表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第二章~新人冒険者~
64/90

63.オーク集落壊滅作戦③~超越者の戦闘~

 新たなスキル『麻痺無効』を手に入れ、動くことが出来るようになったユウヤは、目の前のオークを瞬殺し『暴走のバズ』が暴れ回る遺跡の中へ足を踏み入れた。




 怒声と破壊音が響き渡る遺跡の広場に俺は躍り出た。

 遺跡の広場は瓦礫が散乱して衛兵たちの死体で溢れかえっている。

 上半身と下半身が一刀のもとに切り離された死体、凄まじい圧力で潰された衛兵たちの肉塊。

 遺跡内部はオークたちの生活臭にプラスして、臓物からひねりでた糞尿と、ミンチにされた肉塊の悪臭で満ち満ちていた。

 人間の死体を間近で見たのはこれが初めてだが、『グロテスク耐性』が作用してまったく気持ち悪くならなかった。

 冷静な自分に少々驚いたが、戦闘するには好都合なので深く考えないようにした。


 広場を素早く見渡すと、奥では未だに衛兵たちが奮戦している姿を捉えることが出来た。

 攻めているのは二匹のオークで、『暴走のバズ』の姿はどこにも見当たらない。

 数人の衛兵たちは一箇所に集まり、盾を構えて二匹のオークたちからの攻撃を辛うじて防いでいる。

 全滅は免れたようだが全員が何らかの負傷をしていて、今にも防衛陣形を突破されそうになっていた。


『俊足』を活かして素早く駆けつけた俺は、その勢いのままに上段からオークの背中を切りつけた。

 分厚い筋肉と脂肪に包まれているはずのオークの背中は、背骨に沿って真っ二つに切り分けられた。



 ピロリンッ!


『スキル、『唐竹割り』を獲得しました』



 大量の血液が噴出して辺り一面に飛び散る。


 ピギィィィィ!


 オークは断末魔の絶叫とともに臓物を撒き散らしながら絶命した。

 命を一瞬で刈り取られたオークは、ゆっくりと前のめりに衛兵たちへ倒れかかった。

 慌てて避ける衛兵たち。

 絶体絶命のピンチから、突然目の前のオークが倒されたことに、衛兵たちは思考が停止した。

 そして衛兵たちが俺を見る表情は驚きが張り付いていて、誰一人として声を出す者もいなかった。


「ここは俺が引き受けます! 今のうちに撤退してください!」


 豚どもの攻撃からせっかく救ったのに、動こうとしない衛兵たちに大声で呼びかける。


「早くしてください! ハイ・オークがこちらに突進してきます!」


 俺は遺跡の奥から奴の気配が近づいてくるのを感じ取っていた。

 すでに俺には『暴走のバズ』の攻撃射線が見えている。


 そんな中、もう一匹のオークが怒り狂い襲いかかってきた。

 極度に興奮したオークの顔は、目玉があらぬ方向に向いていて口からは大量によだれが流れ出ていた。

 乱杭歯をガチガチと打ち鳴らして、めちゃくちゃに棍棒を振り回しながら俺にのしかかってくるオーク。

 一撃でも当たれば即死してしまう攻撃を冷静に避け続ける。

 極太の棍棒を剣で軽くいなしてオークの姿勢を崩す。


「何をしているんだ! 早く森へ撤退しろ!」


 石像のように固まっている衛兵たちに思わず怒鳴ってしまった。

 俺の怒声に衛兵たちが我に返り、必死の表情で逃げ出した。




 ドシンドシンと地響きを上げて『暴走のバズ』が走り寄ってきた。

 その速度は尋常ではなく、遺跡の石畳はめくれ上がって粉々に舞い上がっている。

 攻撃の射線は目の前のオークを巻き込んで俺を狙っていた。

 横飛に飛び退いて突進をかわす。


 すぐ横で水をパンパンに入れた革袋が派手に爆発したような音がしてオークの身体が破裂した。

 仲間であるオークを一撃で粉砕した『暴走のバズ』は、勢い余って遺跡の壁に盛大にめり込んだ。


 もうもうと土煙が巻き上がった。

 その土煙の中には血煙が混ざり込んでいて、俺の全身はオークの血肉を浴びて真っ赤に染まってしまった。

 ハイ・オークがいるであろう壁の方向を注意しながら、べっとりと顔に付いた血糊を片手で強引に拭き取った。




 ブモォォォォ!



 地面が揺れるほどの大絶叫が遺跡全体を揺るがした。

『暴走のバズ』はお得意の『雄叫び』を発動して、俺の動きを封じる手に出たようだ。

 再び赤い攻撃射線が俺を包み込む。

 広範囲に広がった『暴走のバズ』の攻撃が開始されようとしていた。



 もう俺には『雄叫び』は効かないが、横飛に飛び逃げても攻撃を躱すことはできそうにない。

 俺は意を決して盾を構え、奴の攻撃を受け止めることにした。

 奴が先ほど見せた突進力を、正直言って受けきれる自信はない。

 だが逃げ道が無い以上、受けきるしかないのだ。


 目の前が真っ赤に染まりきってその中から『暴走のバズ』が姿を現した。

 段平ダンビラが高速で振り回され、巨大なオークが一直線に突撃してくる。

『受け流し』が発動して段平を弾き返した。

 幾回も弾き返しても次々に襲い掛かってくる段平に、皮の盾が耐えきれなくなり粉々に切り刻まれて消滅する。

 更に襲いかかる段平を長剣でいなしながら、少しずつ後ろに下がっていった。


(このままではじり貧だ、何とか段平から逃れなくては!)


 攻撃を弾き返しながら逃れる方法を考える。

 その時突然全身を衝撃が包み込んだ。



 俺は宙に浮き上がり高速で飛ばされてしまった。

 ちょうど異世界に来たときと同じ、自動車に跳ね飛ばされた感覚だった。

 全身を強く打ち、吹き飛ばされる。

 飛ばされたと思ったが、『暴走のバズ』は何故か目の前にいる。

 奴は段平を投げ捨て、俺のことを羽交い締めにしたまま遺跡の壁に突っ込んで行った。


 爆発に近い轟音をともない遺跡の壁に激突した俺は、今度こそ殺されることを覚悟した。




「ゴフッ!」


 凄まじい衝撃とともに体中に激痛が走った。

『激痛耐性』があっても補いきれないほどの痛みが体中を駆け巡った。

 大量の血反吐を撒き散らして俺は壁を突き破っていた。

 錐揉み状態で転がり地面に投げ出され、ボロ雑巾のように打ち捨てられる。

『暴走のバズ』は瓦礫の中でもがいていて、すぐには起き上がれないようだ。


 俺の四肢は骨が粉砕され、右手首の先はちぎれ飛んでしまった。

 片目は潰れ、頭蓋骨も陥没している。

 しかしブライアンさん特製の革鎧のおかげで、内臓が破裂することはかろうじて免れて即死は避けられた。

 心臓がゆっくりと鼓動を遅くしていく、俺の命は今潰えようとしていた。




 それは突然だった。

 爆発的な光が俺の体を包み込み、一瞬にして全回復してしまった。

 怪我が治っていくというような生易しい回復方法ではなく、瞬間的に骨が繋がり目玉が再生され、手首から先が生えてきたのだ。

 体力も全快して戦闘前に戻ってしまう。

 チートスキル『瀕死回復』は、かなり派手な復活を俺に与えてくれた。


 ゆっくりと起き上がりながら手足を確認する。

 右手にはめていた革の小手はどこかへ飛んでいってしまい紛失していた。

 地面に転がっている兜も、あちこちがへこんでいて使い物になりそうにない。

 革鎧はまんべんなく傷つき金属部分もへこんでいるが、まだ使用に耐えることはできそうだった。

 右手に持っていたはずの長剣は、どこかに飛ばされて見当たらない。

 俺は『暴走のバズ』に近づきつつ、腰に刺した短剣をゆっくりと引き抜いていった。


(この世界はスキルの多様さで勝負がつくんだ、お前は十分に強かったが俺のほうが今回は上手だったようだな)


 短剣を逆手に持ち、うつ伏せの状態でもがいているハイ・オークの頭に力強く突き刺す。

 刃渡り四十センチの刀身が深々と突き刺さり、『暴走のバズ』の身体が波打つように痙攣けいれんする。

 俺は短剣をこじりながら死にゆく豚の脳みそを破壊していった。



 次第に痙攣は弱くなっていき、『暴走のバズ』は息を引き取った。

 短剣を頭から抜き去った俺は、動かなくなった豚の極太な首を短剣で押し切るように切断した。

 大量の血液が首から流れ出てくる。





 ネームドモンスター『暴走のバズ』は、静かにその生涯に幕を下ろした。

 戦闘を終えたことを実感した俺は、意識を手放しその場に倒れ込んでしまうのだった。





 ー備考ー


[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 クラス……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』『予測回避』『瀕死回復』『身体能力向上』『暗視』『俊足』『剣技』『防御』『体捌たいさばき』『精密投擲せいみつとうてき』『突き』『連続突き』『唐竹割り』『一撃離脱』『受け流し』『激痛耐性』『グロテスク耐性』『麻痺無効』『勇敢ゆうかん』『平常心』 魔法……『クリーン』 加護……『女神イシリスの加護』]


・NEWスキル……『唐竹割り』



『唐竹割り』…… 敵を縦真っ二つに切り分ける必殺技。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ