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18 2つ目のダンジョン ①

ダンジョンに入ってすぐに魔物の気配を感じ取る事が出来たのでそちらへと進み魔物を発見した端から倒していった。

今のところ発見が出来たのは全て1階層に相応しい雑魚の魔物ばかりだけど数は多くて既に20は倒しているだろう。

俺が初めてダンジョンに入った時は1階層に50匹くらいの魔物が徘徊していた。

そこから考えるとここにもそれくらいはいてもおかしくはない。

しかも、フィールドタイプとでも言えば良いのか、ここは通路が無いので階層としての総面積はこちらの方が遥かに広い。

もしかすると50を超える魔物が生息しているかもしれない。


「見晴らしが良いから見つけるのは簡単だけどあちらからも丸見えだな。」

「それでも敵が弱いから今の所は余裕で進めそうだぞ。」


父さん達も周りを警戒しながら進んでくれているが、ここは初めて来る所なので情報が全くない。

何が出てくるか分からないので油断していると命を落とす可能性も0ではないだろう。

そして歩いていると母さんたちが遠くに何かを発見したみたいだ。


「あそこに何か黒い物が沢山立ってるわよ。」

「木・・・には見えないわね。」


俺もそちらに意識を向けてみるけど気配はないので魔物以外の何かだろう。

目を凝らすと確かに黒い物体が地面から複数伸びているのが見えるので確認の為にそちらへと移動していった。

そして近づくにつれて辺りには過去に嗅いだ事のある臭いが充満し始めてる。

もし以前の俺ならこれ以上進む事を躊躇っていたかもしれないが今はこの程度のことで足を止める者は誰も居ない。


その臭いとは昔に嗅いだ火葬場での臭いに似ているが、今はその何倍も酷い。

最近は性能が上がってあまり臭いがしないけど昔は人を焼いた時にはこれに似た匂いが周囲に漂っていた。

あの時は子供ながらに何か忌避感が働いたのかあまり良い気分ではなかった。

今臭っているのはそこに腐臭をプラスした感じで先日のゴブリン村を大きく上回る酷い感じだ。

当然、遠くからは分からなかった物も、近くに行けばはっきりと見える様になる。

先程から見えていた黒い物体は磔にされて焼かれた人達の成れの果てであまりの生々しさに死んでいると分かっていても今にも悲鳴を上げそうに見える。

それに人を焼き尽くすには火力が足りなかった様で表面は黒く焦げているけど中身は完全には焼けていない。

それとこの気温が重なって腐敗臭が漂っていて体液が地面へと滴っている。

ダンジョンの外は冬の寒さなので外と同じ気温ならもう少しマシ状態で発見が出来たかもしれない。


「どうしようか。おれたちじゃあ対応しきれないよな。」

「そうだな。数人ならともかく見るからに50人は超えていそうだ。一度戻って応援を呼ぶか。」

「そうね。ここと出口はそれ程離れてないから私達で護衛をすれば大丈夫でしょう。何往復かしてもらえば1時間くらいで終わりそうね。」


話し合いの結果で自衛隊の人達に協力してもらう事になった。

彼らは今回の戦闘で蘇生薬を大量に手に入れており、昨日の分は俺が仕分けしてあるので彼らの持っている物を使用してもらえば良い。

俺達も少しは持っているけど大事な収入源をここで使う義理は無いのである所から出してもらう事にした。


そして外に出た俺達は近くに居た自衛隊員の人に声を掛けて状況の説明を行った。


「了解しました。報告して来ますので少しお待ちください。」


そう言って隊員の男性は走り出して報告に向かい、少すると多くの隊員たちを連れて駆け寄って来た。

その人数は100を越えており肩にはタンカが担がれている。

どうやら協力してもらえるようで蘇生薬を収めた収納バッグも背負って来たようだ。


「それでは何人ずつの編成にしますか?」

「魔物がまだ残っているので20人ずつでお願いします。襲われてもこちらで対処するので慌てずに付いて来てください。」


隊員の中にはまだ魔物が残っていると聞いて顔色を悪くする者もいる。

しかし、国民を護る使命を胸に勇気を奮い立たせて近い人から前に出てきた。


「それではお願いします。早く彼らを解放してあげなければ。」

「そうですね。それでは付いて来てください。」


そして俺達は普通にダンジョンへと入って行ったけど自衛隊の人からすると初めて足を踏み入れる敵の本拠地になる。

緊張の表情を浮かべ、この寒い中でも額から汗を流しながら前に踏み出し闇しかない門の中へと入って行く。

しかし眼前に広がった光景を見て彼らの表情は驚きへと変わった。

きっとオークの様な醜い魔物が住む場所なのでもっと地獄のような場所を想像していたのかもしれない。


「これが・・・ダンジョンの中。」

「こんなに綺麗だなんて・・・。」

「本当に魔物の領域なのか?」


彼らは足を止めて周囲を見回しそれぞれに感想を漏らしている。

確かにこれが普通の光景ならとても美しいだろうけど、ここは魔物が徘徊する危険なダンジョンの中だ。

それにあの現場を見ればその思いもすぐに吹き飛んでしまうだろう。


俺達は周囲を警戒しながら見晴らしの良い草原を早足で進んでいく。

そして先程と同じ様に次第に臭いが鼻に届くようになってくると表情を歪める者が出始めた。


「こ、これはキツイな。」

「震災後を思い出す。」


そして現場に到着して彼らがそれを見た時に漏れ出た言葉は先程とは大きく異なっていた。


「こ、ここは地獄なのか!」

「ウ、ウプ。酷すぎる・・・。」


現場の光景を見て彼らの中には地面を汚してしまう者も現れた。

これは自然の猛威の結果ではなく、意思ある者の悪意の具現化と言える。

彼らの中には自然災害で死んだ人を回収した経験がある者も居るみたいだけど、ここに居る犠牲者たちはそれとはベクトルが違う。

恐らくはそういった悪意の結果で死んでしまった死体に関しては先日の刑事さん達の方が慣れているのだろう。

俺は素早く磔にされた人たちを下に降ろすと彼らに向かって声を掛けた。


「降ろした人から蘇生薬をかけてください。そうすれば真面な状態になりますから。」


降ろす作業は俺と父さんとリクさんで行い、その他の女性陣には周囲を警戒してもらっている。

俺の索敵とリリーの鋭い五感があれば必要は無いけど、あくまで口実なので問題ない。

今回は状態がかなり酷いので互いに家族へ気を使った結果だ。


「これって本当に生き返るのか?」


小瓶を構えたまま固まっている隊員が言葉を零しているけど確かに焼け爛れて腐り始めている死体を見ればそう感じるだろう。

実のところ今までで一番酷い状態と言えるので俺も万全な状態で生き返るのか気になっている。


「試してみないと分かりませんから早く試してみてください。後が控えてますよ。」

「あ、ああ、すまない。」


駄目なら諦めれば良いだけだけで、又はいまだに出会っていない上級蘇生薬を見つけ出すかだ。

下級の期限が1週間で、中級が1月だったので上級の対応期間が下級と同じと言う事は無いだろう。

短くても1月はあると見積もってその間に更にダンジョンを攻略するしかない。

そうなると本当に時間との勝負になりそうなので場合によってはもう1つのダンジョンで出た犠牲者は諦めることになるかもしれない。


そして隊員が蘇生薬を振り掛けると遺体は光に包まれ破損している場所が修復されていく。

そこから1分ほどで光が収まり、地面には裸の男性が蘇生した状態で横になっていた。

ただし髪は燃えてしまったのでそんなには生えてはおらず、これが中級蘇生薬の限界のようだ。

それに死滅したのではなく薄く生えているのは見えるので、時間が経過すれば元通りに生え揃うだろう。


「す、凄いですね。」

「まさに奇跡だ。」


するとその光景を目の前で見ていた隊員は驚きの声を上げ、周囲もその声を聞いて動き始めた。

そして周りの人達も次々に自分の担当している人を蘇生させてくと毛布で包みタンカへと乗せていく。

それに、ここはダンジョンの中なので誰も喜びで叫び出したりはせず蘇生が終わると迅速に隊列を作って移動の準備をしてくれた。


「それではお願いします。」


その声に釣られて彼らを見ると、その目には先程と違い力が戻ってきている。

手の中にある救うべき人の確かな命を感じて心に火が点いたのだろう。

その気持ちは俺にも分かり、アケミが生き返った時は彼らと同じ気持ちになったのを覚えている。


「まだまだ犠牲者はいるので急ぎましょう。」


俺達は来た時よりも急ぎ足で外へと向かい移動を開始した。

そして外に出ると被害者を連れた人たちはそのままダンジョンから離れて行き新たな隊員がやって来る。

俺は去っていく人たちを軽く見送ると今度は新しい人たちを連れて何度か往復し、先程の場所で見つけた人々の回収を終えた。

すると指揮を執っていた人が俺達の許までやって来て状況を教えてくれる。


「今ので発見できた行方不明者は1割と言ったところです。」

「そんなにいるんですか!?」

「すみません。そちらと違い初動がかなり遅れてしまったので被害が拡大してしまいました。どうも初期の段階では対話も試みた様で、その際に犠牲になった者も少なくありません。」


確かに相手が漫画や小説に出てくるような魔物の姿でも知性と理性を持って接してくれるかもしれない。

最初から敵として扱うのは正解とは言えないだろうけど俺の場合は既に家族が殺されていた。

それで即座に敵として認定していたけど被害を知らなければ仕方の無い事だろう。


「でも、それだと蘇生薬が足りないでしょう。」

「はい。あなたに鑑定していただいた中級蘇生薬は200本ほど残っていますが全ての犠牲者があの様な状況なら確実に足りないでしょう。ですから今後もあなた方には協力をお願いしたい。」

「それについては現在は各所で交渉と調整をお願いしています。俺達の今できる協力はこのダンジョンを鎮静化させるまでです。それ以降は新しい契約が必要になります。俺達も前線で命を懸けてますからこれは譲れません。」


ここで変に協力すると言ってしまったら先日の役人みたいなのがまた来るかもしれない。

彼らには悪いけどこの後のダンジョンで手に入る蘇生薬だけで我慢してもらうしかない。


「はい。それでも構いません。蘇生自体が望外な奇跡なのですから私達から無理は言えないでしょう。ただ、もし可能ならもう1つのダンジョンもよろしくお願いします。」

「依頼がくればどうにかしますよ。それではそろそろ戻りますね。」


俺は適当な所で話を切ってダンジョンへと戻って行った。

そして1階層の魔物を殲滅し2階層へと降りる。

すると今度は100を越える遺体が先程と同じ様に飾られていた。

それを見て俺は内心で舌打ちをして表情を歪める。


「もしかして、これはこちらの蘇生薬を枯渇させるための作戦か?」

「相手にその意図があるかは不明だが、確実に成果は出ているな。」


ここに居る人たちを生き返らせれば蘇生薬の在庫が100を切ってしまうのでハッキリ言って数が足りない。

せめてもう少し状態が良ければ良いんだけど、殺し方に注文を付けられるはずもないので諦めるしかなさそうだ。

しかしそんな中でリリーが遺体を見て声を挙げ、何かを知らせようとしてくる。


「ワンワン!」

「どうしたリリー?」


リリーは俺が傍に行くと遺体を見上げて鼻を鳴らした。

俺はそれに続いて気は進まないけど遺体を嗅いでみる。


「腐敗臭がしないな。それに少し暖かい。」

「お兄ちゃん。もしかしてここのは焼かれてそんなに時間が経過してないんじゃない。」

「臭いもきつくないと言う事は殺されて日も浅いのかもしれないな。」


俺達には検死によって死亡時期の確認なんて出来ないのでリリーの鼻を信じるしかない。

しかし、そうなると死体を焼き始めたのは最近の事という事になり、本当に蘇生薬の枯渇が目的である可能性が出て来た。


「お兄さん。それなら下の階層に行けばまだ間に合うかもしれませんよ。」

「そうだな。死んでるだけならバラバラでも初級蘇生薬で生き返らせることが出来るからな。この階層を突っ切って一気に確認してみるか。」


俺達は階層ごとの殲滅を放棄して先を急ぐ事にした。

魔法を使える3人を軸に分散し、下に降りる為の階段を探す。

流石に今回はアケミとユウナも大人しく聞き分けてくれたのでそれぞれの家族でグループを作り、俺は更にリリーとペアーになって3方に散って行った。

そして見かけた魔物はなるべく殲滅しながら俺達は階段を探して走り回ると数分で下へ降りる階段を発見した。


「あそこか。リリー合図を頼む。」

「ワン。」


そして運よく階段を見つける事が出来たのでリリーに声を掛けて魔法を打ち上げてもらう。

俺達は照明弾は持っていないので魔法を合図代わりに使い、その為に1グループに1人魔法使いを同行させてある。

そして、すぐにみんなが集まって来たので俺達は階段を下りて3階層へと進んでいった。

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