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アドベンチャラー~超越無双の冒険者~  作者: 青空 弘
第一章~見習い冒険者~
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11.チートスキル

 俺はステータス画面に書かれているスキルなどを、きちんと把握しておくことにした。


「ステータスオープン」


 高級宿の部屋に備え付けてある風呂に浸かりながらステータス画面を開く。

 瞬時に半透明の小さな画面が四十センチほど前方に展開された。



[名前……ユウヤ・サトウ 種族……ヒューマン 職業……冒険者 ランク……ブロンズ タイプ……戦士 スキル……『万能言語』『無限収納』『真理の魔眼』『全能回復』『超熟練』 加護……『女神イシリスの加護』]



 名前に年齢、職業とランク、そしてタイプ。

 間違いなく講習会で見たステータスと同じだ。


 スキルに関しては『万能言語』と『無限収納』、そしてとても有用なスキルである『真理の魔眼』までは調べた。

『真理の魔眼』はとても優秀なスキルで、目視して注目しただけで対象の情報を取得できるのだ。


 説明はイシリスさんの声で聞こえ、ステータス画面の横の方にも文字で説明文が出る仕様だった。


(この『真理の魔眼』というスキルは取得した覚えがないんだよな……、なにか心に引っかかっているような気がするな)


 変にもやもやとした感情が湧き上がってきた。

 俺は大事なことを見逃している気がする。


 さらにステータスを調べていく。


(『全能回復』とはなんだ?)


 ステータスにある『全能回復』スキルを注視する。


『全能回復は、ありとあらゆる病気や怪我、ステータス異常からスキル保持者を回復するスキルです。ほぼ瞬間的に自動で発動するので、即死しない限りスキル保持者の生命を護ります』


 イシリスさんの声でスキルの説明が頭の中に聞こえてきた。

 調べるととんでもないスキルだということがわかった。

 死なない限り回復してしまうなんて、かなりのチートスキルなのではないだろうか?


(よし、最後のスキルは……、『超熟練』か)


 何度も『心理の魔眼』を使ったのでスムーズに使用できるようになってきた。


『超熟練は、スキル保持者の技能取得やスキル取得をサポートするスキルです。スキル保持者は通常の数倍から数十倍の器用さで技術やスキルを取得できます』


(でたよ、異世界モノの小説でよくお目にかかるチートスキルだ。一体どうして俺が取得できているんだ?)


 少々呆れ気味にステータス画面を眺める。

 書かれているスキル全てが凄まじいほどのチート性能だった。

 しばらく放心状態だったが、気を取り直して更に調べる。


(最後は加護か……、『女神イシリスの加護』、イシリスさんは俺を気にかけてくれているらしいな)


『女神イシリスの加護』を視てみた。


『女神イシリスの加護は、女神イシリスが保護している魂に与えられる加護です。加護保持者に様々な恩恵を与え、奇跡を起こします』


 女神様の過保護なまでの待遇に言葉も出なかった。


 なぜこれほどまでに有用なスキルを俺が取得できているのか。

 今日までのことを順を追って考え直す。


 まず謎の空間、イシリスさんは『時空の狭間』と呼んでいた所で、色々なスキルを取得した。

 ここまではいいな。

 そして異世界へ転移して捕まったり、ギルドに加盟して冒険者になったりした……。

 防具や武器、雑貨なども買い込んだな。

 それからイシリスさんからの手紙も読んだっけ。


(手紙……、そうだ! 手紙に変なことが書いてあった気がする!)


 俺は慌てて『無限収納』からイシリスさんの手紙を取り出した。

 順を追って読み返していく。



『この手紙を読んでいるという事は、無事に異世界にたどり着けたということですね。突然慣れない世界へ放り込まれて戸惑いがあるかも知れません。しかし気を強く持って生きていかなくてはいけませんよ。スキルを少しお得にしておきました。最大限に活用して生きていってください。あなたに幸多からんことを祈っております。イシリスより』



 しっかりと読み返して違和感の正体を突き止めた。


『スキルを少しお得にしておきました』


 最初に読んだときはサラッと読み流してしまったが、かなり重要なことが書かれていた。

 イシリスさん、いや……、女神イシリス様は俺が取得したスキルをランクアップしてくれたようだ。


(それにしても優遇しすぎじゃないのだろうか……!? あの女神様はどんだけ過保護なんだ……)


 スキルがチート性能である原因は判明した。


「女神様、ありがとうございます」


 思わず天井を見上げながら声に出してお礼を言う。

 もしかしたら何処かで聞いているかも知れないからな。

 裸でお礼を言うのも無礼かも知れないが……。




 風呂に浸かりすぎて完全にのぼせてしまった。

 くらくらしながら浴室から部屋へ戻ると、テーブルの上に食事が用意されていた。

 俺が風呂に入っている間に宿屋の店員が配膳してくれたのだろう。

 外はすっかりと暗くなっていて、薄っすらと空に夕焼けが残っている。

 窓を開けると涼しげな風が吹いて来て火照った体に気持ちがいい。

 テーブルに戻り明日のことを考えながらおいしい食事を摂る。


(明日は早めに宿を出よう。とりあえず薬草採取を行いながら南の森へ向かおうかな。警備の職に就ければいいが、こればっかりは行ってみないとわからないだろうな。魔物はどんな種類が近場にいるのだろう。もう一度ギルドへ寄って聞いたほうが良いだろうか……)


 夕食を食べ終えたタイミングで宿屋の店員が部屋へ入ってきた。


「食器をお下げしますね」

 

 宿屋の店員が皿を片付けテーブルを綺麗にしてくれる。

 食後のワインをグラスに注いで一礼をしてまた部屋を出ていった。

 どこかで見ていたかのような絶妙な給仕に少々不気味さを覚えてしまう。

 それほどまでに完璧なサービスに大満足だ。



 腹がふくれると人間は眠くなる。

 フカフカのベッドへ寝転び目をつぶる。

 牢屋の藁のベッドと違って、清潔なシーツの敷かれた快適なベッドだ。

 いつの間にか眠気が襲ってきてそのまま眠ってしまった。



 ー・ー・ー・ー・ー



 目覚めるとまだ日は昇っていなくて室内は暗かった。

 しばらくベッドの中でごろごろする。

 すると、外が薄っすらと明るくなって来たのがわかった。

 窓にはめてあるガラスは日本の様な透明で平らではないので、室内が明るくなるのが遅い。

 それでも暗闇に慣れていた俺は、起き上がって身支度を開始した。


 宿に備え付けてあるサンダルを引っ掛け、起き上がってテーブルに近づいていく。

 水差しから水を一杯グラスに注ぎ、一気に飲み干す。

 かなりのどが渇いていたので、体中に染み渡るようでとても美味しい。

 二杯目をゆっくりと飲み終え、部屋の隅の小机に近寄る。

 備え付けの水差しから洗面器に水を注ぐ。

 顔を洗ったり歯を磨いたりする。

 昨日市場で雑貨を揃えた時、歯ブラシがあったことに俺は驚いた。

 日用品は質こそ低いがほぼ日本と同じものがそろっていた。

 科学的な発展を遂げていない異世界でも魔法技術は発展しているので、ある程度の品物はあるようだ。


 なにかの毛を束ねたような歯ブラシに粉の歯磨き粉、もちろん日本のようなミントの香りなどは付いてはいなくて、ザラザラした舌触りが少しだけ不快だった。

 しかし歯ブラシがあるのと無いのでは快適度が段違いだ。

 現代日本で何不自由なく暮らしてきた俺としては、少しでも日本にいた時の暮らしを続けたいと切に願っていた。



 さっぱりした所で鎧を着込んでいく。

 まずサンダルを脱ぎ捨て分厚い靴下を履き、戦闘用のいかつい革のブーツを装着する。

 お次は皮の鎧だ。

 これがなかなか着込むのが難しく、多少時間がかかってしまった。

 厚手の綿入れでできた鎧下を着込み窮屈な革鎧をすっぽりとかぶる。

 留め金で鎧の各所を締め上げ、ずれないように固定していった。


 さらに小手を装着して兜をかぶる。

 全て革製だが、かなり硬い革なのでなまくらな攻撃なら跳ね返せそうだった。


 盾は邪魔なので『無限収納』へしまう。

 街を出てから取り出せばいいだろう。


 そして俺の命を預ける大事な武器。

 使い込まれてはいるが、切れ味の鋭い短剣を手に取る。

 さやから刀身を抜き取り、じっくりと観察する。

 さすがに使い込まれた剣なので、手に持つ部分であるグリップが手に吸い付くように馴染んでいる。

 磨き上げられた刀身は、薄暗い室内でも存在感を主張していて光り輝いていた。

 思ったよりも重さはない。

 俺でもどうにか剣を振れそうだった。


(そう言えば『真理の魔眼』は道具も鑑定できるのかな?)


 素朴な疑問を思いつき、短剣を注視する。


[鋼鉄製の短剣…… 刃渡り五十センチ、普通の剣]


 突然短剣の横の空間に文字が浮かび上がった。

 てっきりイシリスさんの声で説明が入ると思っていたのだが、なにか法則があるのだろうか。

 気を取り直して腰に剣帯を巻き、鞘に戻した短剣を差す。

 完全武装をして宿を引き払うために部屋を出た。





(さて、今日も長い一日が始まるぞ……)


 目標は伐採所で森林警備の助手の仕事にありつくこと。

 気合を入れて階段を降りていく。

 受付カウンターに店員がいて、俺が二階から降りてくるのを待っていた。

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