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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第一章~見習い冒険者~
35/90

35.ゴブリン殲滅戦③~終戦~

 戦闘のさなか、弓ゴブリンに再び狙われたユウヤは、奴らを排除するために意識を集中するのだった。



 心を落ち着かせて弓ゴブリンに意識を集中していく。

 投擲とうてき用のナイフをゆっくりと構え、弓ゴブリンの眉間に狙いを定める。

 俺は弓ゴブリンに必殺の一投を投げるためにナイフを大きく振りかぶった。


 いつでもナイフを放つことが出来るが、すぐには投げずにゆっくりと狙いを下げていった。

 ナイフを投げる場所はゴブリンの眉間みけんではない。

 俺が狙うはゴブリンが持っている弓のげんだ。

 あの細い糸を切り飛ばしてしまえば弓として機能しなくなる。

 弓破壊という離れ業を俺は今から行おうとしていた。

 意識を更に集中して弓を見つめる。


 先程からキッドさんが俺の前に陣取ってゴブリンたちの攻撃を一身に受け止めてくれていた。

 ゴブリンたちは、キッドさんが攻撃せず防御に徹したのを敏感に感じ取って攻勢に出てきていた。

 前と左右の三方向から俺たちに向かって短剣や短槍を突き出し、武器を持っていないゴブリンたちが地面に落ちているこぶし大の石を投げつけてきた。

 その全ての攻撃をキッドさんは的確に躱し、いなしてはじいていた。


 凄まじい戦闘音が洞窟の壁に反射して響き渡っているが、俺の耳にはその音がどんどん小さくなっていった。

 極限の集中力を発揮して弓だけを凝視すると、突然脳裏に()()()()が起こり、俺は素早くナイフを投擲した。


 暗闇を一直線にナイフが飛んでいく。

 高速で飛翔していったナイフは、弓の弦を切り飛ばして吸い込まれるようにゴブリンの身体に深々と突き刺さった。

 見事に弓を破壊してゴブリンを即死させ、遠距離攻撃を封じる。

 さらに俺は両手に構えたナイフを広場へ投げつけた。

 狙い違わず突き進んだナイフが、地面に落ちている弓の弦もしっかりと破壊した。



 ピロリンッ!


『スキル、『投擲』が『精密投擲』に進化しました』



 全ての弓を破壊してなおかつ弓ゴブリンも居なくなった。

 これで安心して目の前の戦闘に専念できる。


「弓ゴブリンを倒しましたよ、ついでに弓も破壊しました!」


「そうかよくやった! こっちもそろそろ終わりそうだぞ」


 俺の報告にキッドさんが嬉しそうに答えた。

 多少余裕が出たので周りを見渡してみると、いつの間にか広間の入り口にはゴブリンの屍が大量に横たわっていた。

 俺がナイフを投擲した瞬間に、キッドさんは攻撃に転じて周りのゴブリンたちを排除したようだ。

 屍の大半は一刀のもとに倒されたもので、キッドさんの戦闘力の凄まじさがよく分かる。

 上半身と下半身を真っ二つに両断され、のたうち回っている瀕死のゴブリンも少なからずいて、キッドさんが魔物に容赦のない事がよくわかった。


「そろそろ広場に進出するぞ、ここからは逃げ惑うゴブリンを一匹残らず駆除する作業だ。変な仏心は出すなよ、相手は魔物だ徹底的に殺しまくれ」


 足元に転がっている瀕死のゴブリンの頭を短剣で突き刺しながらキッドさんが指示を出す。


「はい!」


 俺は元気に返事をして広場にゆっくりと進んでいくのだった。




 広場の奥には子供のゴブリンが合計で十匹ほど固まっていた。

 頭でっかちで腰蓑こしみのだけを着けている赤ん坊のような容姿、魔物なので表情はわからないが恐怖に震えているようだ。

 地面にしゃがみこんでいるが、その周りには水たまりができていて恐怖で失禁してしまっているようだった。

 そしてその幼いゴブリンたちの前には、少しだけ年長の子供ゴブリンであろう数匹がボロボロのナイフを構えてこちらを威嚇いかくしていた。

 敵意むき出しの様子だが、あちらから攻撃してくることはないので、ひとまず後回しにして残りのゴブリンたちを駆除していくことになった。


 動きの鈍い個体は年老いたゴブリンだろうか、こちらに向かってナイフをかざしているが、歩くことは出来ないようだ。

 短剣を頭に突き刺して引導を渡す。

 お腹が大きく妊娠しているであろうゴブリンも頭から尻にかけて真っ二つにして斬り殺した。

 可哀想と思うかもしれないが、これが人間と魔物の当たり前の関係なのだ。



 キッドさんは広場に入ると幅広の長剣に装備を変えていた。

 長剣を片手で自在に操り、もう片方の手には松明を握っている。

 豪快に長剣を振り回し数匹いっぺんに殺害していく。

 胴体を横に切断されて一緒くたになって飛んでいくゴブリンたち。

 その剣風は狭い空間に反響してゴブリンたちを恐怖のどん底に突き落とした。

 広場はまたたく間にゴブリンの屍で埋め尽くされていく。

 もう向かってこれるゴブリンの戦士は残っていないので一方的な狩りが始まった。


「ユウヤ、巣穴に短剣を差し入れてかき混ぜろ。中に隠れている奴がいるからな」


 手際よく指示を飛ばしてくるキッドさんは、広場の奥に固まっている赤ちゃんゴブリンを横一線に切り飛ばした。

 子どもたちを守っていた若いゴブリンたちは、すでに首と胴体が切り離されて力なく横たわっている。


 俺は壁際まで近寄ると一穴ずつ短剣を差し入れてかき混ぜていった。

 肉を切り裂く感触がして中に隠れていたゴブリンが次々に死んでいく。

 思った以上に穴の中に隠れていたようで、壁一面青い血液で染まってしまった。


 何も考えずに機械的な作業で巣穴に短剣を突き入れている時、視界の端に一匹のゴブリンが走り去るのが見えた。

 きを突いて広場から逃げ出そうとしたのだろう。

 俺は慌てずにナイフを構えると手首のスナップを効かせて投擲した。

 一目散に逃げていくゴブリンは、背中からナイフを生やして糸が切れた人形のようにばったりと倒れて動かなくなった。

 その様子を確認してからゴブリンの排除を更に進めていく。


「しかし凄い命中率だな、あの距離を一撃なんて達人級じゃないか?」


 いつの間にか俺の横に来たキッドさんが呆れた顔をした。


「どうでしょうね、まだまだだと思いますよ」


『精密投擲』のスキルは強力だがもっと上級のスキルがある気がするのだ。


「余裕だなユウヤ、頼もしい限りだ!」


 白い歯をのぞかせてキッドさんが笑う。

 その笑いには屈託がなく、本気で嬉しそうだった。



 終わってみればこちらの被害は皆無で完勝だった。

 確かに援軍をわざわざ呼んでくるまでもなかった。

 圧倒的なキッドさんの戦闘力とそれについていける俺の力。

 少しだけ冒険者としてやっていける自信が付いた気がした。


粗方あらかた終わったようだな。動いているゴブリンはいるか?」


「いない……ようですね。広場に動くゴブリンはもういません」


 薄暗い広場だが『暗視』で昼間のように見える俺は、ぐるりと広場を見渡して報告する。


「よし、今一度壁の穴を入念に調べ上げてから剥ぎ取りをしよう。今回は俺とユウヤで利益を折半せっぱんにすることにする、ユウヤもそれでいいな?」


 一仕事終えた満足そうな顔をしてキッドさんが提案してきた。


「そんなに貰えるのですか? 明らかにキッドさんのほうがゴブリンを倒していると思いますよ?」


 荷物持ちの見習いで入隊した俺には破格の扱いだ。


「そうは言ってもユウヤが遠距離攻撃を潰してくれたのはかなりの功績だぞ。矢が飛んでくる中だったら俺もあれほど暴れまわることは出来なかったからな。自信を持っていい、ユウヤはすでにゴールドランクの冒険者と同等の戦闘能力を持っているぞ」


「ありがとうございます。ゴールドランクだなんて言い過ぎですが、キッドさんに認めてもらえたのは嬉しいですよ。報酬もありがたく頂戴します」


 キッドさんのべた褒めに少々照れてしまう。


「よし、では作業に取り掛かろう!」


 キッドさんが元気に宣言する。

 話し合いが終わったので戦利品の剥ぎ取り作業に入った。



 まずは生き残りのゴブリンが本当に居ないかを確認する作業から開始する。

 そして次は討伐部位であるゴブリンの耳や、一番金になる魔石の回収作業だ。

 さらにガラクタだが数を揃えればそれなりの金額になる武器や防具も忘れてはいけないだろう。

 やることは山積みで、かなりの時間と労力が費やされることになりそうだった。



 二人で行うには大変時間がかかる作業を黙々とこなしていく。

 広場はゴブリンたちが流した青い血液の川が流れ、青い血溜まりが形成された。

 麻袋いっぱいの討伐部位が中央に山積みになり、その横には魔石の入った小袋が幾袋も積み上がっている。

 武具の方はほとんどが粗悪品なので一緒くたに積み上げて放置しておいた。



 途方も無い時間が過ぎ、お腹が減ってくる。

 

凄惨せいさんな現場なのに腹が減るなんて俺も異世界に慣れてきたようだな)


 屍累々の広場を余裕で見渡しながら一息つく。

 本当のところは『グロテスク耐性』と『勇敢』のスキルが働いているせいだろう。

 更に『平常心』のスキルも関係があるかも知れないな。

 いずれにしても正気で居られる事はありがたいことだった。



「キッドさん、食事にしませんか? 俺お腹が減りました」


 同じく小休止をしているキッドさんに声を掛けた。


「ははは、ユウヤはなかなか肝が座っているな。これだけの現場で腹が減るなんて大物だぞ。よし、作業を中断して食事にしようか」


 さすがはベテラン冒険者だ、体中をゴブリンの血液で真っ青にしながら俺の提案に乗ってきた。

 俺も笑いながらキッドさんに近寄ると一声、呪文を唱えた。


「クリーン!」


 生活魔法『クリーン』を唱え、身体をきれいにする。

 今の今まで汗と血まみれだった身体が、スッキリときれいになった。

 さらに周りの地面や岩肌も綺麗さっぱり元通りになる。

 ゴブリンたちの屍が散乱している洞窟内での奇妙な食事が始まろうとしていた。





 ー備考ー


[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 ランク……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』『予測回避』『瀕死回復』『身体能力向上』『暗視』『剣技』『防御』『体捌たいさばき』『精密投擲せいみつとうてき』『突き』『連続突き』『一撃離脱』『受け流し』『激痛耐性』『グロテスク耐性』『勇敢ゆうかん』『平常心』 魔法……『クリーン』 加護……『女神イシリスの加護』]


・NEWスキル……『精密投擲せいみつとうてき』(『投擲』が進化)

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