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114 フルメルト国 新たな脅威

空に上がって少しすると魔物の姿が次第に見え始めた。

しかし、さっきの奴らとタイプは同じ様だけど大きく違う所が1つある。

それはその見た目が完全に魔物であるという事だ。

既に服も着ておらず、真黒な体表が雲の無い蒼穹を汚しているようにも見える。

そして更に近付いてハッキリと見えるようになるとその手に何かを抱えているのに気が付いた。

遠くだと体と同色で見えなかったけど黒い何かを両手で持っている。

しかも全ての魔物がそれを持っていると言う事は何らかの意味があるのだろう。


すると距離が500メートルを切った辺りで相手の飛行速度が急激に加速し一気に距離を詰めて来る。

そして魔物はそれを肩に当てて構えると一斉に攻撃を開始した。


『ダダダダダ・・・。』

「銃を装備してるのか。」


覚醒者や魔物にとってどんな強力な兵器も一部を除けば脅威にならない。

特に銃は投擲に分類されないらしく痛みどころか当たった感触すら伝わってこない・・・はずだった。


「ん!?ダメージにはなってないけど感触がある!」


感じとしては小雨に打たれている感じだろうか。

しかしレベルが40を超えていてスキルや装備で強化した俺でこれなら下に居るメンバーだとアズサは大丈夫として他の3人には危険な威力だ。

俺は即座に振り返り大声で忠告を飛ばした。


「避けろー!この弾は通常じゃない!!」


俺の言葉にハバルとラウドは咄嗟に大きく飛びのき、射線から脱する事に成功した。

しかしレベル1で戦闘経験のないエリスはそうはいかず、向かって来る銃弾に棒立ちのままだ。

ただ出来た動きと言えば剣を持っていない方の手を突き出し、手にしている服を盾にしたくらいだろう。

しかし、その行動が自身の身を護る結果へと繋がった。


「キャーーー!・・・あれ?痛くないです。」


やはり防御力1000の装備は伊達ではない。

あの服は布は薄いけどユッタリとした布が付いているのでエリスの体を覆う位の大きさはある。

そのおかげで攻撃は服に当たると速度を失ったように地面へと落下し、銃弾の雨から持ち主を守ってくれている。


そして横に居たアズサはその間に地面を隆起させて壁を作り、その陰に自分と一緒にエリスを退避させた。


「ここに隠れるのよ!」

「あ、ありがとうございます。それにしても本当に凄い装備だったんですね。」

「私もちょっと驚いたわね。てっきり言い逃れの為の冗談だと思ってたんだけど。」


ここまで声は聞こえないけどきっとあの時の俺の判断の正しさを再認識しているのだろう。

それに魔法の土壁なら魔法で作られているのでこの攻撃にも簡単には壊されないはずだ。

しかし冗談で渡しておいた服だけど意外な形で役に立ってくれた。

あれが無ければ防御の薄い足は撃ち抜かれ、頭に当たれば確実にクリティカルで死んでいた。

あの銃はレベルの低い覚醒所にとっては最大の脅威に成り得るかもしれない。

さっきの覆面が何か知っていそうなので製法を問い詰めて確認してみるか。


「・・・いや、現物が目の前にあるんだ。奪って鑑定すれば何か分かるかもしれない。」


それにしても人間よりも先に魔物があんな武器を開発するとは思わなかった。

それともこの国の奴が開発した技術を使っているだけか。

あの武器ならレベル10前後の覚醒者なら十分に撃ち殺す事が出来そうだ。

アレに関しては早急にアンドウさんに伝えて今後どうするか確認しておかないといけない。

もしもの時のために世界中に広めるのか、それとも秘匿して知ってる奴を皆殺しにするのか。

ただ、今のところ効果があるのはレベルの低い覚醒者に限られている。

その法則性もなるべく検証しておく必要がありそうだ。

しかしコイツ等に関して言えばエリス達にとっては危険な存在となった。

下手に地面へ落としても何をしでかすかが分からない。

銃を何丁か無傷で奪い取ったら後は破壊してこちらで回収しておこう。

しかし敵は10匹を一組として各部隊で飛び回っている。

指揮官が何処かに居るはずだけど広範囲に向かって声を発している個体は見当たらない。

どうやら母さんと同じ様に念話を使える奴が居るようで見つけるのは容易な事ではなさそうだ。


「どいつがリーダーか分からないなら片っ端から斬り捨てて行くしかなさそうだな。」


それに今の俺達には銃を持った魔物は相性が悪い。

空を自由に飛んでいるだけでも厄介なのに、地上に対して一撃離脱をしているので対応できているのはアズサの魔法だけだ。

それでも高速で飛び回る敵に当てるのは難しいので撃墜数はそれ程出ていない。

これは急がないと町に逃げた奴らが戻って来て大きな被害を出してしまう。


俺はゾーンに入って敵を観察し一番近くに居るグループへと攻撃を仕掛ける。

ハッキリ言って攻撃、防御に関しては敵ではないけどスピードに関してはそれなりにある。

それに追えば逃げて行くので追いつくのに時間を使わされて思う様に数が稼げない状況が続いた。


「やっぱりリーダーを先に潰すのが一番か。」


観察していて3つかのグループが攻撃に参加せずに飛んでいるだけなのは分かっている。

恐らくは攪乱も含めて2つがダミーなんだろうけどきっとあの中にリーダーが居るはずだ。

そいつさえ倒せばコイツ等も烏合の衆へと変わる可能性がある。

そうなれば俺のスキルの効果も上がって倒すのに苦労しなくなるだろう。

しかし、そいつをどうやって見つけるかだな。


「せめてお約束通りに何か違いが・・・有った。見つけたぞ!貴様がこの群れのリーダーだな。」

「ギギ!?」


俺は1匹だけに付いているある物を発見すると、そいつに向かって一直線に駆け出した。

するとそいつの顔に驚愕の表情が浮かび何故分かったのかと言う感じに口元を歪める。

その直後に周囲に居る魔物が一斉に集まりまるでシャッフルでもする様に不規則に飛び始めた。


「チャンス!」


しかし、その隙を逃さずにアズサは魔物が集中した場所に魔法を放ち、撃墜数を稼いでいく。

すると魔物はそれを不味いと認識したのか、再びグループごとに分かれて分散し始めた。

しかし、そんな事をしても見た目に大きな違いがあるので逃げ切れるはずはない。


「それで隠れたつもりか!」

「ギゲガ!」


どうやらそいつの中では俺が見失ったと確信があったようだ。

何食わぬ顔で飛んでいたのに即座に発見されて再び顔が驚愕に染まる。

しかし、こんなお約束な違いを俺が見逃すはずはない。

なんたってコイツには頭から長い角が生えているからだ。

角と言うリーダー機にはお約束の物が頭にありながらコイツ自身はそれに全く気付いていないようだ。

やっぱり魔物になってしまうと知能が低下してしまうと言う事だろうか。

俺は犠牲となるのも顧みずに向かって来る魔物を次々に始末しながらリーダーの背中を追いかけて行く。

そして互いの間に何も居なくなった時点で突きの体勢を取ると全速で空を駆けた。


「これで終わりだ!『ザシュ!』・・・あれ?」


しかし俺が攻撃を加える直前に地上から攻撃が放たれ、リーダーの体を切断してしまった。

こんな事が出来るのは地上に居るアズサだけだろう。

他の魔物が俺を追うのに夢中で地上への攻撃が止んでいるのを良い事に照準を合わせて魔法を放ったみたいだ。

それが見事に命中して今の状況を作り出したと言う事だろう。


(・・・まあ別に~、誰が倒しても良いんだけどさ~。)


やっぱり苦労して見つけた相手を横取りされると思う所がある。

しかも相手はお約束と言える角付きなので止めはこの手で差したかった。

その為、ちょっと不貞腐れながら地上に視線を向けると、そこには笑顔で手を振っているアズサの姿がある。


(・・・うん、誰が倒しても結果は同じだな。)

「さすがアズサだ。ナイスフォロー!」

「もう少しだから一緒に頑張ろうねー。」

「もちろんだともマイハニー!」


これはきっとあれだな。

敢えて目立つ角付きを寄こす事で俺達の仲互いを狙った心理作戦で危うく敵の術中に嵌る所だった。


『ちなみにそんな物は一切ありません。』


そして、周囲を見れば統制を失い、予想通りに魔物は烏合の衆と化している。

先程から使っている挑発と漢探知のスキルも正常に機能し、魔物の意識と攻撃が俺へと集中する。

先程までと違い追いかける必要も無く向かって来るので今までが嘘だったかの様に順調に討伐が進んだ。

その結果、欲しかった銃関係の鹵獲も成功し、全ての回収を無事に終了させることが出来た。

しかし取り残しを避けるためにもやっぱりアイツを呼び寄せるべきだろう。

実際に試した事は無いけどここは危険な敵地のド真ん中だ。

条件は満たしていると思うので回収を終えてアズサの許に向かって行った。


「アズサ、オメガを呼んでみてくれないか。」

「良いけど、オメガは遠く離れた日本でお腹出して寝てると思うんだけどな。」


アズサの中のオメガの評価が酷い事になっている。

ただ、あまり働いている所をアズサに見せた事が無いのでこう見られていても仕方ないだろう。

でもオメガもアレでも覚醒者なだけでなく、今ではアズサたちを護る守護獣となっている。

きっと食べ物が喉を通らない程に心配して家中を歩き回っているはずだ。


「まあ、来なかったらまたの機会に活躍してもらうさ。アイツはサポートとしては優秀だから居ると便利なんだ。」

「それなら試してみるね。・・・オメガ~ここまでおいで~。」


するとアズサの前にサークルが生まれそこに光りが収束して一匹の小型犬へと変化していく。

どうやら今の状況を危機的状況と認識してくれたみたいで現れたオメガは・・・腹を出して居眠りをこいていた。

しかも口にはビーフジャーキーを齧っていて完全なリラックスムードだ。

呼び出された事にも気付かないとはどんだけたるんでいるのだろうか。

俺はてっきり飼い主とペットの感動の再会が見られると思ってたのにこれが犬という生物の本性とでも言うのだろうか?

するとアズサはそんなオメガの傍まで行くとお腹を人差し指でコチョコチョと擽り始めた。


「ワフ・・ワフ~。」

「起きてオメガ~。」

「ワウ?・・・ア!」


そして目を覚ましたオメガはアズサを見て首を傾げ、その背後から冷たい視線を送る俺を見て口からジャーキーを落とした。

更にその目が見開かれ体がブルブルと震えはじめる。


「あ、起きたよ。」


そしてオメガが起きたのを笑顔で迎えたアズサはそのまま後ろに居る俺に振り向いてくる。

その時には俺も表情を笑顔に変えており見た目はとても和やかに思えるだろう。


「そうだな。見事な熟睡だった。なあオメガ?」

『ガクガク!ブルブル!』

「休んでた分、しっかり働いてもらうぞ。」

『コクコク』

「ワン!」


すると俺達のやり取りを見てアズサが苦笑いを浮かべながらオメガを抱き上げた。


「もう、オメガを虐めたらダメだからね。」

「ワウ~~~!」


すると庇って貰ったオメガは激しく尻尾を振り、アズサに甘えて媚をうり始めた。

オメガの場合はあまり甘やかすとポカをやらかすので適度な緊張感を与えないといけないんだけどな。

そう思っているとアズサは先程落としたジャーキーを拾うと笑顔で声を掛けた。


「でも働かざる者食うべからずだよ。遊んでばかりだと今夜のご飯を抜きにするからね。」

「ワ、ワン!」

「それじゃあこれもお預けだからね。ハルヤの言う事を聞いてしっかり働くんだよ。」

「ワン!ワン!」


さすがオメガの飼い主だけあって締める所はしっかりと締めてるな。

アズサのおかげでオメガもやる気が出たみたいで地面に飛び降りると俺の許へとやって来た。

まるでさっきの惰眠を貪っていたのが別の犬のようだ。


「・・・まあいっか。この周辺に落ちているドロップアイテムと銃火器に関する物を回収してくれ。地中のは気にしなくて良い。」

「ワン!」


するとオメガは走り出すと周辺を駆け回りながら俺の言った物を集め初めたので人の視界だけだと取り残しがあったみたいだな。

これからはこういう時の取り残しから正体が露呈する可能性も考慮しないといけない。


そして俺の方は回収した銃を取り出すと目で見える範囲で鑑定を行ってみる。


「見える範囲で変わった所は無いな。それなら内部か弾の方か?」


でも、俺に銃を分解する技術は無いからそれは帰ってからアンドウさんに頼むしかない。

弾の出し方も知らないけど予備は幾つもあるので壊しても困る事は無いだろう。


『バキ!ベキ!』

「どうやら弾の方に秘密があるみたいだな。」


出て来た弾の弾頭はまるで血の様に赤い色をしている。

そして、そこを爪で擦ってみるとペイントの様に表面へと何かが塗布されているようだ。


「このペイントの正体は・・・人の血か。」


恐らくは唯の人間の血ではこんな事は起りはしないので使われているのは覚醒者の物で間違いないだろう。

そうなると血の効果があるのは使われている覚醒者のレベルに依存しているのかもしれない。

世界的に見てレベルの平均が10~20の間なので威力に関しても符合する所がある。

なら俺の血を使えばさらに強力な飛び道具が作り出せる事になるので、それに関しては帰ってから実験するのが良いだろう。

もしこの仮説が正しくてこの国に俺の血を残す様な事になれば俺自身だけでなく周囲に居るアズサやアケミにユウナまで危険にさらす事になる。

試すにしても場所を選んで行う必要があるだろう。


そして弾を調べ終わり収納したタイミングを見計らってアズサが声を掛けて来た。

その横にはオメガもいるので既に回収は終えた様だ。


「ハルヤ、そろそろ出発しようって言ってるよ。」

「ああ、そうだな。」


俺は車へと向かい後部座席に乗り込むと近くにあるという町へと向かって行った。

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