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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第一章~見習い冒険者~
37/90

37.普通じゃない

 洞窟の入口に戻り外に出ると太陽は遠くの峰に沈みかけていて、木々から伸びる影が長くなっていた。

 時刻は午後三時半を回っている、これから森を探索するには少々遅い時間だった。

 今日の探索を諦めるかはたまた強行して探索を続けるか、判断が難しい状況だった。


「思ったよりゴブリンの解体作業に時間がかかってしまったようだな。今からでは探索しても仕方がない。危険だが洞窟へ戻って今日のところは野営をしよう」


 キッドさんの判断で再び洞窟内に戻ることになった。

 辺りが暗くなるのは一瞬だ。

 無理をして森に分け入れば最悪の場合遭難してしまうだろう。

 俺は『暗視』スキルを持っているが、キッドさんは持っていない。

 キッドさんを危険に晒すことは出来なかった。


 さらに別の問題もある。

 往々(おうおう)にして夜の森は危険な魔物が徘徊しやすいのだ。

 さらに危険な動物たちも夜行性が多く、無理をして夜に探索するメリットはなかった。


 しかし今回野営をする場所にも問題があった。

 いくら全滅させたとは言え、この洞窟はゴブリンの寝床だ。

 まだまだ森からゴブリンが帰ってくる可能性が高い。

 今夜は危険な夜になりそうだった。



 洞窟内部に戻った俺達は、入り口に結界を張ることにした。

 まず入り口脇の地面に魔除けの杭を刺していく。

 左右一本ずつ、さらに天井に二本差し込んだ。

 魔除けの杭は案外丈夫で、『収納』から取り出したハンマーで岩盤に打ち込んでいってもびくともしなかった。

 カツンカツンと暗くなりかけた森の中に杭を打ち込む音が響く。

 入り口を杭で固めた後は洞窟の外に一本打ち込み、内部にも一本打ち込む。

 合計で六本の杭を打ち込むと、先端に宝珠のついた杭を道の真ん中に差し込み、キッドさんは呪文を唱えた。


「ガード」


 宝珠が淡く光って結界が形成されたことを教えてくれる。


「よし、これでゴブリンは洞窟内部に入ってこれないぞ。一応の安全は確保できたな」



 一安心をして野営の場所を決めるために洞窟の奥へ進んでいく、最初の分岐点に来ると左の道へ入っていった。

 そこは最初に探索した行き止まりの道だ。

 行き止まりでキャンプを張り、正面からの敵だけに備えることにした。


「よし、ここで野営をするぞ。テントは張らなくていいな、焚き火だけは起こしておこうか」


 キッドさんは次々にかまど用のレンガを出していく。

 きれいな円形に積み上げるとその中に薪をくべていった。

 程なくして炎が立ち上り、周囲が少しだけ明るくなった。


 火は動物よけにはなるが、魔物には逆効果ではないだろうか。

 万が一洞窟内にゴブリンが生き残っていた場合、明かりに吸い寄せられる危険性がある。

 しかしキッドさんは暗闇では活動できない。

『暗視』持ちの俺は周囲が明るいからいいが、普通の冒険者は暗闇では戦えないから仕方がないだろう。

 そこで俺はキッドさんに提案することにした。


「キッドさん、バリケード作りましょうよ。ちょうど『無限収納』の中にゴブリンどもの武具があるから、それで道を塞ぎましょう」


「おお、いい考えだな。障害物があれば直接攻撃されないからより安全だな。早速出してくれ」


 俺の提案にキッドさんも乗ってくる。

 次々に武具を取り出して少し離れた通路に積んでいく。

 ボロボロの革鎧や真っ二つに割れた円盾、錆びた短剣などをどんどん積んでいくと、程なくして武具の山で完全に通路が塞がれた。

 武具はかさばるので通気性は問題ないと思う。

 このまま焚き火をしていても酸欠になることはないだろう。


「ユウヤ先に寝ていいぞ、時間が来たら起こすから安心してくれ」


「わかりました。カンテラを置いておきますね。それからこれは夜食です」


 焚き火の明かりでも十分だとは思うが、カンテラを取り出してキッドさんに預ける。

 さらに串焼き肉を皿に山盛り出して手渡した。


「ありがとうよ、ではおやすみ」


「おやすみなさい」


 俺は寝袋に入ると地面に横たわった。

 確定では無いが洞窟内にゴブリンはいないだろう。

 あれだけ派手に虐殺されたのだ、生き残ったゴブリンが万が一いても、すでに洞窟から逃げ出しているはずだ。

 今頃は森の中を逃げ惑っているだろうな。


 今回の戦闘でも様々なスキルを手に入れることができた。

 今のうちに調べておこうと思う。

 俺はステータス画面を開いて、スキルを確認していった。



[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 クラス……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』『予測回避』『瀕死回復』『身体能力向上』『暗視』『剣技』『防御』『体捌たいさばき』『精密投擲せいみつとうてき』『突き』『連続突き』『一撃離脱』『受け流し』『激痛耐性』『グロテスク耐性』『勇敢ゆうかん』『平常心』 魔法……『クリーン』 加護……『女神イシリスの加護』]



 ステータス画面にはずらりとスキルが映し出されていた。

 異世界に転移した当初は数個ほどだったスキルが、今では大量に取得できて画面を埋め尽くしている。

 数えてみると呪文や加護を合わせて全部で二十三個取得していた。

 統合したスキルや進化したスキルがあるから、延べで数えればもっと取得した計算だ。


 スキルを三つ取得できれば冒険者として一人前だとキッドさんは言っていた。

 それを大幅に上回るスキルの取得数に我ながら呆れてしまう。

 しばしステータス画面を眺めていたが、気を取り直して新しく取得したスキルを調べていった。



 順番にスキルを見ていく。

『体捌き』辺りからは調べていなかったはずだ。

 俺は『体捌き』のスキルを注視して、どのようなスキルなのかを調べていった。



『体捌きは、格闘スキルです。スキル保持者は近接戦闘において敵の攻撃を巧みに避けることが出来ます』


 次に『連続突き』と『受け流し』のスキルを見る。



『連続突きは『突き』の派生スキルです。素早い突きを繰り出し、相手に大ダメージを与えます。術者の力量で突きの本数が変わります』


『受け流しは『防御』の派生スキルです。盾で相手の攻撃をそらすことが出来ます』


 たしかこの三つは森林狼との戦闘で取得したスキルのはずだ。

 これに加えて『身体能力向上』の四つのスキルを一度に獲得できた。

 あの瞬間から体が劇的に動けるようになったはずだ。


 さらにスキルを見ていく。



精密投擲せいみつとうてきは『投擲』が進化したスキルです。距離、精度、連続投擲が向上します』


 先程のゴブリンとの戦闘では大活躍してくれたスキルで、今では狙った目標を外してしまう不安はまったくない。

 我ながら恐ろしいスキルを手に入れたものだな。


(あと残っているスキルは、『勇敢ゆうかん』と『暗視』、それから『平常心』か……)


 俺は恐慌状態になり無様な姿で地面に這いつくばってしまったときのことを思い出した。

 結果的に『恐慌耐性』を獲得して『勇敢』を取得できたのだから良かったのだろうか。

 しかしキッドさんが居なければどうなっていたかわかったものじゃない。

 ちょっとしたことで死を招き寄せてしまう未知の領域の探索は、とても危険な行為だと思う。

 パニックを起こしてしまった反省をしながら『勇敢』を調べる。



『勇敢は『恐怖耐性』と『恐慌体勢』を統合したスキルです。恐怖と恐慌の状態を無効にします』


 イシリスさんの声で説明が流れるが、その内容に俺は絶句してしまった。

 異世界に来て数日で状態耐性の頂点であろう状態無効を取得してしまったようだ。

 この先どれほどスキルを取得できるかわからないが、そろそろ人間の域を脱し始めたのではないだろうか。


 さらにスキルを調べる。



『暗視は常時発動スキルです。暗闇での視界を確保します』


(まあ、これはわかりやすいな。このスキルを取得した途端、視界が劇的に明るくなったことを思い出すよ)


 最後は『平常心』だ。

 このスキルのおかげで、薄暗い洞窟で野宿しているにもかかわらず冷静でいられる。



『平常心は常時発動スキルです。心を穏やかにして慌てることがなくなります』





 これで全てのスキルを調べ終えたようだ。

 今日はあまりにも多くのスキルを獲得してしまい驚きの連続だった。

 明日も探索を続けるので、またスキルを取得できるだろうか。

 ステータス画面にずらりと並ぶスキルを眺めながら睡魔が訪れるのを待つのだった。

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