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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第一章~見習い冒険者~
13/90

13.情報収集

 突然あらくれ冒険者にからまれもしたが、争いごとにはならず『危険回避』のスキルも取得できた。

 冒険者ギルドの向かい側で時間をつぶすこと小一時間。

 冒険者達の大半は今日の仕事のために足早にギルドを後にした。


 もちろん俺に絡んできた冒険者二人組の姿も見えない。

 彼らも本気で俺をどうにかしようと思っていたわけではないのかも知れない。

 ただの暇つぶしに素人同然の俺をからかっただけのようだった。


 人のまばらなギルドへ近づいていく。

 今度は誰も俺にちょっかいを出す者は居なかった。

 やはり慣れないうちは朝一でギルドへ来るのは、やめたほうがいいようだ。



 ギルド内へ入ると受付カウンターに並んでいる冒険者の姿はなかった。

 数いる受付嬢の中から最初に対応してくれたトリシアさんを見つけた。

 受付嬢は全部で六名いる。

 みんな美人でスタイルがいいが、トリシアさんは優しそうな表情をしているので何だか安心する。


 真っ直ぐにトリシアさんの受付へ向かっていくと、トリシアさんも俺を見てにっこりと笑いかけてくれた。


「おはようございますユウヤさん。今日はどの様なご用件でしょうか」


 柔らかな口調でトリシアさんは俺に話しかけてきた。

 名前を覚えていてくれたことに俺は感動してしまう。


「おはようございますトリシアさん。今日はちょっと聞きたいことがあってきたんですよ」


 俺も丁寧に返事を返してトリシアさんに相談をする。


「そうですか、それでどの様なことをお知りになりたいのですか?」


「昨日聞きそびれてしまったのですが、この街の周辺に出没する魔物の種類を教えてほしいのです。出来れば特徴や討伐方法も合わせて教えてもらえると嬉しいのですが」


「魔物のことですね、それでは二階にある図書室をお使いください。ミュンヘル周辺の魔物のことが、事細かに載っている冊子が置いてありますよ」


 この手の質問はたくさん聞いているのだろう。

 トリシアさんは淀みなく質問の答を教えてくれた。

 お礼を言ってから二階の階段を登っていく。

 朝の忙しい時間帯だったら、ゆっくり読書なんてできなかったかも知れない。

 腕時計をちらりと見ると、まだ八時を少し回ったところだった。

 異世界の朝は早いので、起きてから既に数時間経っているのにまだ朝なのだ。


 二階の吹き抜けの通路には誰の人影も見えない。

 昨日の講習会場の横の扉に、図書室と書いてあるプレートが貼り付けてあった。

 静かに図書室の扉を開ける。

 中を覗いてみると中央にテーブルが設置されており、椅子が並べられていた。

 壁際には本棚があり、分厚い本が所狭しと収められていた。


 図書室と言うくらいだからそれほど本はないと思っていた。

 しかし室内の壁は本でぎっしりと覆われていた。

 窓際だけが朝の光を浴びて明るく、本棚もないのですっきりとしていた。


(参ったな、魔物の図鑑を探すの大変そうだな……)


 今日は南の森に行かなくてはならない。

 道中には薬草採取もしたいと思っていた。

 いくら今が朝とはいえ、この膨大な書物を片っ端から調べていくのは時間的に厳しい。

 必要な情報だけを手っ取り早く入手できないものかと思案する。



 考えながら室内に入る。

 壁際の本棚には街の歴史書や王国貴族の名鑑、果てはいろいろな食材の調理方法を紹介している料理本まであった。


(まさか手書きじゃないよな、もし手書きだったら大変な労力だぞ……)


 偏見で異世界には印刷機などないと思い込み、一冊適当に抜き出して内容を調べる。

 予想に反して本の内部は綺麗な活字で埋め尽くされていた。

 異世界にも印刷機があるのだろうか。

 魔法で動く印刷機もどきの魔道具があってもおかしくはないが……。



 ざっと背表紙に書かれている本の題名を読んでいく。

 俺が調べたところによればこの本棚の中に魔物図鑑はなかった。

 どうしたらいいか途方に暮れていたら、ふとテーブルの上に薄い冊子が数冊置いてあることに気がついた。


 その冊子は何度も読み返されたらしく、表紙が擦り切れてぼろぼろになっていた。

 興味を覚え一冊手にとって見る。

 題名は『ミュンヘル周辺魔物図鑑 一巻』と書いてあった。

 本棚の書物から調べたのが間違いだったようだ。

 忙しい冒険者たちのために親切にテーブルに置いてあったようだな。


 時刻は九時近い、思わぬ時間をロスしてしまったが、本棚の書物も面白そうなものがいくつかあった。

 今度時間があるときにゆっくり読んでみようと思う。



 椅子に座り冊子を開く。

 そこには挿絵とともにミュンヘル周辺に出没する魔物や危険動物が書かれていた。

 危険動物の項には、特徴や注意する点などが事細かに載っている。




【森林狼】…… 通常よりかなり体格が大きい狼。群れで行動するので注意すること。討伐部位は牙。


【ワイルドベアー】…… 巨大な人食い熊。通常の攻撃は分厚い毛皮で通らない。魔法による攻撃や、急所である目玉への攻撃推奨。討伐部位は右手首。


【ツリースネーク】…… 樹木の上に生息する蛇。音もなく落ちてくるので気を付けること。猛毒を持っているので危険。討伐部位は牙。


【黄金甲虫】…… 巨大な虫。黄金と付いているが色が金色をしているだけ。鋭い顎で金属鎧も噛み砕く。非常に硬い外殻を持ち、討伐に苦労する冒険者が多い。火魔法が弱点。討伐部位は触覚。


【デスマンティス】…… 巨大なカマキリ。強力な顎と鋭い鎌状の前足が特徴。火魔法が弱点が、素早いので当てることは難しい。初心者は撤退推奨。討伐部位は前足の鎌。


【大王鹿】…… 全高二メートルを超える気性の粗い鹿。鋭い角で突進をしてくる。討伐部位は角。




 魔物じゃない動物でさえ勝てる気がしない。

 この街の周辺の動物は特徴として巨大なものが多いようだ。

 幸いなことに森林狼は近場に出没するが、その他の動物は街から離れた山奥を主な生息域にしているようだ。

 その森林狼すら森の奥以外には滅多に出没しないので安心しろと書かれていた。


 次に魔物の項目を見る。

 そもそも魔物の定義とは何なのだろうか。

 巨大なカマキリなど俺からしたら十二分に魔物だと思うのだが……。


 そのことについて冊子に詳しく解説が載っていた。

 なんでも、魔物というのは体内に魔力を溜め込んだ魔石がある個体を差すのだそうだ。

 主に頭蓋骨の中、さらには心臓に当たる部位に魔石はあるらしい。

 この魔石を採取して持ち帰ればかなりの金額になると書いてあった。


 しかし注意書きが赤字で書かれている。


「魔物は非常に強力な身体能力を有しているので安易に挑まないように、特に初心者は死亡事故を引き起こす確率が非常に高い」


 注意書きには不吉な文字が並んでいた。

 昨日の講習でも言っていたが、新人冒険者の半分が半年以内に死亡するそうだ。

 多分実力似合わない魔物狩りを行って、返り討ちにあうケースが多いのだろう。

 俺も極力魔物とは戦闘しないように気を付けようと心に誓った。


 それは置いておいて、魔物の種類だ。

 冊子のページをゆっくりと開いて魔物を確認していく。




【スライム】…… どこにでもいる軟体生物。コアを破壊されなければほぼ無限に生き続ける。対処法を間違えると死亡事故が起こりやすいので、特に初心者は注意すること。急所は核。討伐部位は核。


【ゴブリン】…… 主に森に生息し、穴蔵や洞窟などをねぐらにしている子鬼、ミュンヘル周辺で一番危険な魔物。大群になると危険度が急上昇する。討伐部位は耳。


【オーク】…… 豚の顔をした二足歩行の獣人。凶暴な性格で好戦的。体格が大きく、腕力が強い。武装をしている率が高く、接近戦では勝ち目がない。発見時撤退推奨。討伐部位は鼻。


【ゾンビ】…… 腐った死体。病原菌の塊なので接触すると危険。様々な種類がいるので注意が必要。討伐部位は目玉。


【スケルトン】…… 屍が白骨化した魔物。動きが緩慢かんまんだが、多様な武器を使用してくる。まれに四足歩行のスケルトンも出現する場合がある。討伐部位は大腿骨だいたいこつ




『ミュンヘル周辺魔物図鑑 一巻』に載っている魔物はこれで全部だ。

 二巻を少し読んでみたが、さらに辺境の地域や迷宮に巣食う魔物のことが書かれていた。

 三巻に至っては、ドラゴン種やネームドモンスターと言われる強力な魔物のことが書かれていて、俺には縁のない世界の話だった。

 時間があるときにゆっくり見ることにして図書室を後にした。




 ギルドを出てミュンヘル市の南門へ向かう。

 多少予定が狂ってしまったので少し早足になる。

 遠くに大きな城壁が見えてきて巨大な入出門が姿を現した。

 いよいよ街の外に出る時が来た。

 緊張と期待で俺の心臓の鼓動が徐々に早くなっていった。

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