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寝トラレ

 

 「どうかしたモブ君?」


 「い、いや何でもない、」



 いきなり誘拐まがいに拉致しておいて、魔王を倒せと無茶振りしてきて、勇者達が離脱後は何の支援も無しだったのだ。

 もしかすると忘れられていたかもしれない、いや大いにあり得るだろう、そんな奴らがここへきて手のひら返して歓迎すると言ってきても、手放しで喜べるほど俺は純真無垢ではなくなっている。

 この長く辛い旅路で得た有り難い教訓だ。

 それでも未だに騙される方が多いがしっかり者のウネちゃんがいれば、大概の危険は対処できる。

 恐らくコイツらも何らかの意図があって出迎えにに来たのだろうが、こちらも地球へと帰る方法を聞き出すために邪険にもできない。

 今は大人しく従っておくか…


 それから用意してあった馬車に乗り勇者に睨まれながら、聖女には布教と称したねずみ講の成果と今加入するとどんな特典が付くだのという話を延々と聞かされながら、一時間ほど揺られながら目的地に着いた。



 「……確かここは村があった所だよな」



 二年前に奈落の大穴に入る前に最後に寄った村だと思うが、王国軍の兵士以外見当たらない。

 建物も以前は木造の民家が立ち並んでいたのが、中央の村長宅だった大きな屋敷を除いて全て撤去されていて、代わりに王国軍のマークの入ったテントがいくつも並んでいた。



 「……そうね、以前は村があったけど立ち退いてもらったのよ。そんなことよりこの屋敷にはお風呂があるから、それで旅の汗を流してその後に夕食にしましょう。アリシア第2王女もいらっしゃるから服もそんな原始人みたいな服ではダメだから用意させるからちゃんと着替えてね、髪もボサボサだけど時間がないからそれはまぁいいわ、女湯もあるからそちらのお嬢さんも入って着替えてね、別にモブ君と一緒に入っても構わないわよ」


 「だってさ、どうするウネちゃ「嫌です!」ん…」


 「もしかしたら風呂場で俺の貞操が襲われ「だまれです!!」……ることはないか」


 「マスターの貞操なんかもうサキとの鬼畜変態プレイで失われています。あんな場所であんな姿勢であんな事をしておいて貞操が失われていないとするならば、マスターの貞操は何者にも奪うことはできませんので安心してください」


 「モブ君……あなたちゃんと奈落の大穴を制覇したのよね」


 「あ、当たり前だろ!ほ、ほらウネちゃんは思春期だから色々と妄想と妄想がこんがらがって有ること無いこと言っちゃってるんだよ!全く困ったちゃんだな~あはは~」


 「……お嬢さん、ウネちゃんと言ったかしら、モブ君はそのサキって子とどんな姿勢でいたのかな?」


 「はい、マスターとサキはマスターのいた世界の言葉で『人』と言う字に似た姿勢で、まさにこの字の語源のように人と人が支えあっていました、只違うところは支えると言うよりは結合と言った方が「わわわっ!!」」


 「ウネちゃん!アイス!お風呂の後のアイスは格別!早くしないと溶けます!お風呂!!アイス!!溶けるよ!!」


 「アイス有るんですか?」


 「無いわよ」


 「牛乳!風呂上がりには牛乳!!牛乳なら有るだろ?」


 「あると思うけど…」


 「よし!行くぞウネちゃん!風呂上がりの牛乳の飲み方を教えてあげるから、どっちが早く上がってこられるか競争だレッツゴー!!」



 そう言って一目散に逃げるように旧村長宅に入り、用意されてあった着替えを受け取り、7年半ぶりのお風呂に飛び込んだ。

 

 あぶねぇ~まさか俺の召喚獣の一人である巨乳サキュバス姐さんことサキとのあの野外訓練を目撃されていたとは…



 「ふぅ~しかしやっぱり風呂は命の洗濯って誰かが言ってたけど、本当にその通りだなぁ~」



 この後、王女等と会食してどうにか帰還方法を聞き出さないとな。



 『マスター今何をされていますか?』



 体を洗っている最中にウネ通信が届いた。



 『何って、体を洗っている所だけど…』


 『何処を洗っているのですか?』


 『え?胸だけど…』


 『乳首はもう洗いましたか?』


 『これ何の質問?絶対興味ないでしょ?』


 『はい、全く興味ありません』


 『……今、右乳首の先端にタオルが差し掛かりまーす、と思いましたがこのタオルは荒いので右乳首は手で優しく洗いまーす』


 『すいませんでしたマスター、おふざけが過ぎてしまいました。こんなにもマスターの入浴の解説が不快だとは…想像以上です。流石はMy Master』


 『全然誉めてないけど、で何?どうしたの?』


 『はい、入浴しながらこの村に異変がないか触手を伸ばして探索したところ、村の隅に以前寄ったときには何もなかった平地に大量の土が盛ってある場所が発見し、土の中を調べましたところ、土の下には大勢の人の遺体が埋葬されていました。遺体の殆どは鋭利な刃物の痕があり、遺体の腐敗程度からみて死後1、2ヶ月程度かと…』


 『ここの住民か…』


 『遺体の様子からみて間違いないかと…』


 『やっぱりクソだなアイツ等は』



 こうなってくるとやっぱり只の出迎えではないんだろう。

 その後は気持ちを整理させようと再び湯船に入るも、この怒りと嫌悪感は洗い流してはくれなかった。

 ムカムカした気持ちをどうにか沈めて風呂から上がると、俺の原始人と言われた服は何処かに持っていかれて、代わりに上質な生地だが変な魔方陣のような刺繍の入った貫頭衣が用意されていた。



 「ん!?何だこれ?何だが胸が締め付けられるような…」


 『マスターもう用意された服に着替えられましたか?』


 『あぁ今着替えたところだよ、何だか違和感が凄いけどね』


 『この服は主に魔法使いの奴隷や犯罪者等が着る服ですね、魔封じの刺繍が施してあります』



 奴隷や犯罪者の服なのか、上質な生地ではなかったみたい。



 『ほんとだ、俺の水魔法が発動しない…』


 『確か薄着の女子にこっそり水を掛けるために必死で会得した数少ない魔法ですよね…まぁ大して役にたってませんでしたし問題ありませんね』



 ぐぬぬ…確かにその通りだけど、それでも血の滲むような努力でやっと修得した魔法なのだ、それが使えないとなると……やはりあまり大した問題ではないな

 


 『でも、身体強化は使えるな』


 『体外に放出する魔法では無いからでしょう、マスター用心してください、十中八九彼らは味方ではありませんし、何か企んでいるようです』


 『そうだろうね、でも元の世界への帰還方法を聞き出さないとな』



 聖女に原始人の服と言われた魔物の皮を鞣して作った服は持っていかれたので、流石に真っ裸で会食するわけにもいかず、渋々魔封じの刺繍が編み込まれた貫頭衣を纏って会食の場に向かう。


 会食の場は四十畳程の広さの部屋に長さが十メートル程ありそうな豪華なテーブル、上座に腰かけるのは恐らくアリシア第2王女、7年前は可憐な金髪美少女だったが、胸の大きく空いたドレスを着こなしていて、見事に妖艶な美魔女に変貌を遂げていた。

 だが、俺の召還獣の一人でもあるアリシア王女と同じくらい妖艶なサキュバス姐さんことサキやドS美少女のウネちゃんで鍛えられた俺の自制心はそんなことでは揺るぎない。



 『マスター鼻の下が伸びてますが、何か厭らしい事を考えてませんか?』


 『いや、全くそんなことは考えていませんけど』



 全くウネちゃんは俺が美女を見れば反応すると勘違いして困ったものだ。

 王女と正対に用意されている席につくと、間もなく豪華な食事が運ばれてきた。



 「久しいのう淫魔士、いや淫魔の勇者モブよ。覚えておるか?妾はアリシア・ピー・トルメキアーノじゃ。隣に座っている勇者高木の妻でもあり、この国の第2王女でもある。此度は奈落の大穴の制覇まことに大義であった。

 細やかな食事を用意したので、旅の英気を養ってほしい所なのじゃが、その前に魔王のコアを妾に一目見せてはもらえないだろうか」



 ミドルネームがピーって何なんだよ。

 放送禁止用語か!クソ!ピーが気になって、王女の話が入ってこねぇ

 何が見たいって?俺のピーを見せればいいのか?



「オイッ!お前聞いてるのか!!」



 急に高木ピーが大声で怒鳴ってきた。



 「え!?」


 「ゴホンッ!まぁよい、そしてこちらが妾の息子のクリシュじゃ」



 そう言って勇者高木の反対隣に座る幼稚園児位の子供を紹介した。

 金髪で目がキリッとして彫りが深く鼻は欧米人のように高く、肌は東南アジア人のような褐色でって高木要素が一つもないな。

 アラブの美男子のような、そう王女の後ろに立っている護衛のような…ってそっくりだなオイ…



 「っていうかモブ、お前俺の聖剣返せよ!って何だよその可哀想な者を見るような目は」


 「いや、何でもない」



 勇者高木ネトラレたな…


気が向かなくてもブクマ等お願いします( ´_ゝ`)

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