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えぴそど102 ダン帰-路

「誰も居ませんね。」


俺達はメイエリオ達の潜ったダンジョンの前にまで来ていた。


「集合の時間は過ぎている。この時間で来ていないとなると、何かトラブルが起きたか、先に進む事を決めたかだな。」


ジャクシンさんが辺りを見回しながら言う。


「危険が迫っているって事もありえますよね!?」


「ああ、だがハピスがいるのであれば大丈夫だろう。それにあの盗賊だった男も元はダンジョンに入っていたと聞く。」


「ですけど…。」


「心配するなコースケ。アルネロ、すまんが中を少し見てきてくれないか。」


「かしこまりましたジャクシンさま。」


「あ、俺も!」


「きさまはここにのこり、ジャクシンさまを "けいご" しろ……もっとも、まもられるのはきさまかもしれんがな…ぷーくすくす。」


「ぐっ…。」


アルネロに小馬鹿にされつつも、言われた通り俺は待機する事にした。


「いい時間だな。お前ら、食料はあるのか?」


「はっ!後ろの馬車に積んでおります!」


ジャクシンさんは足を組んだまま兵士に確認をしてた。その姿は宛ら女王様だ。


「うむ、なら何か作ってくれ。コースケは腹は空かせていないか?」


「いや、正直腹ペコです。あっ、俺も手伝いますよ!」


俺は兵士達を手伝い馬車から荷物を降ろしていく。


「あんた、ダンジョンはどうだったんだ?」


俺と一緒に木箱を運んでいた若い兵士が話しかけてきた。


「え?ああ、途中トラブルもあったけど、何とか最下層までクリア出来たよ。」


「え!?」


兵士のあまりにも大きな声に、ジャクシンさん含め全員の視線がこちらに集まる。


「あ、あ、申し訳ございません!何でもありません!」


若い兵士は皆に頭を下げ謝っていた。


「おいあんた!ダンジョン初めてだったんだろ!?ジャクシン様やアルネロ様がいるからって、いきなりボス倒したって事かよ!」


「あ、ああ。最下層に居たキメラは俺一人で倒したよ。」


「すっげぇなぁー」


若い兵士が俺を見る目が明らかに変わる。


こうなると俺も調子に乗ってしまうのが悪い所だ。


「そ、そうか?何だったら飯を作る間、詳しく話すけど。」


「え!?本当か!?聞かせてくれよ!」


こうして俺は芋の皮を削りながら、若い兵士に初ダンジョンについて説明をしていった。





「そこで俺は言ってやったんだ……『またな、ぐっすり眠れ…』ってな!!!!」


「おおおおおお!!!」

「決め台詞キター!!」

「さすがコースケさん!」

「か、かっけぇ!!」


いつの間にか若い兵士達に囲まれ、俺の講談会の様になっていた。


少ないながらも、今までの戦い等を若い兵士達に語ると、思いの外反響があり、俺は羨望の眼差しを受けている。


「ふふっ。」


ジャクシンさんもその光景を、トモによかりながら聞いて時折微笑んでいた。


「以上です!皆さんご清聴ありがとうございました!」


パチパチパチパチッ!

ヒューヒュー!


俺は一通り話終えると、兵士達の拍手喝采の中、ジャクシンさんが座っている方に向かった。


「す、すみません。ジャクシンさん。調子の乗ってずっと喋っちゃって。」


「いや、構わん。前から思っていたが、コースケは話が流暢でとても面白いな。言葉が魔法の様にスラスラと出てくる。」


「ま、まぁ。人並みですけどね。」


(営業で鍛え抜かれたトーク力がこんな所で生きるとは!)


アルネロが潜って既に二時間近くが経過し、日は完全に暮れてしまっていた。


むしろそっちの方が心配になってきた。


「大丈夫ですかね、みんな。」


「うむ、アルネロが居ればまず問題無いだろう。コースケの様に下層に飛ばされていれば別だがな。ふふっ。」


「う…不安になってきますね。」


「お?ちょうど出てきた様だぞ。」


「え!?」


ジャクシンさんの言葉に、ハッとし、ダンジョンの入り口を向くと、アルネロを含め、五人全員が歩いて出てきた。


先頭のアルネロは相変わらず無表情で冷たい視線をこちらに送っていた。


まあ、なにはともあれ、無事な事が確認出来て安堵する。


「みんな!良かっ………た!?え!?なんか!なんかでかくね!?それに何その格好!!」


「ごめんなさいコースケ…。」


「ワンワンワンワンワンッ!!!」


俺の目の前に現れたのは体長が2倍程に大きくなったヤッパスタだった。


でかくなっただけならまだしも…まだしもでも無いが、なんか魔物の剥製の様な物を身にまとい、赤黒い肌はまるでオーガの様な出で立ちだ。


トモは仕切りにヤッパスタに吠え、俺を守ろうとオロオロとしていた。


よく見ると、ヤッパスタの肩にはハピスさんが座っている。


「だ、大丈夫だコースケ。噛み付いたりはしない。ただ、ちょっとだけ…野性味が増してしまったというか…。」


「そ、そうだよ。これでも言葉はちゃんと理解する様になったんだよ!?ほら、トモ!よしよし!落ち着いて!」


「前より可愛くなったでしょー!ねーヤーパッパー。」


「ふしゅー!!」


「ふしゅーとか言うてるって!ハピスさんじゃん!絶対ハピスさんが何かしたんじゃん!」


「失礼だなー康介はー(笑)」


「「コースケ、正解。」」


一先ず、ギガント化したヤッパスタを何とか馬車に詰め込み、ブーメルムへと戻る事にした。


後から聞いた話によると、モンスタートラップで、魔力も体力も使い果たしたヤッパスタの為に、ハピスさんが調合した強壮剤を飲ませた所、この様な姿になったと言う。


時間に遅れたのも、バーサク状態のヤッパスタが敵も罠も破壊しながら突き進むので、止めるのに手間取っていたとの事。


そこへアルネロが現れ、顔面を思い切り殴ったお陰で若干理性を取り戻し現在に至るらしい…


ちなみに、服や防具は巨大化の際に全て壊れてしまったので、仕方なく魔獣の皮を剥ぎ着せていると聞いた。


「二人共、どうだった初めてのダンジョンは?」


「あぁ、不完全燃焼な部分はあるが、また潜りたいと思えたよ。何より、もっと強くならないとな。」


「たくさん勉強しなきゃいけない事が出来たけど、私は生きて出られてほっとしてるかな。コースケは?」


「そうか。二人共、有意義そうで本当に良かったよ。帰ったら聞いてもらいたい事もあるし、俺の話はその時にでも話すよ。」


俺はそう言うと、今日の出来事を噛み締め、染み染みと夜空に輝く満月を見ていた。


「アオォォォォォォォォォン!」

「ウオォォォォォォォォォン!」



ゆっくりと馬車に揺られる帰り道

月に向かいトモとヤッパスタの遠吠えが木霊した

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