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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
☆ I Can Fly ☆
1/258

えぴそど1 裸一貫ど根性

長編を書いていこうと思います

少しでも興味を持って頂けたら幸いです

目まぐるしく起こる出来事に対応できていない


真紅の巨大熊は

鮮血を浴びながらその肉を引き裂き喰らっている


恐怖を通り越し逃げる事も忘れ

その異常な景色をただただ傍観(ぼうかん)していた



────話は少し前に(さかのぼ)



起きた。


よほど寝心地が良かったのか2度寝、3度寝をした記憶がある。目を開け周りを見渡してみると、見覚えの無い景色が広がっていた。


見覚えが無いなら、普通は現状確認に精を出すんだろう。だが、泥酔して記憶を無くす事が日常茶飯事の俺が、これくらいで動じる事は無い。


無いったらない

無いんだってば

風そよぐ大草原じゃなければ…


「おおぅ…おぉ?」


不思議な声が出た


いや別にね……酔っ払って屋外で起きる事自体は珍しくないんだよ……


ビル影ひとつない環境は初体験だったし、多少困惑しただけだよ…


さすがに冷静になれと言い聞かせながら自分の身体を確認する。うん、パンツすら履いてない裸一貫ど根性スタイル。もちろん財布もスマホも何も無い。


あるのは風そよぐ我が股間のみ!


………はぁ!?


よく見るとちらほらと布の切れ端が散乱していた。とにかく昨日の事をよく思い出すんだ俺。


ごくごく一般的な、ブラックを通り越した漆黒企業に努める俺は、月に150時間を超える残業と、休日出勤の常態化に耐えつつも、唯一の楽しみである酒を呑んでいた。


昨日は3週間ぶりの休日前夜を堪能する為、家の近くの居酒屋で深酒をしていたはず。ビールに日本酒とワインに焼酎、テキーラやイエーガーなんかも呑んだ記憶がある。


それから…それからどうしたんだっけ。


そう、それから裸で大草原に寝入っていた。

そんな訳あるかい!


とりあえず、この格好のままだと猥褻物陳列罪で捕まってしまう。なんとか股間だけでも隠して、南国スタイルで押し通すしか無い。


何か隠せる物は無いか、周りを再度見渡してみると、数百メートル先に数人の人影の様なものが見えた。生憎と、彼らと丸出しの股間を隔たる障害物が何も無かった。


やばい!第一村人発見か。

発見と同時に明日のネットニュースか!そう思い、慌てて身を隠そうと後退りすると、角張った石を踏んでしまい思わず声を出し倒れてしまった。


「いっったぁ!」


足を見ると少し血が出ていた。

現代日本人が素足で石を踏むとそら血もでますわな。それより問題なのは今の声で村人達がこちらに気付いたようだ。


杖を持っている集団が近づいてくるのがわかる。

それが親切な田舎のジジババである事、事情を理解し保護し衣服の提供をしてくれる事。


あわよくば味噌汁なんかも頂きたい。帰りの電車賃もお願いしなければ。そんな妄想を広げる余裕が一瞬でふっとぶ。


近づくそいつらはどう見ても人じゃない


深緑色の身体に長い鼻、身長は小学生低学年くらいだろうか、小さい割に腕の筋肉がやばい。口は横に大きく伸びており、牙らしきものも見え、髪の毛は無く、小さいがツノの様なものが生えている。


何よりも人ではないと感じたのはその目だ。

瞳孔が真四角で発色の良い黄色、目蓋(まぶた)が縦に開閉している様に見える。この距離でもその異質な色が確認できた。


さらに杖だと思っていたものはゲームでよく見る木製の棍棒だ。尻もちをついたまま硬直し、現実に脳が追いついてこない。


自分はまだ夢を見ているのかもと思ったが、夢と現実がわからないほどフワフワした人生は送ってはいない。これは現実だと立ち上がる。


どうやら俺は危機に面している


そいつらは10メートルくらいの所までやってくると、急に走り出し距離を詰めてきた。後はもぅぼっこぼこ、手に持った棍棒でこれでもかと殴ってくる。


数は7匹、致命傷になるような痛みでは無かったが、それでも痛い。近くまで来ると腰までの高さだった為、幸いにも立っていれば頭部への直撃は無かった。


執拗(しつよう)に足を棍棒で殴ってくるので、さすがに(すね)に当たると涙が出てくる。距離を取ろうと走って逃げるが、もちろん追いかけられ殴られる。


「グェ!グォェェ!」


などと蛙が踏み潰された様な鳴き声を発し、追いかけてくる姿を見て確信した。


ゴブリンと呼ばれる小鬼だ


作り物やコスプレには見えない。

ドッキリにしては、すでに負った怪我が傷害罪で訴えられるレベルだ。


これは漫画で見た異世界転生というやつか!いや、身体はそのままなので、転移とか召喚とかそういうやつか。


社畜としてプライベートもロクにない生活だったが、それでも漫画やゲームは好きだったり、全く知識が無い訳ではない。そうだとしてもなんでよりによって俺が…


本気で走れば歩幅の差でなんとか振り切れそうだ。後ろを振り返らず、ただまっすぐに草原を駆け抜ける。


草や石で足を切り痛みが走るが、今はそんな事にかまってられない。後ろからは小鬼の鳴き声と、ザザッ!ザザッ!という足音が聞こえる。


早く諦めてくれと願いながらも、数百メートル進んだ頃だろうか、流石に執拗(しつよう)に殴られたのと、石等を踏みながら走る痛みで限界が訪れ、その場に倒れ込んでしまった。頭を殴られるのはヤバイと起き上がろうとするも、足になかなか力が入らない。


足音がだんだんと近づいていた


その時、不意に聞こえる音に、鈍く重い足音が混じるのを感じとった。


「ギャァァァ!!!」

「ギュゥィィィィ!」


子鬼の悲鳴に慌てて振り向いてみると、そこには体長数メートルだろうか、真っ赤な毛並みの熊が、ゴブリン達を爪で引き裂いている所だった。


俺は咄嗟(とっさ)の出来事に思考が停止し、ただただ眺めているだけ。



そして話は冒頭に戻る────

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