表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
78/90

77.吸引力が違う

 間一髪、ジルとセシルを暴漢から救出したユウヤは、仲間を開放するため牢屋へ向かうのだった。




「ライアス居るか?」


「ユウヤか! ジル様たちはどうした!」


「大丈夫だ、無事救出に成功したぞ。今から錠前を叩き切るから少し離れていてくれ」


「わかった!」


 ライアスの嬉しそうな声が牢屋の中から聞こえてきた。

 ライアスもジルやセシルさんの安全が確保されたことを嬉しがっているようだ。



 精神を統一して長剣を上段に構える。

 扉の鍵部分を狙って思い切りよく長剣を振り下ろした。


 ガキンッと大きな金属音が牢獄に響き渡り、扉の鍵が真っ二つに切り裂かれた。


「あの裏切り者! 見つけ次第、叩っ切ってやる!」


「全くですね! 彼には裁きを受けてもらいましょう!」


 扉が開き、中からライアスやベソンが短剣を構えて出て来る。

 二人とも相当サギーのことを怒っているようだ。




「よし、次はサイモンさんだ」


 きびすを返して剣を構え、一気に振り下ろす。

 またしても金属音が通路に響き渡って牢屋の鍵が切り落ちた。

 素早く扉を開けて中へ入る。

 サイモンさんが弱々しく頭を持ち上げてこちらを見てきた。


「おお、夢でも見ているんじゃなかろうな……」


「サイモンさん、助けに来ましたよ。ここを早く出ましょう」


 俺はサイモンさんを抱き起こしポーションをゆっくりと飲ませた。

 徐々にサイモンさんの顔に生気が蘇ってきて目に力が入ってくる。


「すまない、もう大丈夫だ」


 俺を力強く押しのけ、サイモンさんは立ち上がった。


「鎖を断ち切ります、動かないでください」


 長剣を振るいサイモンさんを繋いでいる鎖を断ち切る。

 サイモンさんは手首を撫ぜた後、おもむろに俺の手を握った。


「ありがとうよ、助けてもらうのもこれで何度目か忘れてしまったぞ」


 ニヤリと笑ったサイモンさんがゆっくりと牢屋から出る。


「ユウヤ、今の音で盗賊たちがやってくるかもしれねえぞ、早いとこ離れたほうがいい」


 通路で警戒していたライアスが心配そうに言ってくる。


「わかってるよ、今ジル様たちを連れて来る。ここで待っていてくれ」




 牢獄に囚われていた仲間たちは無事に救出できた。

 これから脱出をするわけだが、一筋縄ではいかないだろう。

 俺は盗賊たちと一戦交える覚悟を決めて、ジルたちのもとへ戻っていくのだった。



 ー・ー・ー・ー・ー




 螺旋階段を慎重に登り、地上に出て来た。

 俺の後ろにはジルやセシルさんが不安そうな顔をしてついてきている。

 その後ろをライアスやベソン、サイモンさんが固め、不意の攻撃に備えていた。


 盗賊たちの寝室がある階を慎重に進んでいく。

 今回は『暗視』スキルを持っていない仲間たちのために、カンテラを『無限収納』から出して明かりを灯して進んでいった。

 どちらに進めば出口があるかわからないので探索しながらの撤退だ。



「ユウヤ、お前は出口を知っているのか? 歩みに迷いがあるようだが……」


 先ほどから通路を引き返したり考え込んでいる俺に、後ろを付いて来ているジルが不安そうに聞いてきた。


「いえ、正直ここがどの辺かもわからないです」


 嘘を言っても仕方がないのできっぱりと言い放つ。


「なに?! ではどうやって砦に侵入してきたのだ!」


 ジルは驚いて目を見開いている。

 セシルさんやライアスたちもいぶかしげに俺を見ていた。


「……言いにくいんですけど、便所の穴から入ってきました。糞まみれになってしまうので別の方法で脱出しようかと思っているのですが……」


 俺の答えに一同絶句してしまい歩みを止めてしまう。


「どうしますか? 今戻ればそこから脱出出来るかもしれませんが……」


 俺は遠慮がちにジルたちに聞いてみた。

 正直あの穴を俺は通りたくないのだ。

 口の中に糞が入ってくる感触を思い出して身震いしてしまう。


「い、いや遠慮しておこうか。セシルもまだ体力が回復していないことだしな」


 俺から目をそらしながらジルが遠慮がちに言ってくる。


「そ、そうですね、もう少し出口を探してみてからでも遅くはないのではないでしょうか……」


 セシルさんの言葉にライアスたちも無言でうなずいている。

 俺だって好きで便所の穴を通ってきた訳ではないのにそんな目で見なくてもいいじゃないか……。

 少しだけ傷ついたが今は落ち込んでいる暇は無い。

 気を取り直して砦の出口を慎重に探していくのだった。



 ー・ー・ー・ー・ー



「これはまた凄いな……」


 ジルが呆気あっけに取られている。


「奴らたんまり溜め込んでたようだな!」


 ライアスも嬉しそうだ。


「これでは王国が討伐隊を派遣するはずですね」


 べソンが神に祈り始めた。

 みんな何に驚き呆れ返っているのか、それは出口を探しているときに偶然発見してしまった宝物庫を見たためだった。


 盗賊たちが王国の西部でかき集めたお宝。

 金貨や銀貨、宝石の数々があふれるほど入った宝箱や、古めかしく豪華な家具や金銀で飾られた鎧や刀剣、よくもまあ集めに集めたと呆れるほどのお宝が、一つの部屋に集められ山のようになっていた。


「これどうしましょうか?」


 こういった犯罪絡みのお宝は王国の所有物になるのではないだろうか。

 お宝の扱いがよくわからない俺はジルにお伺いを立てた。


「どうするも何もここに置いておくしか無いだろう。これだけ大量のお宝を持っていけないだろうよ」


 何を当たり前のことを聞いているんだというような顔をしてジルは俺を見た。


「持っていけますよ」


「え?」


 ジルがびっくりした顔で聞き返す。


「俺の収納に入れて持っていけると言ったんですよ。ちょっと待っていてください」


 ジルの返事を聞く前に、俺は『無限収納』をフル稼働させて宝物庫のお宝を凄まじい勢いで吸引していった。

 お宝は渦を巻きながらどんどん俺の手のひらに吸い込まれていく。

 ものの一分ほどで宝物庫はすっからかんになってしまった。

 その様子を見ていた誰もが驚きの表情で固まっていた。


「しかしユウヤの『収納』は桁違えだな、一体どんだけ入れられんだ?」


 ライアスが呆れている。


「ユウヤさん凄すぎます! きっと国内で一番の収納師になれ……むぐぐっ」


 同じ『収納』のスキル持ちであるセシルさんは、誰よりも興奮して大きな声を出してしまった。

 セシルさんの声は空っぽになった宝物庫に響き渡っている。


「こらセシル、あまり大きな声を出すんじゃない」


 慌ててジルがセシルさんの口をふさいで黙らせた。


「すみませんジル様、場所をわきまえず興奮してしまいました」


 セシルさんは反省して平謝りだ。


「さて、長居は無用ですよ、出口探しを再開しましょう」





 満足いくまでお宝を吸い込んでご機嫌になった俺は、再び先頭に立って探索を開始するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ