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53 久しぶりのダンジョン ① 

店に戻るとみんなこの場に馴染んで、のんびりとコーヒーを飲んでいた。

それに今の所はトラブルもなく平和な時が流れているようだ。

昨日は急に強盗が入って来て一悶着あったけど流石に2日連続で入られる事は無いだろう。

でも、もし入って来てもここには昨日以上の戦力が待機しているので犯人が何秒立っていられる事やら。

しかし、こうやって待ち構えてフラグを立てても現れないのがこの世界の理と言える。

そして、その間に俺は鑑定で分かった内容を付箋に書いて購入したアクセサリーに付けていく。


そして、その中から最も力が上がるブレスレットを4つ選ぶとテーブルに並べた。

これは力だけを上げる代わりに強化率が高い。

1つで30パーセントUPなので2つで60パーセントだ。

それでもアケミとユウナは今でもステータスの力は30前後。

ペアリングと合わせても80パーセント上がるとしても60に届かないので可能なら剛力も取得して強化して欲しい所だ。

やっぱりこれでも少し心配なので早くレベルを上げにいかなければならない。

でもその前にこれを二人に渡しておかないと買った意味が無くなってしまう。


「これはアケミとユウナが使ってくれ。」

「え、私達にもくれるの!」

「ありがとうございます!」


凄く喜んでくれているけどさっきまで俺の左右を陣取って手元をガン見してたから既に狙っていた事は分かっている。

俺の心の平穏の為にも早く渡しておかなければ警報が鳴り響いて夜も眠れないだろう。


「それじゃあお兄ちゃん。」

「私もお願いします。」


すると二人とも俺に手を差し出して来るので、どうやら俺に付けて欲しいみたいだ。

それくらいはお安い御用なので軽く笑みを浮かべると優しく丁寧に手へと通していく。


「フフ、お兄ちゃん擽ったい。」


ちょっと肌に指先が触れてしまってその感触が擽ったかったみたいだ。

でも嫌そうな表情ではないのでそのまま両手にブレスレットを装着していく。


「よし、終わったぞ。」

「ありがと。大事にするからね。」

「お兄さん、次は私です。」

「はいはい。」


俺は次にユウナにもブレスレットを装着していく。

なんだか頬が赤いのは笑うのを我慢しているからだろう。

そして装着が終わると冷たくない様にその手首を両手で包んで少し温めてやる。


「あ、ありがとうございます。とっても暖かいです。私も大事に使わせてもらいますね。」

「あ~ユウナちゃんだけず~る~い。私にはしてくれなかったのに~。」

「はいはい分かりましたとも愛しの妹よ。」


俺は少しお道化てアケミの手を取ると同じ様に手首を包んで温めてやった。

ちなみに、アケミが金でユウナはプラチナだ。

色が違うので分かり易くて良いだろう。


そんな事をしていると時間が過ぎて父さんズがやって来た。

そして店員に促されてこちらへとやって来る。


「お待たせ。それで、これから選べば良いのか?」

「そうよ。残念だけど他のでは強化が出来ないみたいなの。」

「それなら仕方ないな。いざとなればオーダーメイドも考えているか。」


そして4人は色々話し合った結果全てのステータスではなく力と防御を10パーセントUPさせてくれる指輪を選び取った。


契約のペアリング

力と防御力を10パーセントUP

---


ただし、この2組には記載されていない所がある。

これがいったいどんな意味があるのかはまだ分かっていない。

しかし、その指輪を送り合った時アイテムに変化が生じた。


夫より愛をこめて送られたペアリング。

互いの愛が強い程ステータスが強化される。

効果1~20パーセント


妻より愛をこめて送られたペアリング。

互いの愛が強い程ステータスが強化される。

効果1~20パーセント


どうやら愛が交わされた事で契約がなされ、効果が変わったみたいなので、それで契約のペアリングと言う事なのだろう。

先程まで見えていたのはあれ単体での効果だったようだ。

俺の指輪も最初から鑑定していれば同じような名前と効果だったのかもしれない。


でも、そうなると俺達の装備自体を考え直す必要がある。

今後は鑑定を多用して有用な装備を見つけないといけない。

見る基準として12月以降に作られた物で職人が作った物、又はオーダーメイドで作るのが一番だ。

もしそうするならこの辺だとデニムを使った服だけど、それだと女性が多いから問題が出るかもしれないな。

ジーパンだけならともかく上の服はもう少し考えてみた方が良さそうだ。

ただ、間に合わせなら少しの間はオールデニムで勘弁してもらおう。


でもこれに関してはアンドウさんに相談してみる必要がある。

あの人も自身をマネージャーと言うならそれくらいはしてくれるだろう。

その後は皆で店長であるアカツキさんと周りのスタッフに軽く挨拶をして帰路についた。

そして、帰りながら先程の事をアンドウさんに相談するために再び連絡を入れる。


『今日は連絡が多いな。』

「いや、実は装備の変更を考えてるんだけど出来ればデニム以外で何かないか?」

『ああ、その事か。それならこちらで考えてある。お前の言った事を考慮して・・・。」

『あ~、先輩。もしかしてユウキ君からですね。ちょっと代わってください。』


電話の向こうで騒動が勃発したようでなんやかんやとガタガタ音がした後に女性の声に変わった。


『はあ~はあ~勝ちました。』

「何に勝ったかは聞かないでおこうか。それでお前は誰だ?」

『私は今回からあなた方の装備を担当する事になったツバサです。数日以内に体の寸法を確認したいのですが。』

「悪いけど明日から30日までダンジョンに泊まり込んで魔物を狩る事になってる。来るとしたら年始まで待ってもらいたい。」

『う~ん仕方ないか。あちらのお店の人も年末の急な依頼は渋ってたから年が明けたら予定を合わせます。』

「そうしてくれ。大晦日は初詣もあるしそっちも少しは休んだ方が良いんじゃないか?」

『そうします。それでは予定が決まったらまた連絡しますね。』


そう言って電話を切るとスマホにワン切りが2回入ったので恐らくはこれがツバサさんの番号だろう。

忘れない様に登録を済ませて俺はスマホを仕舞った。


「なんだか明るい人みたいだね。」

「アンドウさんから端末を奪える人だから情熱もありそうだ。近い内に顔見せに現れるかもしれないな。」


それにしても、この町に帰って来てからはダンジョンに入っていない。

恐らく元スナイパーのハジメさん、シンジさん、ヒフミさんが頑張っているのだろうけど彼らには悪い事をした。

遊んでいた訳ではないけど今後の事も考えてアクセサリーを渡しておこう。


その後、俺達は家に帰ってから明日に備えて眠りに着いた。

そして次の日の朝に準備を済ませて合流すると俺達はダンジョンへと向かう。

昨日聞いた話だとゲートが出来ていると言っていたけど到着してみると想像以上に立派な物が取り付けられていた。


「少し見ない間に立派になったな。」

「そうだな。これなら普通の人も簡単には入れないだろう。」


見ると壁の厚みは10メートル以上はあり高さも5メートルはあるだろう。

そこに1つだけ入り口があり分厚く透明な扉が行く手を遮っている。

そして、その入り口の横には電子パネルがあり、どうやらそこでカードを使って開く仕組みになっているようだ。

そして、その横にはプレハブの詰め所があり、見張りの人が中で待機している。

まずはアンドウさんに言われた通り、初めて使用するので説明を聞いておくことにした。


「すみません。使い方を教えてください。」

「あ、来られたのですね。話は伺っています。」


そう言って外に出ると一緒にゲートの横へと移動して行った。


「それでは説明します。入られる方はこちらにカードを翳してください。そうすれば機械が勝手に識別してくれます。その後に2日以上入られる時はこちらに数字の入力をお願いします。」

「出る時はどうするんですか?」

「出る時は同じ機械が中にあるのでそちらをお使いください。あちらはカードを翳すだけで開きます。それと金庫やロッカーも準備してありますので貴重品も入れておく事ができます。」


中々に準備も良いみたいだ。

ロッカーがあるなら幾つかの武器を入れて何時でも使える様にしておくと良いだろう。


「それと私の方でもIDカードを所持しております。アナタ達ならこちらに言って貰えば開けられますので言ってください。ただし、その場合はIDを持たない同行者は通せません。」

「もしかして、俺達のカードを使えば一般人でも入れられるのか?」

「1人につき3人までは問題ありません。それ以上となると許可が必要になります。ちなみに、パネルのここにカメラがあって顔認証もしています。落とされても悪用は出来ないので安心してください。」


思っていた以上にハイテクのようでセキュリティー面にも気を使っているようだ。

それに俺達にも配慮がされている様なので利用の面でもかなり楽そうだ。


「分かりました。それなら予定は今日から4日になります。そう言えばそれを越えたらどうなるんですか?」

「数日待って戻られなければ捜索隊が出る事になっています。ただ・・・。」

「俺達が死ぬくらいの場所だと誰も迎えに来れませんね。」

「はい。ですから気を付けてください。ちなみに7階層までは制圧済みとの事です。それとこれがそこまでのマップになります。」


そして最後に渡された紙面を開くとパソコンで綺麗な地図が書かれているのでこれなら迷う心配も少なそうだ。

それに8階層以降でマッピングした物を提出するとこうして作ってくれそうだな。


「色々ありがとうございます。」

「頑張ってください。」


そして俺達はパネルで手続きを済ませると日数を打ち込んでOKのボタンを押した。

すると分厚いガラスの扉が横へスライドして次第に通路が通行可能になる。

どうやら扉だけで5つも取り付けられているみたいでこれなら魔物が出てきたとしても簡単には突破できないだろう。

俺達は遮る物が無くなった通路を通って中に入るとそのままダンジョンへと入って行った。

その後マップのおかげで俺達は短時間で8階層に到達しさっそく探索を開始する。


そして、こうやって進んでいるとダンジョンが下に行くにつれて大きくなっているのが分かる。

ただし通路も広くなり点在する部屋も大きくなっているので地図にすると同じくらいの見た目になってしまう。

これからどれだけ深く潜る様になるか分からないけど、これだと1階層ずつの探索も時間が掛かる様になっていきそうだ。


そしてマッピングをしながら進んでいくと最初の魔物と遭遇した。

ここに来るまでは人型ばかりだったけどここに来て獣系へと変わっている。

どうやらこの階層は熊の魔物の様で大きさは2.5メートルと言ったところか。

なんだかスケールダウンした気がするけど油断は禁物だ。

今まで階層が下がると必ず敵は強くなっているので甘く見ていると足元をすくわれかねない。

そのためまずは俺が相手をして様子を見る事にした。


「様子を見て来るから皆は俺の戦闘を参考にして。」


そして俺は接近すると相手の間合いに入り足を止めた。

すると太い腕が横薙ぎに振るわれ、それを屈んで躱すと反対の手が上から降って来た。

それを下がってやり過ごすと次の噛みつき攻撃はスウェーで躱し伸び切った顎に拳を振り上げる。


「グガ!」


今の一撃はかなり手加減しているのでそんなにダメージにはなっていないだろう。

それでも相手を怒らせる事には成功したみたいで攻撃が激しくなった。

動きは無茶苦茶だけど躱すだけだと意外と飽きてくる。

スキルの見切りが仕事をしてくれているので最初に比べれば躱すのも簡単になっている。

最後は防御力だけどこれに関しては皆に任せよう。


「そろそろ交代しようか。」

「ああ、後は父さんに任せろ。」


皆の方が連携が上手いのか父さんは俺が後ろに飛んだタイミングで入れ替わって攻撃を加えた。

するとその切り上げの1撃は熊の腕を斬り飛ばし、返す攻撃で深く胸を斬り裂いた。


「止めは私ね。」


そう言って後ろから母さんが槍による突きを放ち喉を貫くと、それが止めとなって熊は消えて戦闘は終了した。

これならこの階層を制圧するのは難しくなさそうだ。


「それじゃあ、全員が戦闘を経験したら分散しようか。」

「そうだな。前と同じ編成で行くか。」

「それで行こう。俺の方はリリーが居れば十分だし。」

「ブ~ブ~。」

「お兄さんと一緒が良いです。」

「ダンジョン内では我儘禁止。」

「「う~。」」


チーム編成にアケミとユウナから意見が出たけど、ここでは聞く訳にはいかない。

リリーも贅沢を言えば父さんと母さんに付いて行きたいのを我慢しているだろうし、アケミとリリーを入れ替えると俺と組めないユウナが可哀そうだ。

だからここは心を鬼にしなければならない。

どのみち敵が強くなれば必然的に皆で戦う事になるのでこうして分散するのも最初の内だけだ。


「適当に回って敵を見掛けなくなったらここに戻って来よう。」


そして何度か全員での戦闘を繰り返した後に予定通り分散してこの階層の魔物を倒していった。

俺の走る速度はリリーに合わせているのでそれほど早くはないけど敵を1撃で倒しているので進みは早い。


そして戦って思った事は、これからのリリーの装備もちゃんと考えないといけないということだ。

強化を得られれば今までギリギリだった敵でも余裕を持って倒す事が出来る。

どんな物が良いかはデザインについてはネットやペットショップで確認してみる必要がありそうだ。

そして1時間ほどで全ての敵を倒し終え、父さん達が発見した階段を使って9階層へと降りて行った。

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