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360 死神と創造神 ①

次の日からも俺は村を周ってそこに住まう神を移住させていった。

人数が増えると世界樹の作業効率も高まり、順調に世界の再構築は進んでいる。

そして今日の昼には最初の世界が修復を完了するらしく、様子の確認に向かう事にした。


「・・・また、これを使うのか。」

「これは世界樹のリンクを使った回廊だから以前にここに来るのに使った物とは別物さ。安定もしているから他の世界に迷い込む心配もないよ。」

「それなら大丈夫だな。そういえばアズサ達はここに来る時は大丈夫だったか?」

「私達はお父さんが繋げた専用の回廊を使ったから大丈夫だったよ。」

「へ~・・・セイメイはそんなのを作ってたのね。それを使えば2ヶ月も迷わなかったのに。」

「あの時はまだ秘密にすることがたくさんあったからね。それに言う程には悪くはなかっただろ。」

「・・・それもそうね。」


ファルは顔を背けて短く肯定すると耳まで赤くなって俺の事をチラチラと見てくる。

色々と恥ずかしい事や良い意味で初めての経験を幾つも積み、世界樹から種も貰えたので悪い事は無かったはずだ。


「それじゃあ準備も出来たみたいだから様子を見に行ってみるか。」

「そうだね。まだ見ぬ食材が私達を待ってるかもしれないもんね!」

「でもクオナさんが期待はし過ぎない方が良いって言ってたよ。」

「そうなのか?」

「何処の世界でも基本的に似たような見た目の野菜や動物が居て、似たような味がするそうです。その中で地球の食材は品種改良がされているので上の方らしいですよ。」

「でも一部に関しては飛び抜けて美味しい食材も存在するって言ってたよ。ドラゴンとか海獣とか突然変異のファンタジー食材とか。」

「それについては後で確認してみよう。今日は軽く見に行くだけだからな。」


その辺の事は後でクオナにナノマシンを散布してもらって調べてもらえば良いだろう。

そうすれば採取の手間も減らせて欲しい食材を手に入れる事も出来る。

ちなみに世界の再構築が可能になった時点でハルアキさんが専用の通信機で報告を終えており、クオナ達から世界を管理するための監督官を派遣してもらうようになっている。

その人たちの指導を受けながらこちらからも希望者を送り出し、平和な世界を維持管理してもらう。

そして回廊を通って世界を渡るとそこには広大な自然と人の暮らす町があった。

どうやら生命に関しても問題は無いようで、人々も平和に暮らしているのが分かる。


ちなみに今回は再構築を行う時間帯を邪神が現れる前に設定しているそうだ。

そのため彼等は平和な時間を生きており、自分達が死んで世界が滅んだことにも気付いてはいない。


「でも、それが良くないのかな?」

「そうかもしれないな。せっかくの平和な世界なのにそれを理解せずに無駄な血を流させようとしている奴等が居る。」

「どうするの?私達で吹き飛ばしちゃおうか。」

「元を絶たないと繰り返しだと思います。」

「そうだな。今日はあまり時間も無いし手短に終わらせてしまうか。」


俺達がこの世界に到着した場所は平和な町の上空で、そこに向かって大勢の騎馬兵が土埃を上げながら駆け寄っている。

それだけなら旅を急いでいるとかレースをしているなどの可能性はあるけど、今の俺達には奴等の殺意や悪意を感じ取ることが出来る。

あれは確実に町を襲撃して皆殺しにするつもりなので、このままで多くの犠牲が出る事になるだろう。

しかも邪神は星の様に漂う大量の世界の中から強い悪意に引かれて現れるそうだ。

それは以前にもあった魔王の邪神召喚だったり、この世界の様に世界征服を企み邪神を呼び出そうとしている場所だったりする。


なので丁度良くこの世界の何処かから呼びかける声が聞こえてきたので電話を取る要領で回線を繋ぐと、それを辿って場所を特定した。

そこから空間を粉砕して無理矢理に繋げると悪魔王の姿でその場に舞い降りた。


「おお!伝承は真実であったか!さあ、我が呼びし邪悪なる神よ!我に永遠の命と世界を与えるのだ!」

「は?そんなの自分でどうにかすれば良いだろ。まあ、申請は来てるからそれだけは試してやるか。・・・ポチッとな。」

「ぎゃあーーー!!!」

「へ、陛下!!おのれ!この方に何をした!?」

「永遠を手に入れる切っ掛けを与えただけだ。しかし、どうやらその者には資格が無かったようだな。」


見ると陛下と呼ばれた男は苦しみ藻掻いた末に死んでしまったようだ。

どうやらこの男には愛が不足していたらしく、ステータスは定着しなかったらしい。


「これより、この世界を腐らせる病巣としてお前たちには死んでもらう。さあ、邪神が如何なる存在なのか精神と魂の両方に刻み付けるが良い!」


そしてスキルを使って恐怖と絶望を刻み付け、耐えられずに死んだ者はその場に放置していった。

皆殺しにしてしまうと邪神の恐ろしさを世界に伝える者が居なくなってしまうので、対象はこの城に居る兵士や貴族が中心となる。

町には手を出さず、最後に城を半壊させるように飛び立つとその上に滞空して誰も居ない山に向かって轟砲を放った。

これで後は町に居る連中にこちらを認識させて注意事項を伝えるだけだ。


「この国の人間共よ!貴様等の王は争いを望み、その報いを受けて命を落とした!もしそれを理解せず新たに争いの火種を生み出そうとするならば、再び我は降臨しその国を塵と変えるだろう!あの山はそれが可能であるという証としてこの世界に残して行く!良いか忘れるなよ!我は常にこの世界を監視しているからな。」


下は恐怖と大混乱で酷い有様だけど概ね目的は達成したと言えそうだ。

これからはここに移住した神達が彼等を監視して上手く導いてくれる。

もし派遣の要請があれば元凶には痛い目を見てもらい、何度か続ければ争いも沈静化するだろう。


そしてアズサ達の所へ戻ると町へ続く街道に沿って死体が散乱していた。

どうやらこちらはアケミとユウナが片付けたらしく、乗っていた馬は殺さない方法を取ったようだ。

解放された馬が何処にもいないのは以前の動物園と同様にアズサを恐れて逃げ去ったからだろう。

人とはあんなにも相性が良いのに、草食動物との相性が最悪なので少しだけ可哀想に思えてくる。


「お馬さんは逃がしてやろうな。」

「もう~分かってるよ~!」

「そう思うなら仮面に肉マークを浮かべるのは止めような。」

「え!?ちょっと何してるのよ天一テンイツ!」


天一とはアズサが纏っている12神将の1人で普段はお淑やかだけど怒らせるとアズサと同様で凄く怖い。

仮面がアズサの怒りに反応して般若に変わるのもそこに原因があるのだろうと予想している。

年間に地上に下りる事が何度かあるらしく、何故か今の時代だとツバサさんとは知り合いでオタク仲間だったりする。

あちらは年に何度か日本に来る外国の人くらいに思ってるみたいだけど、その時にアニメや小説を一緒に買い漁るそうだ。

ちなみにアズサとは精神がリンクしているので天一には思考が手に取るように分かると以前に言っていた。


「まあ、そろそろお昼時だからな。少し長居したから帰ってお昼にするか。」

「馬を食べようと思ってなかったからね!」

「分かってるって。草食系と相性が悪いだけだよな。この周囲から動物が大移動する前に早めに帰ろう。」

「そうだね。さっきは鳥が一斉に飛び立ったもんね。」

「野生動物は危険に敏感です。きっと天変地異の前触れと同等の危機を感じ取ったのでしょう。」

「もう~2人まで酷いよ~!」


ちなみに俺の場合はオオカミとライオンを除外すれば威圧しない限り逃げ出される事はない。

それどころか向こうから寄って来て懐いたり平伏すので、これも人徳と言うか動徳?と言ったところだ。

そして目の届く範囲で戦争に類する争いは起きていないようなので、早く戻って管理を任せる神を連れて来る事にした。

そちらに関しては昨夜の内にクオナが派遣してくれた監督官がチーム編成を進めてくれている。

本当に地球に来ているクオナの仲間は一部を除いて仕事が出来て働き者だ。


「ただいま。様子を見てきたよ。」

「それでどうでしたか?」

「邪神が現れる前の時間から世界が再開してたよ。それで世界征服戦を起こそうとしてた奴を始末して邪神召喚を阻止しておいた。」

「あの、どうやってその現場に遭遇したのですか?」

「どうもファルに1度邪神にされそうになってるからか邪神召喚に反応するんだよ。それを辿ると現場にぶち当たる感じかな。今回は死人を少な目に抑えて脅しを掛けておいたから上手くそれを利用してくれ。脅しが足りないようなら呼んでくれたら悪魔王として再登場するよ。そうすれば幾らでも脅しが掛けられるからな。」

「分かりました。我々は上手く飴を演じましょう。」

「鞭は任せてくれ。憎まれるのも恐れられるのも恐怖を与えるのも慣れてるからな。」

「ハハハ。なるべく頼らない様に頑張ってみますよ。」


そして監督官の人は100人ほどの神々を連れてゲートの向こうへと消えて行った。

ちなみにサクラで食べた料理が名残おいくて泣いている者が多数出たけど、落ち着いたら食材と異世界食事処○○号店を出店するという事で納得してもらっている。

それまでは互いの世界が安定した回廊で繋がっているのでいつでも食べに来ても良い事にもしてあるのでしばらく御客は減らないだろう。


そして居なくなった以上の人数が今日も移住してきたのでサクラやその周りは大賑わいとなっている。

そんなこんなで7日が経過すると周囲の人口は小さな町と言えるくらいまで膨らんでいた。

途中から邪神の襲撃も止んだのでファルの方は少し落ち着いたと言えるだろう。

この世界に住んでいた普通の神はこの2番島へと移り住み、邪神たちは中央、1番島、3番島へと集中している。

住み分けが出来ているのでこの島に居る者達は以前よりも落ち着いて暮らせているはずだ。

ただし彼等を食い物にしていた邪神達からすればこの状況は面白くない。

必ず動きを見せるというのがハルアキさんの予想と言うよりも占いに出ているそうだけど、その前に面倒な事が転がり込んできた。


「あの!私達を助けてくれる方がこちらに居ると聞いて来たのですが!?」


サクラの前で用心棒をしていると空から中華風のドレスに天女のような羽衣を纏った女性が下りて来た。

その横には黒髪に黒い騎士服を纏った男性が支えられており、見るからに重症のようだ。

刃物で切り裂かれた傷が幾つもあり、傷口は黒く変色してしまっている。

壊死しているようなので何か特殊なスキルか武器によって負わされたと見るべきだろう。


「ここは行き場を無くした者達が集まってる場所だ。最近になってやっと落ち着いて来たところなんだから余計なトラブルは持ち込まないでもらいたいな。」

「でも、私達にはここ以外に行く場所が無いのです!」

「住むのは自由だから拒まないけど、あそこの建物に登録受付がある。嘘偽りなく素直に応じるならここにしばらくは居られるだろう。」

「し、しかし・・・。」

「ここの連中は基本的に訳ありだ。余程の事でない限り受け入れてもらえる。それに問題があるのはお前じゃなく、そっちの男の方じゃないのか?」

「・・・そこまで見通しているとは唯者ではないな。」

「アンタからは死の気配がする。以前にも何度か会った事があるから分かるけど、死に類する神で間違いないな。」


気配としてはイザナミ様に近いけど感じとしては遥かに弱い。

怪我で弱っているのも理由だろうけど、全快したとしても中級の邪神と互角と言ったところだ。


「確かに私は一般的に死神と言われている者だ。」

「私は創造神として世界を構築する事を生業にしています。互いに相反する力を持っており本来ならばこうして触れ合う事すらタブーとなっているのです。でも私達は互いに愛が芽生え共に手を取り合う決断を下しました。」

「しかし、それを俺の仲間に見つかってしまい互いに別れる気が無いのならどちらかを殺す事が決まってしまった。それでここまで逃げて来たのだが、途中でイザナミというとても恐ろしい神に出会ってここの事を聞いたのだ。」

「ここなら私達を助けてくれる存在が居ると教えてくれたのです!もしご存知ならその人の事を教えてもらえませんか!」


どうやら話を纏めるとこの2人はイザナミ様の紹介でここへと来たようだ。

考えてみればあの人は黄泉の女王として死を司り、イザナギは反対の生を司る神と言える。

噂で聞いた話では今では夫婦円満という事だから、自分達と彼等を重ねて感情移入でもしたのかもしれない。

そもそもイザナミ様は後天的に死を司る神となったけど、彼等の理論で行けば自分達の事も認めないと言っている様なものだ。

それはとてもとても恐ろしい事をほざいているので、きっと今頃は大変な事になっているだろう。

あの人の事だから準備が出来る迄の間2人をここで匿わせ、俺に時間稼ぎをしろと言っているに違いない。

きっと助けなかったら後で叱られて時間稼ぎに失敗しても後で叱られるだろう。

どれだけの奴等に追われているかは分からないけど、俺にとって選べる選択肢はかなり少なそうだ。


そうしていると城で受付を任せている邪神の1人がやって来た。

たしかローニャという元女神でファムが邪神に変えているので少しは信用できる奴だ。

今回の事が落ち着いたら元に戻して解放してやる事にはしているけど、城に入れるのは邪神に限られるのでまだしばらく先の話になるだろう。


「すみませ~ん!城へお客様が来ています~!」

「ここに連れて来ないって事は外から来た奴か邪神の中でも力がある奴だな。」

「仰る通り来たのは死神の治安維持軍を率いた隊長さんです。なんでもここに罪人が逃げ込んだらしくて、その捜索か引き渡しを言って来てます。」

「分かった。俺の方で少し話をしておこう。それと名も知らないそこの新参は早く登録をしておけ。余所者を助ける義理は無いからな。」

「まさかお前がイザナミの言っていたハルヤなのか!?」

「俺は自由恋愛推進派だ。それとこの問題が解決したらキッチリ働いて借りを返してもらうからな。創造神なら世界の修復に役立つだろう。死神の方は護衛としてしっかり働いてもらうぞ。」

「あ、ありがとうございます!それと私はフィリアと言います!」

「感謝する。俺はバレンだ。」

「感謝よりも恋人くらいは自分で守れるようになれ。この世界も弱者には優しくはないぞ。」

「ああ。」


2人が受付に向かうのを見届けてるとローニャを連れて城へと移動を行った

そして部屋に入るとそこにはバレンに似た服を着た男が静かに座っており、こちらに視線も向けずに首をしゃくって向かいに座れと示してくる。

それに目の前には冷えてしまったお茶とお茶請けがあるけど、どちらにも手を付けた様子はない。

他人のお城にアポなしでやって来てこれだけ偉そうに出来る神経は大したものだと褒めたくなる。


「それで、ここに何をしに来たんだ?」

「貴様とは初対面だな。ならば名乗るのが礼儀じゃないのか?」

「俺はそちらに合わせたつもりなんだけど何か間違ってたか?」

「・・・。」

「喋らないのは肯定とするぞ。それと何も言わないなら帰ってくれないか。今はお前を相手にしてる時間は無いんだ。」

「なんだ!その口の利き方は!!」


すると奴はテーブルに拳を振り下ろして破壊してしまった。

グラスは砕けて中のお茶が飛散し、お茶請けに出していたバームクーヘンが宙を待っている。

しかし俺は男の顔を鷲掴みにして持ち上げると壊れたテーブルとカップを再構築して直し、全てを俺の前に並べて見せる。


「な!?」

「言っておくけど俺は邪神じゃない。それとお前の世界では怒りに任せて他人の物を壊すのが礼儀なのか?それなら俺が怒りに任せてお前を壊しても構わないってことだよな。」

「貴様!俺を誰だと思ってる!!」

『ミシ!』

「名乗ってないから知らん。」

「こ、これは条約違反だぞ!!」

「そんな物を結んだ記憶はございません。」

『ミシミシ!』


すると横に控えて様子を窺っていたローニャが棚の中から書類を持ってきた。

仕方なくそれに目を通すと・・・『ミシミシミシ!』。


「止めろーーー!頭が潰れてしまう!!」

「おい。ザッと目を通したがここには互いの世界に所属している者に対して不可侵と書いてあるぞ。それは即ちお前がテーブルを破壊したのも、カップのお茶をぶちまけようとしたのも、バームクーヘンが床に落ちそうになったのも全て条約違反だろ!」

「わ~・・・バームクーヘンの所の怒りが半端ない~。」

「俺はこれが大好物だからな。残して帰るなら後で貰おうと思っていただけだ。それよりも、お前の目的を早く話せ。このままだと頭がザクロの様に粉々になるぞ!」

「わ!分かった!!話す!話すから止めろ!」

「最初から効率良くスピーディーに話を進めれば良いんだよ。」


そして手の力を緩めて下ろそうとすると奴の手に鎌が現れ、それを横に一閃して手首を切りつけて来た。

するとその口元が笑みの形に吊り上がり、手を離してやるとソファーに腰を落として高笑いを始める。


「ハーハハハ!油断したな!これは死を具現化した死神が使う最強の武具だ!これで付けられた傷は如何なる方法を取ろうと回復は出来ん!片手を失い私への暴言と愚かな行動を永遠に悔いるんだな!」

「あ・・・あの。大丈夫ですか?」

「まあ、俺はな。髪の毛くらいの傷が出来た位だ。」

「何を強がって・・・ぎぃやーーー!!」


俺は鎌が触れる寸前に破壊の力を使って防いだからこの程度だけど、奴の左腕は使用された鎌と一緒に吹き飛んでしまった。

平気そうな顔で笑っていたから痛覚が無いのかと思っていたけど、どうやら気が付いて居なかっただけらしい。

ただ、あちらは曲がりなりにも神と名の付く存在なので自力でどうにかするだろう。

問題は俺の方で普段ならこの程度の傷は一瞬で回復し傷跡さえも残る事はない。

しかし再生のスキルを発動しても治る様子は無く、僅かだけど血が浮かんでいる。

どうやらあの鎌で受けた傷には回復を阻害する効果があるらしく、普通にスキルを使っても治らないようだ。

それに傷口の周りが壊死したかのように黒くなり始めている事と、目の前の男の言葉から死という効果が付与されている可能性が高い。


「フ・・フッフッフッ!無駄だ!その傷はどんな力を使おうと永遠に治る事はない!いずれはそこから死の概念が全身を蝕み永遠の苦しみを与えることになるのだ!」

「ん~・・・死の概念か。それなら再構築で効果を反転させてみるか。」


そう思って試してみると傷は一瞬で消えて回復し、しかも即死耐性と死亡耐性というスキルを覚えることが出来た。

これはとても良い感じのスキルなので、後で皆にも覚えてもらうと良いかもしれない。

そして治った手首を相手に見せながら笑みを浮かべると男は驚きに顔を染めている。

しかし先程から新しい手を生やす様子が無いけど、もしかして回復系の能力を持っていないのだろうか?


「お前にとっては残念かもしれないけど俺の方はどうにかなったぞ。それでお前の方はどうなんだ?・・・プ!もしかして自分の鎌で受けた傷が治せないのか?」

「黙れ!貴様のような化物に言われたくは無いわ!!」

「はいはい。とうとう死神にまで化物扱いか。」


男の腕からは今も血が流れており傷は黒く変色してしまっている。

これまでに同じ様な傷を受けた事がないとは思えないので、何らかの回復手段はあるのだろう。

ただしすぐに使用しないという事はアイテム類による回復では無いのかもしれない。


「まあ、試してみるか。」

「貴様!何をするつもりだ!?」

「ちょっとした実験をさせてもらう。」


そう言って男の腕を掴み上げると下級蘇生薬を振り掛けてみる。

すると呆気なく黒かった組織が正常に戻り回復を始めているのが分かる。

この調子なら1分もせずに元の状態へと回復する事だろう。


「意外と対処は簡単だったな。」

「そんな馬鹿な!!」

「治って文句を言うな。それと話し合いはここで終了だ。仕切り直したいなら先触れを出して誠意を持った対応をしろ。次も同じ様な事をしたら容赦なく返り討ちにするぞ。」


今回は不可抗力とは言っても良いスキルを覚えられたし、俺の予想では時間稼ぎをすれば良いだけだ。

イザナミ様は即断即決な人なので数日中に何も変化がなければ対応を変えれば良いだろう。

そして男は立ち上がると怒りと恐怖を顔に浮かべたまま城から立ち去って行った。

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