているはずだ。
Bランクダンジョンは既に5回目の周回中だ。
このパーティなら、2~3日あれば最下層まで行けるので、初めてダンジョンに入ってから早くも2週間近くが経っている。
来る日も来る日も、休日すら作らずダンジョンの攻略と周回を行っており、今回がジャクシンさんとアルネロと一緒に潜る最後の日だ。
現在24階にて骨の魔物を相手に戦闘中。
予定ではこのまま進み、25階のセーフティールーム休憩を取り、今日中に最下層のボスの撃破を狙う。
正直な所、今日まで散々アルネロに叱られまくりで俺の心は折れかけていたが、トモのもふもふと、ジャクシンさんの笑顔でなんとか乗り切っている。
前世にも匹敵する鬼上司並の叱責に、俺は明らかにやつれていた。
〈我流鎌スキル 全力で振り抜く〉
俺はエブリン商会のチレダさんに、柄の曲がった刃の付いていない短槍を用意してもらった。
魔力を注ぐと何故が鎌を模した形になり、見た目は完全にビームシックルだ。
〈我流鎌スキル 全力で殴る〉
ただ、不満を述べるなら…
「まじで鎌使いにくいー!!!!!!」
「うるさいぞゴミ!!!!」
そう、鎌と言う武器。
スキルボードの〈小かま〉と〈大かま〉はかなり有能な性能であるにも関わらず、実際手に持って戦うと、死ぬ程扱いにくい。
漫画やアニメでは男心をくすぐると言うか、中二病満載の洒落た武器だったのに、独特な形状の間合いと限定的な向きに、未だに全く馴れない。
これだったらいっそ、既製品の剣や槍を使った方が戦い易いんじゃないかと思ってしまう程だった。
なんとかしようとした結果、現状では刃の部分では無く、柄にも魔力を放出させ、物理攻撃を与え戦っている。
ジャクシンさんに相談もしたが、この形状の武具や農耕具は存在しておらず、協力出来ないと言われてしまったので尚八方塞がりの状態。
ではなぜ、わざわざ柄の曲がった短槍にしてまで鎌化させているかと言うと、その切れ味がやばい。
刃に当たった際の攻撃力が抜群すぎるのだ。
俺はそもそもレベルが低い。
強肉弱食の性質上、上がらない事に越した事は無いのだが、下層まで来ると魔物もそれなりに強くなる。
最初に倒したスケアリーベアー級が普通に出てきてしまうのだ。
元々、レベルが2だからと言って、今までも力負けをしているとは思っていなかったが、流石にレベル差が20を超えだすと武器での戦闘には工夫がいる。
それを補うのがこの鎌化武器。
なんとか近接まで潜り込み鎌をひっかけ引き抜けば、ズッパリスッパリと切込みを入れてくれる。
次からはメイエリオ達とダンジョンに潜る事を考えれば、今の内に是が非でも習得したい武器である。
「コースケ、よくやったな。怪我は無いか?」
戦闘を終えると、いつもの様にジャクシンさんが微笑みながら心配をしてくれる。
もちろん魔物の攻撃で俺に傷が付く事は無いが、ジャクシンさんなりの会話の糸口なんだろうと思うと、俺はその言葉が好きだった。
「ええ。大丈夫です。やっと25階ですね。」
「ああ、そうだな。今回で最後だと思うと名残惜しくもなるが、十分に楽しめたぞ。」
ジャクシンさんは休暇をフルに俺達のダンジョン巡りに使ってくれた。
最初はAクラスダンジョンにも行こうとも言ってくれていたが、それでもやはりと言うか、国境都市としての防衛の要になるジャクシンさんの帰還を、せがまれている様だ。
25階に降り、セーフティールームに入ると、アルネロが簡単な食事の準備を始める。
セーフティールームとは、ダンジョンの5階毎にある只の部屋で、魔力を流すと開く重い扉で区切られた何も無い部屋だ。
絶対に安全と言う訳でも無いらしいが、扉を閉めれば魔物が入って来ない為、冒険者は休憩所に使っている。
このダンジョンでも一度、セーフティールームで他の冒険者と鉢合わせになり、談笑をした事があった。
話の途中でジャクシンさんの事を知ると、かなり驚いた感じでそそくさと帰って行ってしまった。
その姿にジャクシンさんは『ふっ…』と微笑むも、かなり落ち込んでいる様だった。
「ジャクシンさま!できました!ささっ!さめるまえにどうぞ!」
「ありがとうアルネロ。すまないないつも。」
「そんな!もったいないおことばです!……ほら、ゴミ。そんなかおしなくてもおまえのもある。のめ。」
「う、いちいち恩着せがましいな。でも、遠慮なくもらうよありがとう。いただきます!………ん……か、かっれぇー!!!!」
「ぷーくすくす。すまんすまん。おまえのだけこうしんりょうをまちがえたみたいだ。くくくくっ。」
ジャクシンさんは笑い、アルネロはしたり顔でトモに餌を与え、俺は燃えさかる喉の痛みで地面をのたうち回る。
別にアルネロを嫌いだとは思っていない。
これも後になればいい思い出になるのだろう。
苦しみながらも、俺にしては実に充実した日々に思えた。
だけど俺はまだ知る由も無かった
大きな陰謀の渦が
すぐそこまで迫っている事に




