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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
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85.決戦①~間に合った!~

 馬を走らせ、なんとか伐採所に到着したユウヤは、伐採所を取り囲むザッパーたちを発見した。




「ユウヤ逃げるんだ、こいつらはお前の手に負えるような奴らではない!」


 伐採所の二階の窓からキッドさんが身を乗り出して絶叫した。

 キッドさんは絶望の表情をしていて、かなり追い詰められていることがわかる。

 空には火の粉が舞い、辺りの木々は盛大に燃え上がっている。

 いつ事務所に燃え移ってもおかしくない状況なので、キッドさんたちを早く救出しなければならない。

 事務所の扉は壊され、盗賊たちはすでに内部に侵入している。

 キッドさんたちはおそらく二階の一室に立てこもって、なんとか持ちこたえていたのだろう。


(あと十分遅かったら駄目だったかもしれないな、ここからは時間との勝負だ。一気に蹴散らしてキッドさんたちを救出しなければ!)


 俺はきな臭い空気を肺いっぱいに吸い込んでから『超人』スキルを全開にした。

 魔力が体中にみなぎり筋力が極限までアップしていった。


「ザッパー! 西の山中にある『ケルベロス』のアジトは俺が叩き潰してきたぞ! お前の弟も俺が殺害した! お前も地獄へ送ってやるから覚悟しろ!」


 大声を張り上げ、盗賊たちの注意を引きつける。

 俺の声に反応して事務所を破壊していた盗賊たちの手が止まり、こちらを全員が振り返った。



「ほお、あいつをお前が仕留めたというのか? 面白い冗談じゃねえか、俺の手下は百人からいるんだぞ、もし本当ならお前は勇者かなんかだろ!」


 口角を釣り上げてザッパーが笑った。

 明らかに俺の言ったことを信じていない態度だ。


「お前ら! 勇者様の相手をして差し上げろ! だが簡単に殺すんじゃねえぞ、捕まえて生皮を剥いてやれ! 『ケルベロス』に逆らったことを後悔させろ!」


 ザッパーの号令で一斉に盗賊たちが襲いかかってきた。

 俺も長剣を構えて前に突撃を開始する。

 盗賊たちはまさか俺が突撃してくるとは思っても見なかったようで、攻撃のタイミングを完全に逃したようだ。

 隙だらけの盗賊たちをすり抜けざまに切り捨てていく。

 数はそこそこ多いがしょせんは盗賊なので俺の敵ではない。

 俺の攻撃をまともに受け止められる盗賊はおらず、胴体を上下に切り分けられた死体がどんどん伐採所の広場に転がっていった。



 盗賊を十人ばかり切り捨てた辺りで事務所の内部に飛び込んだ。

 そこは俺が初めて伐採所を訪れた際、クリスティーナさんに面接してもらった部屋だった。

 木の机や座り心地の良いソファーが置いてあった俺のお気に入りの場所だったのだが、今は見る影もなく荒らされていて見るに堪えない。

 室内にいた三人の盗賊どもを問答無用で切り刻んだ。



 建物の外がかなり騒がしいが室内に突入してくる盗賊たちはいない。

 扉の影に隠れて外を覗くとザッパーが俺に倒され大被害を受けた部下たちの再編成をしているところだった。

 若干の時間稼ぎが出来て次の行動を素早く決める。

 今はキッドさんたちと合流することが先決と判断して二階を制圧することを決断した。


 素早く階段に駆け寄り、一段飛ばしに大股で登っていく。

 すると案の定踊り場に盗賊が待ち構えていて襲いかかってきた。

 相手は必殺の一撃を俺にかましたと思っているみたいだが、振り下ろされた剣先は驚くほど遅かった。

 簡単に攻撃をかいくぐって階下に突き落とす。

 盗賊は派手に転がりながら一階に落ち、首の骨を折って絶命した。

 その様子を確認した俺は再び階段を登っていった。




 二階の通路に上がりきった俺は、通路の先を素早く見た。

 そこには大勢の盗賊たちが興奮した様子で武器を構えていた。

 盗賊たちは階下の騒ぎに当然気づいていて、俺が上がってくるのを待ち構えていたようだ。

 五名の盗賊たちが我先に飛びかかってくる。


(逃げ場のない狭い通路を駆け寄って来てもただの的だろうに……)


 盗賊たちの計画性のない攻撃に呆れてしまう。

 俺は素早く突きを繰り出して盗賊たちを串刺しにしていった。

 目玉、喉、心臓。

 人はこの急所のどこかを突けばかなりの確率で絶命する。

 砦で人を大量に殺害してきたので、どこを破壊すれば効率よく人が死ぬかわかるようになっていた。


 事務所の二階通路での戦闘はあっけなく終わってしまった。

 床には盗賊共のむくろが折り重なっている。

 その死体を踏みつけながらキッドさんたちが立てこもっている部屋の前に移動した。




「キッドさん、事務所内の盗賊共は排除しましたよ! 今のうちに脱出しましょう!」


 扉に向かって声をかける。

 耳を澄ますと部屋の中で話し合う声が聞こえてきた。


「キッドさん聞こえますか! 建物に火が燃え移りそうなんです、早く開けてください!」


 なかなか扉を開けないので、扉を叩きながら再び話しかけた。

 話しかけている間にも事務所の壁からは微かに煙が立ち上り始めていた。

 一刻も早く脱出しなければ丸焼けになってしまう!



「ユウヤなのか!? どうやってここまで入ってこれたんだ!? いくらお前が強くても簡単に突破できる数ではないはずだ!」


 扉の内側から聞こえてくるキッドさんの声は驚き戸惑っているようだ。

 確かに事務所を取り囲んでいる盗賊は一人で倒せる人数ではない、俺が伐採所を去ってから更に強くなったことをキッドさんは当然知らないのだ。

 キッドさんは本当に俺だけが扉の向こうにいるのか疑っているようだ。


「色々あってあれから俺、更に強くなったんです! もう時間がありません、俺を信じてください!」


 ありったけの声を張り上げてキッドさんに話しかける。

 俺の声に反応して扉の前でガタガタと音がし始めた。

 扉が開き、片手で長剣を構えたキッドさんが姿を見せた。

 キッドさんの顔は血の気が失せていて今にも倒れそうだ。


「キッドさん! その傷どうしたんですか!?」


 キッドさんの姿を見た途端、俺は大きな声を上げてしまった。

 血溜まりに立つキッドさんの脇腹は、大きくえぐれていて血に染まっていた。

 左腕もほとんどちぎれているようだ。

 その傍らにはクリスティーナさんがキッドさんを支えるように寄り添っていた。



「ユウヤさん助けて! お父さん死んじゃうわ!」


 ジェシカちゃんが泣きながら俺にすがりついてくる。

 キッドさんは俺を見た途端、ぐらりとふらついてしまった。


「お父さん!」


 ジェシカちゃんが叫ぶ。

 俺は素早く動いてキッドさんが床に倒れる前に受け止めた。


「不意打ちで盗賊共にやられてしまったよ。みっともないところを見せてしまったな……」


 キッドさんは顔面蒼白で体温も低い、かなり危ない状況に俺は唖然としてしまった。


「早くこれを飲んでください!」


 ポーションを取り出してキッドさんに飲ませる。

 更に傷口にポーションを大量にかけていった。


「ユウヤ……、フレデリコとアザルは殺されてしまった……。ヘザーも死にそうなんだ、頼むから彼女を見てやってくれないか……」


 若干顔色が良くなったキッドさんが、ベッドの上に寝かされたヘザーさんを指差した。


「わかりました」


 血まみれのベッドの上に寝かされているヘザーさんに近づいていく。

 ヘザーさんの顔色はキッドさんよりも更に悪く、ほとんど白くなっていた。

 胸のあたりがざっくりと切り裂かれていて、血液の大半が流れ出してしまったようだ。


 俺はヘザーさんの手を取って脈を確かめた。

 辛うじて脈は打っているが、止血も満足にされていないヘザーさんはいつ死んでもおかしくない状況だった。

 ヘザーさんの口にポーションを含ませても飲む気配はない、傷口にかけてみたが何の反応も示さなかった。


(こんな時、ヒールを唱えられればどうにかなったかもしれないのに……)


 べソンの顔が一瞬脳裏に浮かび上がった。

 僧侶が覚える回復系の呪文、それ以外でヘザーさんを救うことはできそうにない。

 回復呪文を使えないことを悔しく思いながら、ヘザーさんの冷たくなった手を強く握った。

 心臓の鼓動が途切れ、ヘザーさんが今息を引き取ろうとしている。


「へざーさん……」


 ジェシカちゃんが涙を流しながらヘザーさんに抱きついた。



 ピロリンッ!


『魔法、『ヒール』を獲得しました』


『魔法、『ハイ・ヒール』を獲得しました』


『魔法、『オール・ヒール』を獲得しました』





 一気に回復呪文が俺の頭の中に流れ込んでくる。

 女神様の慈悲に感謝をしつつ、俺は回復呪文を唱えるのだった。





 ー備考ー


[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 クラス……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』『予測回避』『瀕死回復』『超人』『暗視』『俊足』『隠密』『剣技』『暗殺術』『馬操術』『防御』『体捌たいさばき』『精密投擲せいみつとうてき』『突き』『連続突き』『唐竹割り』『一撃離脱』『受け流し』『激痛耐性』『グロテスク耐性』『毒耐性』『熱耐性』『麻痺無効』『勇敢ゆうかん』『平常心』『神の裁き』 魔法……『ヒール』『ハイ・ヒール』『オール・ヒール』『クリーン』 加護……『女神イシリスの加護』]


・NEWスキル……『ヒール』『ハイ・ヒール』『オール・ヒール』


『ヒール』…… 僧侶職が得意とする回復系呪文。上位呪文に『ハイ・ヒール』更に上に『オール・ヒール』がある。

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