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ハレーション  作者: caroline
3/3

アイオライト

カーテンの隙間から薄明るい朝焼けの空が見える。

朝になる前の澄んだ空気と、閉め切った部屋の澱んだ空気が混じり合って、僕を余計に気だるくさせる。


君が僕と一夜を過ごしたのは、単なる暇つぶしだったのだろうか。

ベッドには、君の香りがまだ残っている。

目を閉じて布団にくるまると、君がまだここにいるみたいに感じるよ。




あの日、初めて君に触れた日、強い風が吹いて、君の長い髪が、僕の肩に触れた。

でもそれは、本当に風が吹いた訳ではなかったんだ。


同時に君の息が僕の頬にかかった時、それがどのような状況かを、僕はすぐさま理解した。

君は僕の肩に寄り掛かり、静かに泣いていた。

それが始まりの合図。




君の指が、僕の腕をギュッと掴む。

それに応えると、僕達と夜の隙間は簡単に埋まっていく。


カーテンから覗く月明かりが二人を照らし、君の白い肌をより一層青白く引き立たせている。

僕の汗と君の涙で滲んだ世界が、音を震わせる。




静かで情熱的な時間はあっという間に過ぎて、夜が明け始めていた。


寝息を立てる君をそっと抱き寄せて、瞼に口付ける。

スゥッと息を吸い込む君は目を覚ます。

虚ろな目で僕を見上げ、安心したように再び目を閉じた。

そんな君の横で、僕も静かに眠りに落ちた。




だが、次に僕が目覚めた時、君の姿はもうここにはなかった。

しん。と静まり返った部屋に取り残された僕は、一瞬、昨夜の出来事が夢だったのか現実だったのか分からなかった。

しかしすぐに、部屋に充満する君の残り香が、現実だったのだ。と思い出させた。



あれから君とは会っていない。

真実の愛とは一体なんだ?

あの夜、僕達は確実にお互いを必要としていた。

君の髪も、声も、肌も、爪の先までも君の全てが僕のモノだったのに。


真実の愛を教えてよ。


窓辺に置いた、アイオライトに問いかける。


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