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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
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74.エンガチョ

 ユウヤはセシルたちを救出するべく盗賊のアジトへ向かうのだった。




「ぐえっ!」


 道案内をしてきた盗賊の後頭部に剣の柄尻つかじりで一撃を加えた。

 盗賊は意識を刈り取られてぐったりと地面に倒れ込んだ。

 俺は今、盗賊たちのねぐらが見える藪の中に身を隠している。

 道案内のお役御免になった盗賊には、騒がれても困るので眠ってもらったのだ。


 意識不明の盗賊を木の幹にぐるぐる巻きに縛り付け、万力のような腕力でロープを引き絞る。

 盗賊の体中の骨がミシミシと音を立てて折れてしまったが、命に別状はなさそうなのでこのまま放置することにした。

 更に猿ぐつわで口封じをして、暴れないように目隠しを付ける。

 別に殺してしまってもいいのだが、命を助けると言った手前、盗賊には生きるチャンスを与えることにした。

 俺が首尾よく砦を攻略して戻って来ればロープを解いてやるつもりだ。

 そのときにはジルやサイモンさんたちもその場に居合わせるはずなので、盗賊の命は彼らに預けることにしよう。



 藪の中から眼前の建造物を見る。

 そこには古めかしい城壁が立ちはだかっていた。

 城壁の高さはかなり高く、七、八メートルはあるだろうか、全体的に苔むしていて長い年月の間、野ざらしになっている事が見て取れた。

 しかし頑強さは損なわれておらず、未だに現役の様相をていしていた。


 城壁の左側は断崖になっていて、下の方には川が流れている。

 対する右側は垂直の絶壁がそびえ立っており、左右どちらからも容易には砦内部へ侵入することはできそうになかった。


(やはり正面突破しか無いのか……)


 時刻は八時をとうに回っている。

 森の中は完全に闇が広がっていて砦の周りも真っ暗闇のはずである。

 はずであるとはどういうことなのか、それは俺の目には真昼のように明るい景色が見えているからだ。

 普通の人間には暗闇が広がっている森も、『暗視』スキル持ちの俺には昼間同然なのだ。


 余談だが『暗視』というスキルはよく出来たスキルだと思う。

 普段暗くても問題ない時、例えば寝ている時などはスキルは発動しない。

 そして今のように明かりが欲しい時は瞬時に明るくなる。

 意識せずに明暗が切り替わる便利なスキルに感心するばかりだ。



 話を戻すが、砦の入り口には当然のごとく見張りが立っていた。

 人数は二名、二人ともあくびをしていて真剣に見張りなどしていない。

 こんな山奥に来る人間などいないので、奴らが見張りをサボりがちなのも仕方がないだろう。

 奴らを倒して砦の正面から侵入すれば、すぐに見つかり戦闘になるはずだ。

 その場合、捕虜になっているセシルさんたちに、危害が加えられる可能性がある。

 なので正面突破を諦め、他の方法を模索することにした。




 砦の右側にある絶壁に音を立てずに近づいていく。

 森の中は枯れ枝が散乱していたり、背の高い雑草が生えているので静かに移動することは難しい。

 細心の注意を払いながら見張りの盗賊たちに見つからないように移動した。


(う~ん、手がかりになるような出っ張りがないな……、これでは登ることはできないか……)


 砦を作った昔の人達も敵が絶壁をよじ登ることは想定していたのだろう。

 見事に壁は垂直に削られていて一メートルすら登れないようになっていた。

 仕方がないので砦の左側に回ってみる。

 こちら側は絶壁とは真逆で、断崖になっていて川が流れていた。

 砦の壁に取り付くには一旦河原へ降りなければならない、俺は慎重に崖を滑り落ちて河原へ降りていった。



 今は雨季ではないので、川幅が狭くて動きやすい。

 丸まった石ころの上を音を立てないように気をつけながら移動して行く。

 砦の側面が見える場所で、大きな岩の影に隠れて砦周辺を入念に観察した。


 観察した結果、砦の側面は全て絶壁になっていて、その上に砦の壁がそびえ立っていることがわかった。

 どうやっても登れないことは確実で、難攻不落の砦にほとほと困ってしまった。


(これじゃあ敵に見つからずに砦内部に入ることなんてできないな、諦めて正面突破するしかないかな?)


 あたり前のことだが砦は防御力が高い、俺のような素人冒険者が簡単に侵入することなどできるわけないのだ。




「おやっ? あれは何だ」


 よくよく観察していると、砦の壁の一箇所だけが不自然に出っ張っているのを発見した。

 出っ張っている壁の真下まで移動してみる。

 辺りは腐敗臭が立ち込めていて、生ゴミや動物の骨が散乱していた。

 注意して移動したつもりだが、ヌルヌルの石の上で滑ってしまった。

 手をついて転倒は免れたが、異常に臭い何かが手にべっとりとくっついてしまった。


「うわっ! これうんこだろ!」


 慌てて手近にあった岩に手のひらをこすりつけて糞を落とす。


「クリーン!」


 呪文を唱えて素早く汚物を消し去った。

 一旦その場を離れて落ち着くまで隠れることにした。



 観察した結果、砦の壁につけられた出っ張りはダストシュートだということが判明した。

 出っ張りの下部には穴が空いていて、そこから砦内部のゴミや排泄物を落とす仕組みのようだ。


「あそこから入るしかないのか……」


 長年使われてきたダストシュートは排泄物がこびり付いていて凄いことになっている。

 しかし砦内部に侵入するにはあの穴から入るしかないのは明白なので覚悟を決めた。


『無限収納』からロープを取り出し、手頃な石を縛り付ける。

 石付きのロープをぐるぐると回し、狙いを定めていった。

 ロープを勢いよく投げる。

投擲とうてき』スキルが作用して一発で穴の中に投げ入れる事ができた。

 グイグイと引っ張ってみるが、どこかに絡まったらしく登ることができそうだ。


 ロープを強く握って崖を登っていく。

 十メートルほど登ると今度は砦の壁になった。

 砦の壁にはドロドロとした排泄物が張り付いている。

 俺のブーツがまたたく間に糞まみれになってしまったが、構わずロープを手繰り寄せた。

 ダストシュートに近づくにつれ、激臭が辺りに満ちて目がしみてくる。

 それでも我慢をして穴の中へ体をねじ込み強引に突き進んでいった。

 体中糞まみれになり、口の中にも粘り気のある物が入ってくる。

 それでも歯を食いしばりながらロープを手繰たぐり寄せて進んでいった。



 ロープはダストシュートに取り付けてある木の蓋をぶち破って外にまで出ているようだ。

 蓋をぶち破った際に大きな音が出ただろうに盗賊たちは気づかなかったのだろうか?

 盗賊たちの危機意識のなさに呆れ返ってしまうが、そのおかげで砦内部へ侵入できるのだから盗賊様様だ。



 壊れた蓋の隙間から内部の様子を覗き見る。

 どうやらここは砦内部の狭苦しい部屋のようだ。

 俺が投げ入れたロープの先は、天井のはりにガッチリと絡まっていた。

 人影は全く無く、今なら侵入してもバレることはないだろう。

 俺は音を立てないよう細心の注意を払って内部へ侵入した。




 砦内部に侵入して俺が最初にやったこと、それは己の体を綺麗にする作業だった。


「クリーン!」


 汚物まみれの体を『クリーン』で一掃する。

 またたく間に身体に張り付いていた様々な汚れが綺麗さっぱり消失した。





 まさか異世界に来て汚物の中をもがき移動するとは思ってもいなかった。

 完全にトラウマ体験だが、仲間たちを助けるためだと割り切って内部の探索を開始するのだった。

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