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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
89/90

88.決戦④~超越覚醒~・エピローグ



「よっしゃ! またせたな、戦闘再開だぜ!」


 嬉しそうにザッパーが吠え、爆発的な瞬発力で地面を蹴り上げた。

 広場の地面が盛大に後方へ飛び散る、瞬間移動でもしたかのような速度でザッパーが俺に向かって走り寄ってきた。


 巨大な戦斧が鋭く振り下ろされ、俺は防戦一方の戦いを強いられてしまう。

 ザッパーは無限とも思える体力を有していて、いつまで経っても切れの良い攻撃を仕掛けてくる。

 一撃一撃が鋭くて重い、そして全ての攻撃が俺の急所を的確に狙ってきていた。



 ザッパーの攻撃をかわし続けながら広場中を逃げ回る。

 辺りの木々は盛大に燃え上がっていて森への逃げ道はなかった。

 重い戦斧の一撃を剣でいなしながらひたすら逃げ回る。

 反撃する暇は一切なく、紙一重で攻撃をかわすことしか出来なかった。


 必殺の攻撃をかわしながら俺は期待していた。

 そろそろ来ても良い頃なのだ。

 頭の上を戦斧が唸りを上げて通り過ぎていき、すぐに斜め上から振り下ろされる。

 ほほの肉がごっそりと削られ、血しぶきが撒き散らされる。

 体中いたるところに戦斧の攻撃により深い傷がつけられていた。


 

「おめえよくちょこまかと逃げまくれるな! だが逃げ回ってばかりじゃ勝てやしねえぜ!」


 攻撃を続けながらザッパーが話しかけてくる。


「臆病者の相手はもう飽きたぜ、そろそろ死ねや!」


 ザッパーから強い魔力が発せられる。

 奴は更に肉体を強化して俺にとどめを刺しに来たようだ。

 戦斧が空高く振り上げられ、今まで以上に鋭い一撃が俺の頭上に落ちてきた。


(やばい! かわせるか!?)


 唸りを上げて飛来する戦斧の攻撃に死の予感が脳裏にひらめく。

 一か八か横飛に飛んで必殺の一撃をかわすしか無い!。



 ズドンッッッッ!


 ピロリンッ!



 鼓膜が破れるほどの爆発音がとどろき、広場の地面が盛大にえぐれる。

 そしてスキル獲得のお知らせが脳裏に響く!


『スキル、『体捌き』が『見切り』に進化しました』



 地面を転がりながらもあまりの衝撃に目をつぶってしまい、完全にスキを作ってしまった。

 次の攻撃が襲ってくると思ったが、いつまで経っても来ない。

 恐る恐る目を開け、辺りを見渡してみるとザッパーは遠くに居て戦斧を地面に突き刺していた。

 そしてザッパーは驚きの表情をしてこちらを凝視している。

 ザッパーと俺との距離は二十メートル以上あり、すぐに攻撃してこれない。

 そのことを確認して、今しがた獲得したスキルを『心理の魔眼』で確認した。


『見切りは体捌きの上位スキルです。ほぼ全ての物理攻撃をかわすことができます』



(よしっ! これを待っていたんだ! これでザッパーに勝てる!)


 長剣を握りしめて起き上がる。

 俺はただ闇雲に逃げ回っていたわけではない、わざとぎりぎりでザッパーの攻撃を避け続け、さらなる回避スキルを獲得しようと賭けに出ていたのだ。

 そしてその賭けは見事に当たった。

 俺はいま一番欲しかった攻撃回避のスキルを手に入れることができた。


 今度は俺が攻撃する番だ!


 一気に地面を蹴り上げ、ザッパーに肉薄する。

 剣を上段から振り下ろし、いまだに固まっているザッパーに反撃を開始した。



 ガキンッッッ!


 俺の攻撃をザッパーが戦斧で受け止める、そしてすぐに鋭い一撃を俺の横腹めがけて入れてきた。

 そのスピードは先程の必殺の一撃と同等かそれ以上のスピードだ。

 しかし俺の体は陽炎かげろうのごとく揺らいで、戦斧の攻撃をやすやすとかわしてしまった。


 ザッパーの顔色が瞬時に変わる。

 自信を持って放った一撃が完全に空を切ってしまい、戸惑っているようにも見える。



 一合、二合と長剣と戦斧が打ち合い火花を散らす。

 ザッパーの攻撃はもはや俺には通用せず、虚しく空を切るばかりだ。

 俺は余裕を持って長剣を打ち込んでいく。

『唐竹割り』から『連続突き』、更には『一撃離脱』のスキルを駆使してザッパーを追い詰めていく。


 そしてそのときは訪れた。

 俺の脳裏にイシリス様の声でスキル獲得のお知らせが響き渡った。



 ピロリンッ!


『スキル、『剣技』が『剣人』に進化しました』


『スキル、『剣人』が『剣神』に進化しました』



 その瞬間、俺の剣技が二段階進化を果たして唸りを上げてザッパーの横腹を切り裂いた。

 ザッパーは何が起こっているかわからず目を見開いてこちらを凝視している。

 横腹から素早く剣を引き抜いて更に追い打ちをかける。

 返す刀でザッパーの脇の下からすっぱりと左腕を切り落とした。


「うおおお!? 腕が飛んじまった!」


 ザッパーの左腕が根本から切り落とされ、鮮血が吹き出す。


(勝負あったな……)


 地面の上でのたうち回っているザッパーを見ながら勝利を確信した。

 ザッパーの攻撃は俺には通用せず、攻撃の技量も同等以上になった。

 身体能力は始めから俺のほうが上なのだ、今まではスキルと経験の差で押されていたが、今の瞬間を持ってザッパーに劣るステータスは全て無くなった。

 後はとどめを刺すか降伏するように勧告するか、どちらにしても俺の勝ちは確定した。


「こぅぞおおう! 殺してやるぞぉぉぉ! 俺をなめるなぁぁぁ!」


 地面に突っ伏しているザッパーが呪詛を吐きながらこちらをにらむ。

 奴は魔力を開放して己の全能力を開放し始めた。

 黒い鎧が弾け飛び、ザッパーの体がどす黒く変色して筋肉がありえないくらいに盛り上がっていく。

  その様子はまるで風船が膨らんで今にも破裂しそうなくらいに危ういものだった。



『破壊の衝動』


 俺はザッパーが何を行っているか瞬時に推測できた。

 能力の全開放を行い一か八かの賭けに出たようだ。


 ザッパーの左腕の流血が止まり、徐々に再生が始まる。

 のそりと起き上がったザッパーの顔には、もはや理性はなく狂気に支配された獣のようになっていた。


「グルルルルゥゥ……」


 ザッパーは獣の唸り声を上げながら口からよだれを垂らしている。

 もはや人間とは言えない魔物に成り下がったザッパーは、戦斧を片手で振り上げ俺に襲いかかってきた。

 空気の壁を突き破る爆音を伴い、戦斧が上段から振り下ろされる。




(無駄なことを……)


 狂戦士バーサーカーとなったザッパーの一撃は確かに先程より数段早い。

 しかし今の俺には全く通用しない!



 ズドンッッッ!


 大爆発をともない広場の地面に穴が開く。

 しかしその場所には当然ながら俺はいなかった。


 ザッパーの真横に余裕を持って移動した俺は、長剣を深々と奴の脇腹に差し込んだ。


「グオオオオオオオッッッ!」


 火災で真っ赤に染まっている夜空にザッパーの咆哮が響き渡る。

 更に背後に回り込み、右腕も根本から切り飛ばした。



 戦斧を離さない右腕が回転しながら勢いよく宙に舞う。

 戦闘不能になったザッパーの背中をブーツの底で思い切り蹴り飛ばした。


 メリメリッと音がするほど靴底が背中にめり込み、ザッパーの巨体がボールのように跳ねながら広場を転がっていく。

 広場の端まで転がったザッパーはピクリとも動かずにその場に突っ伏した。



 俺は無言でザッパーに近づいていく。

 もはや生かしておいてもしかたがないだろう。

 魔物に成り下がったザッパーにとどめを刺すことにしようか。



 ゆっくりと歩いて近寄り、長剣を逆手に持ってザッパーの頭に切っ先を定める。

 勢いよく突き刺し、頭部を串刺しにする。

 長剣は頭蓋骨を貫通して脳みそを破壊し、勢いよく広場の地面まで貫通した。


 ブルリッとザッパーが震え、足をばたつかせる。

 しかしそれきり動かなくなり、悪名高き盗賊団『ケルベロス』の首領ダミアン・ザッパーは死亡した。





 長剣をゆっくりと引き抜いた俺は、いま一度一閃してザッパーの首を切り落とした。

 白目をむき出しにしたザッパーの首がころりと地面を転がった。



 ー・ー・ー・ー・ー



 




エピローグ



 ザッパーとの死闘から六日が経過していた。

 あれから盗賊たちを連行して王都へ戻り、無事にキッドさんたちとも再会することができた。

 今日はジルたち討伐隊が王都へ帰還する日だ。

 怪我人を多く抱える討伐隊は、ゆっくりとした足取りでの行軍だったので、思ったよりも遅い到着となったようだ。



 俺も大通りに出て討伐隊がやってくるのを出迎えることにした。

 討伐隊が壊滅状態で戻ってきたことを、出迎えた多くの王国民たちが驚いていたが、みごと盗賊団を壊滅したことが知れ渡ると熱狂的な歓迎を受けていた。


 馬上で胸を張り民衆に応えている騎士ジル・コールウェルは、晴れ晴れとした表情だ。

 付き従っている騎士フィリップや髭もじゃのサイモンさんも嬉しそうだ。

 そして『収納』持ちであるセシルさんが、元気に笑って手を振っているところを見て、俺も嬉しくなってしまった。


 民衆に混じって討伐隊の凱旋がいせんを見物していた俺を、ジルが目ざとく見つけ片手を上げて合図してくる。

 俺も片手を上げジルに応えた。

 大通りにはますます人が溢れかえり、またたく間にジルたちは見えなくなってしまう。



 今日から忙しくなる。

 まずは騎士団の詰め所に出頭しなくてはならない。

 ジルたちを交えて、事の顛末てんまつをお偉方の騎士たちに説明しなくてはいけないのだ。

 それから防具を新調しようとも思っている。

『カラム&ブライアン武装店』へ行って防具を壊してしまったことをブライアンさんに謝ろう。

 そして今度は強化魔法のかかった防具を売ってもらおうと思う。





「さて、詰め所に行く前にギルドにでも寄ってみようかな」


 独り言をつぶやいて空を見上げる。

 見上げる空はどこまでも青く晴れ渡っている、俺は清々しい気持ちで歩き始めるのだった。




                           第ニ章完


 ー備考ー


[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 クラス……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』『予測回避』『瀕死回復』『超人』『暗視』『俊足』『隠密』『剣神』『暗殺術』『馬操術』『防御』『見切り』『精密投擲せいみつとうてき』『突き』『連続突き』『唐竹割り』『一撃離脱』『受け流し』『激痛耐性』『グロテスク耐性』『毒耐性』『熱耐性』『麻痺無効』『勇敢ゆうかん』『平常心』『神の裁き』 魔法……『ヒール』『ハイ・ヒール』『オール・ヒール』『クリーン』 加護……『女神イシリスの加護』]


・NEWスキル……『見切り』『剣神』


『剣神』…… 剣術を極めた者に発現するスキル。人間で獲得した者はユウヤが初めてである。

第二章完結しました。読んでいただいてありがとうございました。

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