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VS でっかいトカゲ

 東京ドーム位ありそうな広さのフロアに横たわって眠る真っ黒い巨大なドラゴン、その後ろにはとてつもなく大きい魔石が煌々と輝いている。



 「あれ?王達は帰還用の魔石は魔王の体内にあるって言っていたけど、ドラゴンの後ろにあるあれじゃないのか?」


 「申し訳ありませんマスター、ウネには解りかねます」



 因みに俺への憤りから擬人化した美少女ウネちゃんには『マスター』と呼ぶようにお願いしてある。

 『(あるじ)』じゃちょっと可愛くないもんね。

 本当はご主人様と呼ばせたかったのだが、お願いしようとした途端にかつて粉砕された骨盤が疼きだしたので止めといた。



 「何はともあれここまで来たら殺ることには変わりないか、ウネちゃん俺がB作戦を展開していくから隙を見てA作戦を決行してみて」


 「了解しました」



 B作戦とはウネちゃん特製強壮薬を俺の体内に流し込む事によって身体能力が何倍も強化され、それと同時にエリクサーを常時流し続けることによって、この旅で会得した俺の数少ないスキルの1つである『身体強化』との相乗効果が見込まれる上に、強壮薬の反動で起こる脳の超過による激痛や、肉体限界を大きく超えることによって引き起こされる体内の損傷などがエリクサーで緩和されて、更に多少の傷も治癒してくれることによって継戦能力が羽上がると言うバーサクモードの事なのだ。



 「はうっ!」



 唯一欠点と言えば常に粘液を注入し続けるので、ウネちゃんを体内に挿入しなければならないのだが、口や鼻から挿入すると呼吸が出来ないし、耳もきこえないと戦闘に支障をきたすので、必然と残る穴は限られてしまうのだ。

 まぁお尻からとなってしまうのだ。

 なので、異物感が半端ない。


 A作戦はゴブリン軍団を殲滅させた時と同じように、お尻から内臓をズタボロにすると言うウネちゃんお得意の作戦だ。

 敢えて技名を付けるとすればア○ルブレイクだな。

 まぁB作戦もある意味A作戦と云えなくもない。



 「行くぞトカゲ野郎!」


 ウネちゃんが擬人化を解き地中に潜る。

 向こうもこちらに気付き戦闘体勢に入るが、俺はもうヤツの足下にいる。

 先手必勝!脚の1本を貰った!



 「ぐっ硬い」



 身体能力×特製強壮薬×聖剣でも傷一つ付かないとは。

 だがこちらに注意が向けば後ろが疎かになるはず、その時がお前の最後だ。


 足下の俺を踏み潰さんと前足を降り下ろすも、横に飛んで何とか避ける。

 想像以上の俊敏さを兼ね備えている上にこの大きさ、まるで上からビルが落下してくるみたいだ。

 こうも重量が大きいと一撃でも喰らったらエリクサーの回復も間に合わずにペシャンコになって即死の可能性も高いな。



 「って言っても俺にはこれ以上の攻撃もないしな」



 と呟きつつひたすら片方の前足を目掛けてHit&Awayを小一時間繰り返すも、本当に傷一つ付かないとは、おれの剣技が拙いのもあるだろうが、一体どんな皮膚してるんだよ。


 一発でも貰ったら即死というギリギリの膠着状態が続いていたが、やがてそれも終わりを告げる。

 ドラゴンの前足にかすり傷を付ける前に、聖剣の耐久度が限界を向かえたのだ。



 「なっ!?マジか!折れちまったじゃねぇか!!」



 折れた聖剣を持って悲壮にくれる俺を見下ろして、凶悪な面のドラゴンが歪んだ口角を上げてほそく笑んだ次の瞬間、大きく状態を起こして前両足揃えて潰しにかかってきた。


 バーサクモードによって極限までに神経が研ぎ澄まされた故に、時間がゆっくり流れるも、迫り来る圧倒的な物量に防御することも、射程外に避けきる事も不可能と判断を下し、取るべき選択は…



 「おぉ~こえぇ~少しチビったわ!」



 指の股に辛うじて逃げ込むことに成功。

 奴は両前足に体重を乗せているため、後ろ足が伸び上がりお尻がフリーダム状態。



 「ウネちゃん!ア○ルブレイクだ!」



 幾多の触手が合わさり更に回旋が加わり、凶悪な形状となったドリルウネちゃんが渾身の力を振り絞ってドラゴンのお尻に襲いかかる。



 「やったか!」



 お尻の異変に気付き慌てて飛び上がり空中に退避するドラゴンだが、そのお尻にはしっかりと地上から伸びるウネちゃんが確認できた。

 今頃ヤツの内蔵はズタボロに違いない。


 と勝利を確信した瞬間、ドラゴンのお尻からウネちゃんが離れてしまう。

 もう殺ったのか?まだドラゴンは元気で空中を飛んでるけど…



 「マスターその技名は嫌だと何度も言いましたよね、串刺しにしますよ。」


 「わっ!」



 そろりと背後に擬人化したウネちゃんが表れる。



 「ウネちゃんどうしたんだ!刺さらなかったのか?」


 「…いえ刺さりましたが、肛門括約筋によって切られました」


 「何!?」



 くそっどうするか?今まで大概の敵はこれで葬ってきたからな、流石にウネちゃんを千切るほどの肛門括約筋なんか想定してなかったぞ。

 全くどこもかしこも硬すぎるだろ。

 後ろがダメなら…



 「マスター攻撃が来ます」


 「!?」



 予想外の攻撃に警戒してか、距離を取って口からこれまた大きな火球を放ってきた。



 「ぐわっ!」



 急いで横っ飛びで避けて直撃は免れるも、強烈な熱風と衝撃波で負傷するが即座にエリクサーで治癒されて何とかうごける状態にまで回復する。



 「グガャアアアアァァァァァ!!」



 ドラゴンがまだ動ける俺を見て苛立ったのか、大気をも震わす咆哮を放っている。

 そしてまた火球を放ってくるのか、ドラゴンの口に光が収束していく。



 「連続だと!?ふごっ!!」



 爆弾並の火力が3つ連続で襲い掛かってきたが、ウネちゃんが機転を効かして俺に骨盤粉砕並の蹴りをかまして緊急離脱するも、ドラゴンも待っていたかのように追撃の火球を放ってくる。



 「くそっ底無しかよ!ふぎっ!」



 追撃の火球をまたもウネちゃんが有難い機転を効かして、骨盤爆砕並みの蹴りで上方に蹴りあげた。若干火球を喰らうと変わらないダメージを負っているような気がしないでもないが、そこは指摘しないのがご主人様の矜持というやつだろう。

 何だか意識が遠退いていくようで思考が反れる。

 これ後2、3回ウネちゃんの蹴りを食らえば死ぬんじゃないのか。


 空高く蹴りあげられた俺に、また容赦なくドラゴンの火球が迫る。


 天井から数多に伸びたウネちゃんが、俺を捕まえては右へ左へ放り投げて火球を避けていく。

 立体機動かスパイダーマンみたいだな。



 「ウネちゃん!そのまま避けながらヤツに接近するよ」



 接近しても聖剣すら傷一つ付けることの出来ない外皮、離れれば遠距離からの圧倒的な火力攻撃、かといってこのまま逃げ続けてもじり貧なのは確か。

 一か八か覚悟を決めるしかない。


 

 「今だ!!ウネちゃん!!」



 ドラゴンの間近まで迫りヤツが大口を開けたと同時に、ウネちゃんが俺を力一杯ドラゴンの魔力が収束する口を目掛けて放り込んだ。

 間に合うか!?



 「ウネちゃん覆って!!」



 ウネちゃんは俺の体表からも出現させることが出来る。

 身を屈めて丸くなり、それを何本ものウネちゃんが覆うように出現し、迫り来る火球に備える。



 「ぐあぁぁぁぁあついぃぃぃぃ!!」




 一瞬で俺を覆っているウネちゃんが蒸発するも、即座にまたウネちゃんが生えて俺を覆うがまたすぐに蒸発してしまう。

 おれ自身もお尻エリクサーで回復はするものの、明らかに回復が追い付いていない。

 しかし、泣き言なんか言ってられない、失敗すれば間違いなく死ぬのだ。

 ウネちゃんも熱いだろうが頑張ってくれている。

 耐えろ俺の体!



 「よし!口の中に入れぐぁぁぁ!」



 口の中に進入した瞬間、下半身に激痛が走る。

 何となく想像がつくが見るのが恐いので、そのまま這って奥に進む。

 ドラゴンの咽頭の奥からまた魔力が集まって来るのがわかる。

 こんな距離で火球を食らえば間違いなく死ねる。



 「ウネちゃん!!ア○ルブレイク!!」


 「そんな技名知りません」



 ドラゴンの喉チンコで這いつくばる俺の背中からボロボロになって若干小さくなったウネちゃんが出現する。



 「…ウネちゃん早く…後で何でも言うこと聞くから…」


 「全く死にかけなのを良いことに我儘なマスターです」


 「ウネ…ちゃん…」


 「おいこのクソトカゲ、貴様は少しおいたが過ぎた。終焉に足音を聞きながら怯え、死の風が空いた窓からお前を常世に誘うだろう、お前には懺悔する事すらも烏滸がましい、精々生まれて来たことを後悔しながら…」



 長っ!何してんのこの子!ウネちゃんそっち系だったのか、あっヤバい意識が…



 「終焉の狂想曲アインソフ・ケラ・カンパネーラ



 意味不明な技名に改名された元ア○ルブレイクは、凄まじい勢いでウネちゃんの全身から伸びていく。

 やがてそれは脳を破壊し、内臓を切り刻み、魔石回路を切り離し、行き場を失った触手は目や口等の穴という穴から噴出する。

 流石に、ここまで破壊されて生存している生物はいないだろう。



 「うぅ…何とか倒せた…ぐぁっやっぱり足がない…くそっ…」



 口腔内に進入した時に噛み千切られたのだろう、大腿部より下の足が両足とも無かった。

 それに身体中が重度の熱傷で皮膚がケロイド状になっている。

 強壮薬のお陰で脳内麻薬がドパドパ出ているので、何とか意識が保っていられるが、お尻エリクサーを注入していたウネちゃんドッキングも焼ききれて焼失してしまった。

 何とか口から這い出て天井を仰ぐ。



 「ウネちゃん…エリクサーを…プリーズ…」



 俺の直ぐ側にウネちゃんが表れる。



 「マスター、エリクサーは全て使いきりました」



 「そ…そんな…マジか…死ぬのか…俺は…」



 「マスター……私の技名どうでしたか、素敵ですよね」



 あぁ素敵だったよ、特に強引な宛字っぷりが…ウネちゃんありが…と…う



 「………マスター聞いてますか?……ホントに世話の焼けるマスターです……」



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