マリンブルーの約束
「ねぇ」
「ん?」
「明日…東京に行っちゃうんだね」
「…うん」
「3年間…あっという間だったね。本当に…」
「…」
「この島に外から人が来たのも初めてだったのに、まさか私一人だったクラスに転入生が来るなんて。ふふ…あのときは本当にびっくりした。今まで同年代の子に会ったことがなかったから、とっても嬉しかった」
「俺もあのときはびっくりしたよ。まさか、学校に生徒が一人きりなんて。しかもこんなに…」
「こんなに…何?」
「う、ううん、何でもない。とにかく、お前がいてくれて本当に良かった。あのときは心細かったんだ。一人でばあちゃん家に来て、知っている人もいなかったし」
「おばあさんとは面識がなかったの?」
「俺が物心つかない頃に一度この島に来たことがあるらしいんだけど、それからは一度もこの島に来たことはなかった」
「そう、だったんだ。それは心細かったね」
「…父ちゃんと母ちゃんが事故で死んで、まさかこんなじいさんばあさんばっかの島に来るなんて思ってもみなかったけど、お前がいたから、俺は生きる気力を失わずに済んだ」
「そんな、わたしだってあなたに救われた。わたしもこの島に一人っきりのような気持ちで、寂しくて、あなたに出会ってなかったら、この島の外のことなんて考えることもなかったかもしれない。あなたが私の世界を広げてくれたの」
「…俺がお前の助けになれたなら良かった…でも、俺は明日、島を出る。お前を残してこの島を出るのは辛いけど…叶えたい夢ができたんだ」
「…その夢って、まだ教えてくれないの?」
「だって、恥ずかしいし、本当に叶うかどうかもわからないから…」
「わたしはあなたの夢なら絶対に笑ったりしないよ。それに、応援したいの。これから、あなたがどんな道を進むとしても、わたしは全力で応援する」
「…ワンピース。お前、ワンピース好きだろ?だから、お前に似合うワンピースを作りたいんだ。この海に映える真っ白なワンピース。お前に着せてあげたいんだ」
「…本当に?……嬉しい、本当に、嬉しいよ…」
「お、おい、泣くなって!まだできるって決まったわけじゃないんだ、俺、裁縫苦手だし、服作るなんて考えたこともなかったし、それに」
「できるよ」
「へ?」
「あなたなら絶対にできる」
「…俺、絶対に服作るの上手くなって、いつかこの島に帰って来る。絶対にお前に会いに来る」
「うん。約束だよ?」
「絶対に、約束」
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