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えぴそど110-勇32 無慈悲な歌

「なんだなんだ~?」


森から声を張り上げながら飛び出して来た大柄な騎士に野盗の動きが一瞬止まった。


「帝国兵にしちゃ派手な鎧だな。」


「ありゃ…なんとかオンとか言う勇者の私兵だ。色んな所で魔物狩りをしてるとか聞いた事がある。」


「つーってっと……仲間が居るかもしれねぇ!!おい!!テメーら!警戒しろ!!周りに気をつけろ!」


野盗の号令を聞き、オールシャは焦ってしまう。


「くそっ!今すぐその蛮行を止めろ!」


「止めなかったらどうなるって言うんだよ騎士様よ!」


「……」


「黙っちまったよ!はははははっ!!」


野盗達は黙り込んでしまったオールシャを見て、高らかに笑っていた。


その時、中央に集められていた女達を白い光が包み込んだ。


「はぁ!?くそ!!!魔法だ!やっぱり近くに他が居るぞ!…………なっ!?」


そう叫んだ男の目に映ったのは、盾を振りかぶったオールシャの姿だった。


〈初級盾スキル シールドバニッシュ〉


走り込んでいたオールシャは盾を振り下ろし、野盗の一人を吹っ飛ばした。


近くに居た別の野盗がすかさず剣で応戦してきたが、オールシャは直ぐに姿勢を正し、盾で弾き返す。


「ぐぅ!!くっそ!お前ら!奴の後ろへ回り込め!………あ?」


野盗が後ろを振り向くと、立ったまま首から血を流している仲間の姿があった。


「………はぁ!?」


視線の先にはサブダブが立っており、瞬き一つせず野盗の男を見ていた。


「あ、あ、あ…。」


〈中級盾スキル シールドクラッシュ〉


背後よりオールシャが魔法陣が展開された盾を叩きつけると、野盗は骨を粉砕されつつ森付近まで吹っ飛ばされた。


「オールシャ、あと一人残ってるでしょうよ。ロクミーの援護に向かえこれ。俺は他に居ないか家屋を調べる。」


「はっ!」


ロクミー側に走って行くオールシャの姿を目で追った後、恐怖に怯えている女達を横目で確認し、サブダブは奥にある家に向かった。


途中、オールシャに吹っ飛ばされた際に野盗が落とした剣を拾うと、サブダブは家の中に入って行く。


「くっせ。」


サブダブが家の奥で殺された夫婦の死体を足蹴に避けると、床に敷かれていた布を引っ張った。


「隠れてても分かっちゃうでしょうーよっと!」


床には取手が付いており、サブダブは表情を変える事無く取手を引き木の蓋を取る。


そこには小さな穴が掘られており、泣きながら口を抑え震えている少年が居た。


「………ちっ、男かよ……まぁ…いいや。」


サブダブは少年をまっすぐに見つめると、予備動作も無く少年の手ごと喉に剣を突き立てた。


「ぶふぅっ!」


直ぐに少年の口からは大量の血が溢れ、徐々に目から光が失われ、そのまま頭を垂らしながら動かなくなってしまった。


サブダブは無表情のまま、尚も少年の身体に何度も剣を突き刺しては、微かにビク付く身体を見てようやく口元を緩ませた。


「サブダブ隊長!オールシャが女性達の処遇を隊長にかく…に……うっ…」


駆けつけたロクミーは、少年の穴だらけになった死体を前に、顔を歪ませる。


「ロクミーよくやったでしょうよこれ。魔法、しっかり女達に届かせたじゃないか。偉いぞこれそれ。あれが無けりゃ、オールシャも俺も突っ込め無かってよ。」


「あ、ありがとう……ございます……ですが、こんなに幼い子まで……くそっ!」


「気にしていては駄目でしょこれ。俺達にも出来る事と出来ない事がある。今出来る事を精一杯やる事が、いつかこの子の死に報いた事につながるってよ……とにかく、集落の亡骸を埋葬してやろうじゃないかこれそれ。」


「……はいっ!」


サブダブの言葉に返事を返したロクミーの目には力が込められている。


そんなロクミーの頭を優しくガシガシっと撫でると、サブダブは家を出て、背伸びをしながら充実した顔を見せた。





「つまり、貴方も天舞だと言う事は分かりました。ですが…」


ベルはにやついたゆうじの顔を真っ直ぐ見ながらも、少し伏し目がちに言葉を詰まらせる。


「なんやの。言いたい事は言わんと先進まへんよ?」


「……では、貴方は人族と魔族のどちらの味方なのでしょうか。」


神託を受けた者は、それぞれの国土に住む人を守る為に戦っている。


その上で今まで確認されていなかった天舞は、ベルだけでなく、どちらの国にとってもミリタリーバランスを崩してしまう驚異だった。


「んーあー。ま、細かい事はいいやんか。あんまり何でもかんでも気にしてたらハゲてまうで。」


「良くありません。はっきりさせて頂かないと困ります……まさか、他にも居るのですか?貴方の様に知られていない天舞が。」


「なんや………せっかちなねーちゃんやなぁ。あんな、一つ言うとくけど、情報は命よりも価値があるんや。タダでほいほい質問に答える程アホとちゃうでワイ。」


ユウジのやや語気を強めた喋り方に、ベルは焦りを覚えてしまう。


「こちらの挨拶もせずに質問を続けてしまって、本当に申し訳ございませんユウジ様。ベル様、一旦落ち着きましょう。まずはユウジ様にご挨拶をされては如何でしょうか。」


冷静にエリシアはユウジに謝罪を述べながらベルをなだめた。


偽名で見繕うのを辞め、こちらを真っ直ぐ見るエリシアに、ベルは小さく深呼吸をした。


「ええ、エリシア。ごめんなさい。貴方が居て良かったですわ。ユウジさん、一人で先走ってしまって申し訳ございません。改めまして、私は賢者の神託を偉大なる我らが神より承りましたベル・ホロントと申します。こちらは私の侍女のエリシア。」


ベルが名乗りエリシアを紹介すると、エリシアは頭を下げた。


「そして、こちらは護衛の……え?ど、どうしたの?」


ベルは続けてミルミナチカ達を紹介しようとすると、三人は口を大きく開けたまま、目を見開きこちらを見ていた。


「な、なに?どうしたのミルミー。」


「け、け、け、賢者様!?!?!?」


「え、ええ。ごめんなさい。貴方達を騙すつもりは無かったの。偽名まで使ってしまってごめんなさい。」


「す、すっごーい!!まじ!?握手して下さい!」

「まじっすか!賢者様っすか!ぱねぇ!!いや!まじでぱねぇ!!!」

「うぉー!俺って今、賢者様の護衛をしてるのか!!!やべー!!!」


「ちょ、ちょっとみんな。」


ベルはミルミナチカに無理矢理握手された手をブンブンと振られながら困惑した。


「ははははっ!おもろいツレやのー!ははははっ!ま、これくらいの空気の方が話やすいわ!せや!腹減ってへんか?庭で飯でもつつきながら続きと行こうや!」



ユウジに促され

一同は庭に移動した


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