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モブ死す

 「ウネちゃん聖剣出してあげて」


 「はい、マスター」



 異世界転生にはアイテムボックス的な物が備わっているのがセオリーなのだけども、残念なことに俺にはそんな能力はなかったのだが、ウネちゃんの一部と融合してから訓練していくうちに、少しだけウネちゃんの能力が使えるようになっていったのだ。

 なので俺にも異空間収納とも言うべきものが使えるのだが、荷物は殆どウネちゃんが預かりたがるので、別に持ちたい拘りもないので渡している。

 なんか従者の矜持らしい。

 勇者高木ピーが王女を孕ませてパーティーを離脱した際に、忘れていった聖剣もお風呂に入るときにウネちゃんに渡したままだった。



 「おおぉぉ久しぶりだぜ俺の聖剣ペランチャル…うん?こんなに軽かったっけ?」



 そう言えば聖剣折れてたんだったな。

 


 「そ、そりゃお前が鍛えて強くなったかだろ!腕とかムキムキだし」



 とても鞘の中の聖剣が折れて刀身が無いとは言えないな。



 「おっ分かるか?毎日腕立て100回してるからな」


 「……は、ははっそりゃスゲ~な……」



 俺とウネちゃんが奈落の大穴に入って、数多の魔物やでっかいドラゴンと死闘を繰り広げていた7年の間こいつは筋トレしてたのか。



 「久しぶりの再会に花を咲かすのも結構じゃが淫魔の勇者モブよ、そろそろあれを妾に見せてはくれまいか」


 「あれ?」


 「魔王の魔石じゃ」


 「魔王の魔石って言うのは最下層で真っ黒でとてつもない大きなドラゴンが守っていた魔石のことか?だとしたらあのドラゴンが魔王なのか?」


 「魔王の魔石はそれであっておるが、そのドラゴンは魔王に比類する強さを持っておるが魔王ではない。魔王は約500年前にそなたらと同じ異世界の勇者によって討伐されたと言い伝えられておる。その後魔王を倒してこの世界の危機が去ったと思われたが、魔王の魔石から無限に涌き出る魔素が地脈を通じて、世界中の至るところでダンジョンを形成するようになり、そこから魔物が涌き出るようになったのじゃ。その時に一番最初に生まれた魔物が覇竜バハムート、あの黒い凶悪なドラゴンと言われておる。」

 


 そんな話初めて聞いた。

 召喚された当初は腫れ物扱いだったからな、誰も教えてはくれなかった。

 アリシア王女がのじゃ姫だったのも初めて知った。

 こちらはどうでも良いか…


 「まぁ何せ我が国の建国以前の話じゃからな、信憑性に欠ける話じゃったが本当に実在していたとはな」



 は?お前らは魔王の脅威に晒されていたから俺らを召喚したんじゃないのか?

 まぁ旅をしていて何となく違う気はしてたけども…

 人の生活圏と魔物の生息圏は住み分けられていたし、散発的に魔物の犠牲になる人はいたが、魔物たちが種族を越えて纏まって侵略するような事も見受けられなかったし、何より魔物の持つ魔石はこの世界の貴重なエネルギー源となっているのだから、魔王の魔石を排除してしまって魔物が産まれなくなったらそれこそ大変なことになるのは目に見えている。

 こいつらはそれが狙いなのかもしれないが、何せよ俺が元の世界に変えるには魔王の魔石が必要らしいのだから、この世界の住人には悪いが自分の事を最優先させてもらう。



 「ほら、早く魔石を確認させておくれ」


 「その前に帰還の方法を教えてもらおうか」


 「あぁ分かっておる、じゃがその前に魔王の魔石を確認させておくれ、勇者モブを信じてないわけではないのじゃが、奈落の大穴の攻略は建国以来誰もなし得なかった偉業なのじゃから国としても慎重になってしまうのじゃ、理解してくれ」



 中途半端に下手に出てこられるとやりづらいな、もっと高圧的な方が対処しやすかったが一筋縄ではいかないか



 「ウネちゃん出してあげて」


 「宜しいのですかマスター?」


 「うん、いいよ」


 「了解いたしました」



 何処からともなくウネちゃんがバランスボール大の大きな魔石を取り出して、近くに控える兵士に渡す。



 「しかと受けっとった、今から奥で確認作業に取りかかる故に、我らはその間に勇者モブ達の慰労も兼ねて食事にしようではないか、ところでそちらのウネとやらは何処から聖剣や魔石を出してきたのじゃ?」


 「私は収納スキルを持っていますので、用量に制限はありませんし、時間も停止しておりますので食材なども運搬可能ですし、素材同士の融解や結合、造形等も自由に加工できたりします。」


 「す、凄いなそれは、そんなスキル聞いたことも無いぞ、王家にもマジックバックと言われるものが有るが、少し物が多く運べるだけでそこまで有能なのは無いぞ」



 改めて列挙すると確かにこれだけでも有能すぎるな、更に遠くまで索敵出来るしメチャメチャ強いしメチャクチャ可愛いし、ドSでペチャパイだけどそれを差し引いても凄すぎるぜ。



 「うちのウネちゃんは色々と凄いんです」


 「うむ…」



 そんな話をしているうちに、豪華な食事が運ばれてくる。

ワイバーンの頬肉のステーキにキリングベアーのタンシチュー、その他色々と創意工夫のされた料理や美味しそうなワインなどが並べられていく。



 「君はまだ若いからワインではなく、果実ジュースの方がいいだろう」



 高木ピーがいつの間にかウネちゃんの隣に座って、ワインと果実ジュースを交換している。

 ウネちゃんは今は銀髪美少女の姿を呈しているが、元の姿は触手なのでどんな強い酒でも問題ない、もっと言えばどんな毒物でも体内で取り込めて分解できるが、ここにいる皆がウネちゃんが俺の淫魔召喚で召喚された触手だとは気付いてないので、敢えてそれを教える事もないだろう。

 つーか高木ピーお前アリシア王女の旦那だろうが、王女の隣に座れよ!



 「…お気遣い有り難うございます」



 俺の前にも豪勢な料理とワインが並べられる。

 俺もこの世界に連れてこられた当初は17才の学生でお酒なんか飲めなかったけど、7年も経てば立派に一日の終わりにエールがないと物足りないような体になってしまった。

 このワインは剣豪が開発したらしい。

 他にも今日の料理は全て剣豪が作り出してこの異世界に広めたらしい。

 その他に色々内政チートしすぎて暗殺されるなんて、あいつも不憫だな。

 今となっては顔も思い出せないが…



 「さて、料理も行き渡ったことであるし、淫魔の勇者殿が王家の大願を果たしてくれた事を祝して乾杯といこうではないか、皆の者ご起立願いたい。」



 上座の王女とその王女と誰かの子供が立ち上がり、それに続いて聖女、拳聖、勇者高木ピーが立ち上がる。

 猫にされた賢者は椅子の上でもう既にミルクを飲んでいる。


 7年前にこの国に無理やり連れてこられた者が皆こうして集まった。

 一人は料理だけで、もう一人は猫だけども…



 「ではこれからの王国のますますの発展と、お主らの活躍に乾杯!」


 「「乾杯~!」」



 うん、美味いな、やっぱそこら辺の酒場で飲むエールとは違うな。

 中々剣豪良い仕事したな、死んじゃったけど…

 って飲んでいるのは俺とウネちゃんだけ?



 「どうじゃ美味いじゃろ」


 「…あぁ」


 「お主らの同郷の剣豪は死んでしまったが色んな物を残しよってな、今まで食べたことのない料理やお菓子、トイレでおしりを洗う魔道具や髪を乾かす魔道具、街全体の治水なども発案しておったな、極めつけはこの国の法律まで発案しようとしとったのじゃ」


 「……」


 「そうじゃそうじゃ、後あやつが残したのはこの絶品のワインと」


 「………ケツァッ!?」


 「何やらカエルから抽出した最強の毒じゃ、どうじゃ美味いか?」


 「マッマスター!?」


 「おっと、君はここで大人しくしとくんだな、そうすれば後で可愛がってあげるからな」


 「フググァァァ!!」


 「マスタァァ―!離せ!マスターが死んじゃう!!」


 「無理だよ、剣豪も言ってたけどモブが飲んだ毒は、俺らの世界でも生物上で一番強い毒性を持つらしいからね、まぁ剣豪もその毒を盛られて死んだんだけどね。

 っていうか君、さっき俺に舐めた口聞いてたけど、このあとじっくり反省会だよ~」


 「あっあっマ…マス…マスター……」


 「   」


 「脈も息も無し…確かに死んでるのを確認しました。モブ先輩死に顔もやっぱり生理的に無理です」


 「イヤァァァァァァァァァァ!!」

 


気が向いたらブクマ等お願いします|д゜)ノ

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