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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
88/90

87.決戦③~狂戦士~

 無事キッドたちを救出したユウヤは、ザッパーを倒すべく一人伐採所に残るのだった。




 余裕の笑みを浮かべているザッパーを『心理の魔眼』で覗き視た。



[名前……ダミアン・ザッパー 種族……ヒューマン 職業……盗賊  タイプ……バーサーカー スキル……『身体能力強化』『危険回避』『超回復』『斧術の極み』『押切』『頑強』『暴力』『破壊の衝動』 称号……『悪行を極めし者』]



 ズラリと凶悪そうなスキルが並んでいる。

 犯罪奴隷のときにはなかったスキルばかりだ。

 やはり奴隷を制御する首輪はスキルを抑制する効果があったのだろう。


『超回復』とはなんだろう。

 さらに詳しく視ていく。



『超回復は常に発動する回復スキルです。あらゆる怪我や体力の低下を緩やかに回復し続けます』



 イシリス様の声で『超回復』の説明が頭に聞こえてきた。

 俺の『全能回復』の下位互換だろうか、それでも十二分にチートスキルなのは明白だった。


 更に気になるスキルがあるので続けて視ていく。

 ザッパーは俺が固まって動かないのを気にする様子はなく、薄笑いを浮かべてこちらを見ていた。


『身体能力強化は身体能力向上の派生スキルです。体に魔力を流し、ありえ無いほどの筋力と瞬発力を高めます』


『斧術の極みは斧術を極め始めた人物に発現するスキルです』


『押切は武器を相手に押し当て、力で切り崩すスキルです』


『破壊の衝動は怒りに任せて能力を全開放するスキルです。多大な生命力と引き換えにありえないほどの腕力を得ることが出来ます。効果が切れると低確率で絶命します』



 厄介なスキルを持っているな。

 俺の『超人』スキルまでではないにしても肉体強化をするスキル持ちのようだな。

 そしてザッパーは斧を得意とするようだ。

 あの巨大な戦斧でスキルを使われたら、こちらもスキルで対抗しなければ押し負けてしまうだろう。

 さらに最後に視たスキルはかなり危険な感じがする。

『破壊の衝動』には気をつけておかないといけないだろう。

 厄介な相手と今から戦わなくてはいけないことがわかって気持ちが萎えてしまいそうになった。


「どうだ? 俺のスキルはなかなかのものだろう?」


 俺に向かってザッパーが笑いかけた。


(なっ、何で俺がスキルを確認しているのがわかったんだ!)


 ザッパーには魔眼のスキルは発現していないはずだ。

 それなのに俺がスキルを覗いていることを当てられてしまって驚きの表情をしてしまった。


「やはりお前は俺のスキルが見えるみたいだな、昔お前のようにじっと睨んで来る魔眼持ちを殺したことがあるぜ」


 俺の表情を敏感に読み取ったのか、ザッパーが鋭い指摘をする。


「な、何を言っているかわからないな……、でたらめを言って惑わそうとしても俺には効かないぞ……」


 苦しい言い訳をして剣を構え直す。


「まあどうでもいいがな、どうせお前はここで死ぬんだからな!」


 ザッパーが言い終えると同時に素早く立ち上がり攻撃を仕掛けてきた。

 あまりの突然な行動に一瞬固まってしまい、迎撃が遅れてしまった。


 巨大な戦斧が上段から唸りを上げて振り下ろされる。

 かろうじて長剣でいなして慌てて後ろに下がった。


「なかなかやるじゃねえか! 今の打ち込みで普通は終わりなんだがな!」


 後ろに下がった俺を追うように更に前に出てきたザッパーは、戦斧を振り回しながら笑っている。

 振り回された戦斧が的確に俺の急所ばかりを狙ってくる。


 兜をかすめて行く戦斧、かわしたと思ったら軌道が変わって肩口に叩き込まれる。

 全ての攻撃を紙一重でかわしながら逃げ惑う。

 防戦一方になってしまい事務所の壁まで追い詰められてしまった。



 盛大に燃え上がる伐採所の事務所、炎が立ち昇る外壁に勢い余って突っ込んでしまった。

 前方には巨大な戦斧を振り回して退路を断つザッパーがいる。

 逃げるに逃げられず、俺の背中は炎に焦がされて胸当てが燃え始めて嫌な匂いが漂った。


「だいぶ我慢強いやつだな! 背中が燃えていても顔色一つ変えねえなんて大したもんだぜ!」


 戦斧を構えてこちらをうかがっているザッパーは本気で感心しているようだ。

『熱耐性』がなければ大やけどをしてしまうところだが、今の俺にはこれぐらいの熱は少々暑い程度の感覚しかなかった。



 ザッパーの攻撃が止まったのは一瞬だけだった。

 余裕の笑みを浮かべたまま再び巨大な戦斧が俺めがけて振り下ろされる。

 脳天を割られる前にかろうじて戦斧をかわして横にずれる。

 戦斧はそのまま燃え盛る外壁を打ち壊して地面に突き刺さった。


 火の粉が盛大に飛び散り、火のついた木っ端が周囲に飛び散った。

 ザッパーの体制が整う前に素早く飛び離れた。


(今度はこちらから仕掛けてやるか!)


 俺は勢いよく長剣を上段から振り下ろした。

 ザッパーが余裕を持って長剣を避ける。

 やつは『危険回避』のスキル持ちなので単調な攻撃は簡単にかわされてしまう。


 しかし若干のスキを作ることが出来て一気に壁から離れることができた。

 広場の中央に戻ってきた俺は、俺とザッパーの凄まじい戦闘を見て呆気に取られている盗賊たちを無視してザッパーの動きに集中した。

 本当は盗賊たちを先に倒したほうが良いのだが、そんな余裕は今の俺にはない。

 少しでもザッパーから目を離せば、一気に距離を詰められて血祭りにあげられてしまうのは明白だった。




 戦いは再び広場中央に戻ってきた。

 ザッパーはまだまだ余裕を持って俺と対峙しているように見える。

 俺の方は先程から『超人』スキルを精一杯展開して肉体を強化している。

 それにもかかわらず防戦一方なのは一体どういうことなのだろうか。



 俺の周りを盗賊共が取り囲み、短剣や手斧を構えて今にも攻撃してきそうだ。

 ザッパーもゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくるのが見える。

 一対一でも苦戦をしているのに多対一の戦いになってしまい更にピンチに陥ってしまった。



「お前ら邪魔だぞ! 何しゃしゃり出てんだよ!」


 ザッパーが笑いながら戦斧を横薙ぎに一閃した。

 ザッパーの進路上にいた盗賊たちの胴体が上下に別れて宙を舞う。

 その肉片が舞う中をごきげんな表情のままに歩いてくるザッパーがいた。



 俺は一瞬何が起こったのか理解が出来なかった。

 いくら極悪非道な盗賊の首領でも部下を殺してしまうなんて考えられない。

 やつの頭の中は一体どうなっているんだ……。

 得体のしれない恐怖が心の底から湧き上がってくる。

『恐怖耐性』が働いているのでなんとか踏みとどまるが、普通の人間なら心が折れてしまってもおかしくない。

 それほどにザッパーの行動は常軌を逸していた。




 盗賊たちが慌てて俺から離れていく。


「お前、かなりやるじゃねえか、俺様の攻撃をここまでかわしたやつはお前が初めてだぜ」


 ザッパーは上機嫌に語りだした。


「少しは本気を出さなきゃいけねえようだな、お前もだいぶ体を強化しているみたいだから俺も強化するか!」


 ザッパーは戦斧を地面に突き刺すと魔力を体に循環し始めた。

 俺には攻撃的な魔力がザッパーの体から放出されているのがはっきりと視えた。

 推測だが『身体能力強化』のスキルで体を強化しているのだろう。

 ザッパーの筋肉が一回り以上大きくなって真っ黒な鎧が今にもはちきれそうになる。


「よっしゃ! またせたな、戦闘再開だぜ!」





 再び戦斧を握り直したザッパーが爆発的な瞬発力で地面を蹴り上げた。

 風切り音を響かせて巨大な戦斧が振り下ろされた。


 気を抜けない戦いが再び始まろうとしていた。





 ー備考ー


『悪行を極めし者』…… ありとあらゆる悪事を行った外道に発現する称号。


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