アイオライト
カーテンの隙間から薄明るい朝焼けの空が見える。
朝になる前の澄んだ空気と、閉め切った部屋の澱んだ空気が混じり合って、僕を余計に気だるくさせる。
君が僕と一夜を過ごしたのは、単なる暇つぶしだったのだろうか。
ベッドには、君の香りがまだ残っている。
目を閉じて布団にくるまると、君がまだここにいるみたいに感じるよ。
あの日、初めて君に触れた日、強い風が吹いて、君の長い髪が、僕の肩に触れた。
でもそれは、本当に風が吹いた訳ではなかったんだ。
同時に君の息が僕の頬にかかった時、それがどのような状況かを、僕はすぐさま理解した。
君は僕の肩に寄り掛かり、静かに泣いていた。
それが始まりの合図。
君の指が、僕の腕をギュッと掴む。
それに応えると、僕達と夜の隙間は簡単に埋まっていく。
カーテンから覗く月明かりが二人を照らし、君の白い肌をより一層青白く引き立たせている。
僕の汗と君の涙で滲んだ世界が、音を震わせる。
静かで情熱的な時間はあっという間に過ぎて、夜が明け始めていた。
寝息を立てる君をそっと抱き寄せて、瞼に口付ける。
スゥッと息を吸い込む君は目を覚ます。
虚ろな目で僕を見上げ、安心したように再び目を閉じた。
そんな君の横で、僕も静かに眠りに落ちた。
だが、次に僕が目覚めた時、君の姿はもうここにはなかった。
しん。と静まり返った部屋に取り残された僕は、一瞬、昨夜の出来事が夢だったのか現実だったのか分からなかった。
しかしすぐに、部屋に充満する君の残り香が、現実だったのだ。と思い出させた。
あれから君とは会っていない。
真実の愛とは一体なんだ?
あの夜、僕達は確実にお互いを必要としていた。
君の髪も、声も、肌も、爪の先までも君の全てが僕のモノだったのに。
真実の愛を教えてよ。
窓辺に置いた、アイオライトに問いかける。