えぴそど100 Y/U/M/H
宝箱に仕掛けられたトラップの事は知ってるけど、鑑定スキルを持っていないから、正直な所どうしたらいいのか分からない。
鑑定スキルは上級スキルの一つだ。
習得自体がかなり難しい。
「とりあえず開けてみようか。」
「ちょっと待てユージリン。低層の宝箱は気をつけろ。嬢ちゃんも覚えておきな。これだけ目に付く場所にある宝箱なら尚更だ、他に潜った冒険者が気付かない訳が無い。」
「つまり…。」
「ああ間違いなく罠だな。」
私はユージリンと顔を見合わせる。
「分かった。無視して進もう。」
「まーった!まった!まーった!罠じゃなかったら勿体ないじゃーん!そうやって今までの人も皆がスルーしただけかもよーダンジョン産の宝箱は低層でもおいしいのが多いのに。」
「でも…もし罠だったら。」
「こーすればいいんだよーおりゃー!!!」
〈ハピス流力任せスキル 前蹴り〉
魔法陣の光に包まれたハピスさんの右足が、綺麗な曲線を描き宝箱に向かい蹴りを投じた。
宝箱は木箱だった為、直ぐに四散し壊れ、中に入っていた鉄の塊が天井にめり込んだ。
「あはーやったね何か入ってたねー」
「ば、ばっかじゃねーの!!中身が壊れやすいもんだったらどうすんだよ!!それに!見ろよ!あれどうやって回収すんだよ!」
「あははーでもなんだろうねあれ。鉱石かなー。」
「あ、あの…。」
「んー?なーにメイメイちゃん。」
「宝箱の下に何かあるんですけど。」
皆の視線が天井から宝箱があった場所に移動する。
既に押されていた様な赤いスイッチが、宝箱の残骸から顔を見せている。
すると、スイッチが徐々に上昇してきた。
「あーこれはあれだね。なんと言ったらいいか…うん、まぁ大丈夫だよ!」
ハピスさんが私の肩をポンッと叩くと、通路の左右の壁がガラガラガラ!と音を立て急に下がった。
「隠し部屋!?魔物がいるぞ!」
壁が無くなった通路には部屋があり、中から大量のスケルトンが出てきた。
「おい!ハピス嬢!!しっかり罠にかかってんじゃねーか!!このボッケッ!」
「ふふーごめんちゃいー(笑)」
「え!?え!?ど、どうしたらいいの!?」
「落ち着け嬢ちゃん!ユージリン下がれ!後方に一旦……くそっ!後ろもか!」
ヤッパスタの声に後ろを振り向くと、同じ様に後方からもスケルトン達が隠し部屋から出てきていた。
「ヤッパスタ!どうする!」
「前は他にも魔物がいるかもしれねぇ!通ってきた後方を切り開く!ユージリンとメイエリオは後ろのスケルトンの駆除だ!俺が前をせき止めてやる!」
後から考えたら、ヤッパスタって本当に凄いと思う。
ダンジョンに潜ってた冒険者ってだけでも凄いんだけど、曲がりなりにも、盗賊のリーダーだった人だ。
瞬時に状況判断を行い、指示が出せている。
「分かった!メイエリオ!左側をメインに叩くから、右側を弓で攻撃できるか!?」
「う、うん!任せて!大丈夫!」
「みんなーがんばれー(笑)」
ハピスさんはどこから出したのかティーカップに入ったお茶を呑みだした。
「何体居ようが雑魚だろうが!俺様を舐めるなよ!」
〈中級槌スキル サターンスイング〉
ヤッパスタが駒の様に回りながら金槌を振り回すと、当たったスケルトン達は次々と粉々に砕けながら倒れていった。
「全体攻撃を覚えて正解だった!」
〈中級剣技スキル スカイギアドライブ〉
魔法陣を展開した剣をユージリンが横薙ぎにすると、剣筋から無数の歯車の形をした魔力の塊が放たれる。
歯車は高速回転しながら広範囲に散らばって行き、スケルトン達を圧倒していく。
「私だって、ユージリン行くよ!」
「ああ!大丈夫だ!」
〈中級弓スキル ブラストショット〉
私は前方に魔法陣を展開させた。
放った矢が魔法陣をくぐると、巨大な光の矢になり射線上のスケルトン達を薙ぎ払っていく。
「いける!いけるわ!」
「凄いじゃないかメイエリオ!威力も充分だ!」
「ありがとうユージリン!…あっ!あれ!!」
正直このスケルトン達だけならなんとかなると思ってたけど、隠し部屋の奥から更に防具に身を包んだ別個体が出てきていた。
「きゃーこーわーいー(笑)」
「スケルトンナイトだ!…………ちっ!ジェネラルまでいやがる!ユージリン!メイエリオ!絶対に気を抜くな!」
「分かった!そっちは大丈夫なのか!」
「ああ、頑丈さだけは誰にも負けねぇ!耐えきってみせるさ!」
「きゃっ!頼もしい!(笑)」
三人ともハピスさんには一切ツッコミを入れなかった。
むしろ入れたら負けだと思ってた。
「行くぞメイエリオ!早くこいつらを倒して道を作ろう!」
「うん!やるわ!!」
退路を断たれ魔物に挟まれているものの
私達は戦いを楽しんでいた
この時までは…




