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289 修学旅行 2日目 ①

初日はちょっとトラブルはあったけど無事に終わらせる事が出来た。

それに小学生で女子風呂を覗こうとする馬鹿な奴も居らず旅館では平和なものだ。

まあ、覗こうと思えば俺なら可能なんだけど、そんな事をすれば後で確実に目を抉られる。

ただ、アズサ達の裸を覗くだけなら金棒の刑で終わると思うけど、それ以外の女子の裸を一緒に見ると軽犯罪が重犯罪へと格上げされてしまう。

しかも昨日はアズサをマジで怒らせたばかりなのでそんな無謀な事はしたくない。

なので初日が無事に終わって本当に良かった。


そして朝食のバイキングをいつもの様に食い尽くした俺達は準備を整えて1階のロビーへと集合した。

すると見覚えのある4人が備え付けのソファーに座っており、頻りにロビーを歩く子供を目で追っている。

そして俺を視界に捉えると立ち上がり、周りにいる子供を避けながらこちらへとやって来た。

もしここで俺達が知らないフリをすれば不審者として通報されてもおかしくないかもしれない

そんな事はもちろんするつもりはないので知り合いとしてこちらから声を掛ける。


「昨日は色々とどうも。それとなんで4人が一緒に居るんだ?」

「俺達は高校の同級生なんです。教官が今日には地元に帰られると聞いて直接お礼をと思いまして。」


説明をしてくれたのは昨日の寺で再会した元生徒であるケイだ。

その横では式神の残骸から生き返らせた妹のサラさんもいる。

そして反対側には黄龍の受付で会ったクスノキさんと買取カウンターに居たミドウさんの姿もあり、世間は狭いと言うけど本当にその通りだ。


「それで、これはどういった状況なんだ?ケイとサラさんの2人なら分かるんだけどな。」


ケイとサラさんは直接関わったから何となく分かるけど、残りの2人がここに何をしに来たのだろうか。

今朝になって口座を確認すると既に黄龍からの振り込みも終わっていたのでここに来た理由が思いつかない。

それに子供である俺が大人4人と話をしていればどうしても目立ってしまう。

何も知らない連中は俺の方を見て変な目を向けて陰口を叩き始めている。


「アイツまた何かやったのか?」

「こんな所に来てまで厄介事を起こすなよな。」

「どうせ悪さでも見つかったんだろ。」

「アイツのせいで俺達まで仲間に見られたらどうするんだ。」


しかし、その声は小さいとは言っても聞き取れない大きさではない。

すると同級生たちの陰口を聞いて理由を知らない4人は不思議そうな顔で俺を見て来た。


「どうして教官があんな事を言われているんですか?」

「ちょっと訳有なんだ。いつもの事だから気にしないでくれ。それよりも説明を頼む。」


すると少し苦笑い気味な表情を浮かべると彼らは説明を始めてくれた。

それによるとクスノキさんとミドウさんはケイによって組織の地下へと幽閉されていたらしい。

ただ、あそこは前に1度だけ見た事があるけど監禁所と言うよりも貴賓室に近かった。

今もそれは変わらない様でその存在を知る者は殆ど居ないそうだ。

もちろん安倍家の様に踏ん反り返っている連中は存在は知っていても中身までは知らなかったらいく結果としてケイはそこへ2人を避難させていたらしい。


「アイツ等の考えは完全に把握しています。ミカとスバルが誰かに消される前に俺が無理やりあそこに押し込んでおいたのです。」

「話を聞いた時には少し驚いたけどよ。以前から組織内でも上にたて突いて消えてる奴が何人か居たからな。」

「まさか私達がそうなるとは思わなかったけどね。」

「その人たちも俺が始末したことにして他所に逃がしてあります。書類上は失踪となっていますが今回の事で安倍家にも本格的に調査が入る事になりました。」


なんでも当主が天皇を式神で襲撃した事と、次期当主が天皇が管理するはずの予知能力を持つサラを幽閉し、能力を悪用していた事が決定打となったらしい。

ロビーに設置してあるテレビでもその事が大々的に報じられているようで大半の生徒がそちらに釘付けになっている。

黄龍は九十九学園の卒業生から見ても大きな就職先なので影響は小さくないだろう。


するとタイミングを計っていた様にケイの持っている古い携帯が呼び出し音を鳴らし始めた。


「すみません。俺に協力してくれてた人から連絡みたいです。」

「ああ、気にしないで良いぞ。」


そしてケイはそのまま通話に出ながら背中を向けて離れて行ったので、その間に俺は周囲を探り狙っている者が居ないかを確認する。

今の所は半径10キロ圏内でここを狙っている奴は居ないみたいだ。

それに例え100メートル以内で狙撃をされても俺なら着弾前に受け止める事が出来る。

しかし、その心配は不要だった様でケイは携帯を持ったままこちらへと戻って来た。


「教官に代わって欲しいそうです。もしかしてお知合いですか?」

「そうかもな。」


しかし、こんな事に協力しそうな相手は1人しか知らない。

俺は内心で大きな溜息を咆哮のように吐き出しながら差し出された携帯を受け取って耳に当てた。


『まさかこのタイミングで巻き込まれるとはな。』

「やっぱりアンドウさんか。どうして修学旅行に来てるのにこんな事に巻き込むんだ?数日先なら普通に休日だろ。」

『いや、この件を放置したのはお前自身だろ。それに巻き込んだんじゃなくて勝手にお前が巻き込まれただけだ。ただ、もう数年は掛かると思っていた問題が一気に解決した事には感謝しておく。それと、そいつには契約終了と伝えておいてくれ。』


そしてアンドウさんはいつもの様に事務的な感じで会話を終えると通話を切ったので今回の事で報酬が出る事は無さそうだ。

俺は携帯をケイに返しながらさっきのアンドウさんが言っていた言葉をそのまま伝えておく。


「契約終了だってさ。」

「そうですか。これで俺も無職だから仕事を探さないとな。」

「ごめんね、お兄ちゃん。私があの時にちゃんと言われた事を聞いてれば良かったのに・・・。」

「気にする必要はない。しばらくは警備員でもしながら凌いでいくさ。」

「うん、・・・でも。」


それでもサラさんの表情は晴れる事は無く、横に居るクスノキさんを気にしているみたいだ。

そこにミドウさんがサラさんの肩に手を乗せてそっと慰めている。

するとそこから立ち上る独特のニオイを感じ取ったのか、ウチの女性陣達が反応を示すとまるで獲物を狙うライオンの様に静かに周囲を囲み始めた。

そして子供らしい無邪気な笑顔を浮かべながら2人の女性の手を取るとそのままロビーの一番隅にあるソファーへと連れて行かれてしまう。


「え、何!」

「ちょっと何なのこの子達!」


あの状態になると鬼が出たとしてもどうにも出来ないのでしばらく放置するしかない。

さっきのやり取りで事情は分かっているだろうから、あちらは任せても良いだろう。


「それで、お前等はアイツ等と付き合ってるのか?」

「実はミカと5年ぶりに会った時に自分が抑えられなくて。」

「俺もサラと5年ぶりに再会できた時に・・・。まさか1発で互いにOKが出るとは思わなかったけどな。」

「俺もだ。流石に泣きながら殴られたのは堪えましたよ。」


どうやら2人とも既に恋人になっているようだけど互いに大きな問題を抱えているのは顔を見れば分かる。

ケイは無職でしかも警察を無断退職しているそうで、そういう事は問い合わせればすぐに分かるので真面な就職先は無いだろう。


それにサラさんに関してはもっと深刻だ。

予知能力を持った人材はとても貴重で天皇が直接管理している部署に入る事がほぼ決まっている。

能力を持っている者も身に危険がある事が分かっているのと、待遇が良い事もあって拒否する者はまず居ない。

ただし、そうなると自由は少なく恋人同時で会う機会は望めないだろう。

噂では他人に対する疑心暗鬼から結婚しない事も多々あるそうだ。

それでも能力から一生の面倒を見てもらえるので特に悪い噂は聞いた事が無い。


「それで、お前らは今のままの自分で満足なのか?」

「ま、まさか!俺にもう一度チャンスをくれるのですか!?」

「俺は良く分からねえけど組織に居たんだ。サラを守るのが生半可な事じゃ無い事は分かってるつもりだ。」


なら2人とも覚悟はあるという事だけど、それがどれ程の物で互いにそれを持っているかが重要だ。

後ろでもその辺の話は終わった様でアズサが既に動いた。

ただこういう時に男の意見は後回しなのがウチのメンバーらしい所と言える。


「あ、ヨモギちゃん。実はお願いがあるんだけど、サラさんを九十九で貰っても良いかな?」

『ダンジョンも安定が確認されましたが出来れば1人は派遣したいと思っていたので問題ありませんよ。』

「ありがとう。それじゃあ1人貰ってくね。」


どうやらアズサはヨモギと連絡先を交換していたようだ。

そして、いくつか話して許可を貰えたらしいく、すぐに次の番号を選ぶとそこへと連絡を入れた。


「あ、トウコさん。実は予言のレアスキル持ってる人が居るんだけど。」

『天皇家の許可はもちろんあるの?』

「うん。ヨモギちゃんが大丈夫だって言ってたよ。それと護衛に付きたい人が2人居るみたいだけど雇えそう?」

『使えなければハルヤに鍛えさせればいいでしょ。こちらで書類を準備しておくから連れて来なさい。それと黄龍本部でゴタゴタがあったみたいね。そっち関係で良い人材が居るようなら拾ってきても良いわよ。』

「ありがとう。ちょっと色々聞いてみるね。」


そして電話が終了するとアズサは親指と中指で輪を作りOKのサインを送って来る。

実の所を言うと九十九が魔物や妖の討伐を本格的に始めて50年も経過していないので今も人材は不足している。

武器や防具の製作やアイテムの調達は俺達が居るから世界のトップに立てているけど、その10倍以上の歴史を持つ黄龍にはまだまだ及ばない所が多い。

それは専門の人材だったり知識だったりと様々でチャンスがあれば常に引き抜きを狙っていると言う訳だ。

今回はその滅多にない機会が巡って来たという事でちょうど現地に居るアズサに話をしたのだろう。

話した内容から黄龍の人間も含まれている事はトウコさんも分かっていたみたいだ。


「そういえばクスノキさんとミドウさんは黄龍に就職してたろ。そっちはどうするんだ。」

「それについては俺の方で事前に処理をしておきました。どちらにしろ今回の事で本部は荒れますし、退職金も振り込んでいます。」

「と言う事らしい。実は今日付で俺達も無職なんだわ。こりゃ退職金で店でも始めるか。」

「それならアクセサリーショップなんてどうだ?」

「おお!俺の趣味ともバッチリ会うな!こう見えても俺は錬成と彫金のスキルがあるんだぜ。」


ミドウさんは俺の言った提案に笑みを浮かべて親指を立てるとサムズアップをして来た。

どうやらすでに店も開く下地は出来ているみたいだ。

最近はダンジョンに入る人間も増えてきて、俺の地元にも素材の買取などをする店を出したいとトウコさんが言っていた。

コイツ等を鍛えればそこで店をやりながらでも護りたい者を護って行けるだろう。


「それならお前らをダシにして芋蔓式に人材を奪って行くか。」

「さすが教官はエグイ事を言い出しますね。」

「本部が潰れない程度に頼むぜ。」


すると2人からは呆れた様な苦笑が向けられてしまった。

そして今から出かける最初の目的地が決定したので、まずは朝一で本部に行って人材探しからだ。


「お前等も知り合いが居るなら早めに声を掛けておけよ。この際だから恩を売りまくっておけ。」

「了解です。」

「これが過去の英雄か。まるで正義の使者と言うよりも悪人みたいだな。」

「ハハハ!俺は何時の時代でも正義の見方なんて一言も言った事は無いからな。」


しかし、そう断言した俺の背後から複数の声が聞こえて来た。

ただその声はちょっと笑っていてとても楽しそうな感じが伝わって来る。


「でも女の子には優しいよね。」

「妹には異常に優しいしね。」

「困ってる家族が居たら頻繁に助けてたよね」

「国ごと助ける事もありました。」

「怪我で困ってる人は見逃さないよね。」


どうやらあちらも話が終わったようでアズサ達もこちらへと戻って来る途中だったみたいだ

そして過去の記憶から俺が今迄に行った事を呟いて皆で笑い合っている。


俺が覚えているのでも他人の弱みに付け込んで利益を貪る大商人。

愛し合う恋人同士に横恋慕して無理やり嫁にしようとする大地主。

働かずに村を襲って食料や女を奪う盗賊たち。

密かに人を攫って売っていた人攫い共。

そして最大の大悪人である妹を大事にしない兄。


そう言う奴等を始末したり、お仕置したりと聞き付ければ容赦した記憶は1つもない。

ただし俺は独善的な思考に基づいて悪を断罪して人を救って来たので正義は名乗ず、殆どの場合で悪と宣言している。

それが時に周りには酷い行いと見えて恐れられようと、それがまた噂となって多くの人を救う事もある。

それにこういうのは主観と客観で意見が分かれるものだ。

なのでこのまま話していても時間だけが経過するので早速出発する事にした。


「ここに居ても利益が出ないからまずは本部に行こうか。」

「「「お~!」」」


そして出発すると今日も黄龍の本部へと向かって行った。

しかし到着すると以前は居なかった黒塗りの車が本部の周りを取り囲み道を封鎖している。

どうやらこちらへの調査が既に始まっているようだ。

ただ人の封鎖はしていない様で出入りは制限されていない。


「さっそく入ってみるか。クスノキさんには案内を頼みます。」

「はい。」


そして俺達は止まっている車を飛び越えて本部へと入って行った。

するとそこではどこぞのエージェントの様な黒服にサングラスの集団がいたる所で動き回っている。

彼らは的確に必要な資料を見つけたり、それを隠し持っている者を捕えては外へと運び出していた。

どうやら捜索系のスキルを所持した人員を大量に動員しているようだ。

俺達は邪魔にならない様に動きながら昨日の半数ほどしか居ない受付に声を掛け状況の確認を行う事にした。

もちろん声を掛けるのは同僚であり、同じ女性であるクスノキさんだ。


「ねえ、皆は大丈夫なの!?」

「ミカ!それにミドウ君も!昨日のお昼に連れて行かれて今日には辞めたって聞かされたから心配してたのよ!」

「それよりも人数が少ないみたいだけど他の皆はどうしたの!?」

「事前に逃げた人が半分いて、もう半分が連れて行かれたわ。何でも各自に配られていたパソコンの中に不正に関するデータが紛れてたみたい。真偽官の検査を受けて問題がなければ戻って来れるって言ってたわ。」


ちなみに真偽官とはスキルによって真実と偽りを読み取るスキルを持っている者の事だ。

間違いを無くすために個人面談の形式で複数の真偽官から同じ質問が行われて何重にもチェックが行われる。

普段は裁判所などで働いているので見かけることは少なく、全ての個人情報も伏せられている貴重な人材だ。

ちなみに俺達の中ではワラビがそのスキルを持っていてシュリが似た様な事が出来る。


「それで逃げたのは誰なの?」

「部長とかチームリーダーをしていた男共よ!アイツ等がきっとパソコンへのアクセス権を使って隠し領域にデータを送り込んだのよ。じゃないと下っ端の私達がそんな見た事のないデータを持っているはずがないじゃない!」


きっと連れて行かれたスタッフの中には知らない罪で連れて行かれた者も多かったのだろう。

それにここは安倍家のお膝元の為に男性が優遇されていたみたいだ。

それなら連れて行かれた女性が戻って来るのも時間の問題だろう。


そして少し待っていると訓練場で行われている真偽官の質問を終えて無罪が確定になった人が次々と戻って来た。

しかし、その顔色は良いとは言えず、この本部に対する不信や怒りを抱いているようだ。


「これはチャンスだな。」

『ニヤリ。』

「そうみたいだね。」

『ニヤリ。』


これはまさに入れ食いという奴なので俺だけでなく頼まれたアズサまでも似た様に笑みを浮かべている。

それに無罪が証明された人材がこれだけ居るという事は声を掛ければ話に乗る人も多いに違いない。

普通は最初の1人が一番難しいのだけど、こちらは既に4人を雇用する事が決まっている。

その信頼と実績を上手く利用すれば集団心理が働いてごっそりと人員を確保できそうだ。


「ねえ、あの子って昨日ミカが担当してた過去の英雄よね。なんだか凄く邪悪な笑みを浮かべてるけど大丈夫なの?」

「う、うん・・・多分・・・きっと大丈夫。あんな感じに見えるけど凄く良い人?みたいだから。実はここには九十九に移籍したい人を探しに来たんだけど・・・。」

「九十九に移籍!なんて話を持って来てるのよ!」


すると話していた女性は大きな声を上げてカウンターを叩いた。

しかし、その動きと喋り方は何処か芝居じみていて周りのスタッフも見ないフリをしながらも耳がピクリと反応している。


「やっぱりまずかったかな?」

「当たり前でしょ。でもそんな事が本当に可能なの!?」

「うん。だってあそこに居る子は九十九商会会長である九十九 トウコさんの孫でさっき直接話して引き抜きを指示されてたよ。」

「で、でも引き抜きなら少数精鋭よね。」


女性はチラチラとアズサの方に視線を向けているけど、確か人数制限は言っていなかった。

それにトウコさんの所は男女差別はしないし、今では日本を代表する世界有数の大企業だ。

ここに来るまでに聞いたけど黄龍では給料目当てで働いている人が多く、条件が同じかそれ以上なら高い確率で釣れる!


「真面目に働くなら制限はないよ。ただ言っておくけど職場はここよりも田舎だしダンジョンの傍だから危険も大きいからね。あ、でも九十九学園には未来有望な若手が沢山いるかな。」


すると周りで聞いていた女性たちの声が裏返った。

それはまるで悲鳴の様にも聞こえ傍で調査をしている黒服さん達も驚いて警戒するほどだ。


「その話に乗ったわ!」


そう言って看板娘と言っても過言ではない受付の花達が立ち上がった。

それに並んで他のスタッフも次々に立ち上がり机の中から『辞表』と書かれた封筒を取り出し一番奥にある机へと投げつけている。

恐らくは今回の事がある前から現状に満足が出来ずに機会を窺っていたのだろう。

その堂々とした行動が後に続く者の背中を押すと揃ってアズサの許へと向かって行った。


「これで私達も後には引けないからね。もしダメだった場合は責任を取ってもらうよ。」

「構いませんよ。その場合は私自身が会社を立ち上げて皆さんを雇用しましょう。」

「フフ!アナタも大した子ね。私が男なら惚れていそうよ。」

「残念ですが私達にはもう婚約者が居るのでもしそうなってもお断りします。」


そしてアズサが俺に視線を向けると周りも一斉にこちらへと顔を向けた。

ここは本部だからか全員がそれなりに美人なのでそんな示し合わせたみたいに見られると威圧感が半端ない。

きっと余程のナンパ師でもこの状況で声を掛けるのは難しいだろう。

俺にとっては美人とは綺麗なだけであってそれ以上でも以下でもないから問題はないけど。


「そう言う事で俺が皆の婚約者です。九十九に通ってるから何かあった時は声を掛けてください。特にストーカーでお悩みなら何時でもどうぞ。」

「なんだか聞いてたのよりも気さくなのね。」

「それくらい気楽に声を掛けてもらいたいって事です。」


その後、幾つかの説明を終えると希望者(ここに居た女性全員)は各自で準備を済ませた者から足早に九十九学園へと向かって行った。

やっぱりアイテムボックスがあれば引っ越しも楽々だな。

あそこにはスタッフ専用の寮も完備されているので行って当日に路頭へ迷う事も無いだろう。

後は彼女たちが個人個人で頑張って道を開くべき事だ。

そして人の消えたその場から立ち去ると残った時間で京都観光を行う事に決めた。

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